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第54話  第3章-第15話

20170517公開

3-14


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

-14d5h30m25s  織田 深雪 viewpoint



 玲奈ちゃんが、ニューさんの口元の血をハンカチでぬぐい終って、今は髪の毛を直して上げてる。アプリで装備していた迷彩服が解除されると同時に、『召喚』された時に店で着てた制服に戻ったからヘルメットも消えたからな。

 アヤッチ、亜里沙ちゃん、里璃亜ちゃんの3人が玲奈ちゃんを慰める様に肩を抱き締めてる。


 お兄ちゃんは、また無表情でその光景を見てる。あの顔は三宅さんが『害獣アロ』に殺された時に見せた顔や。

 内心は窺えないが、自分を攻めてるに違いない。

 自衛隊部門の6人とソラさんも、立ち尽くす様にうな垂れている。

 そりゃあ、同僚を亡くしたんやから当たり前や。

 いや、むしろ、戦友を失ったという方が近いか・・・

 ニコラス中尉と教団職員のリーダーと町長さんも沈痛な顔で打ち合わせをしている。

 ウチももちろん悲しいに決まっているけど、正直に言うと三宅さんの時ほどのショックは無い。

 口惜しさの方が大きい。


 ニューさんが生き延びる可能性は高かったんや。

 お兄ちゃんがあと1秒早く対物狙撃銃の射点にはいれてたら、『災獣レックス』の最後の攻撃は無かった。

 だから、お兄ちゃんの射撃がフレンドリーファイヤー防止の為に1秒以上タイミングをずらされていなければ間に合っていたんや。

 それに、ニューさんがあの場面でバランスを崩さずに避けてれば、十分に間に合っていた筈やった。

 なによりも、ウチがあと1秒早く駆けつけてたら・・・・・


 ウチはニューさんが玲奈ちゃんの事を好きやと言う事を知ってた。

 ニューランドに行った帰りに本人から直接聞いてたからな。

 どう切り出したらいいか訊かれたんで、『当たって砕けろ』と答えたらニューさんは唖然としてたな。

 いや、もちろん、その他にもアドバイスしたけど、彼氏居ない歴17年のウチには高度なテクニックなんか当然無いし、仕方ないやろ?

 お兄ちゃんにアヤッチの事を言いだしたのはその影響なんやけど、あれは失敗やったな。どうやらウチは恋愛事いろごとに対する能力は低いみたいや。『脳筋』とは違うと思いたいけど・・・

 ふと、今回の遠征前に告白して、返事は帰ってから貰うと言った時のニューさんの顔が脳裏に浮かんだ。

 『ええ返事やったらええですね』と返した時の照れた様な笑い顔が消えへん。

 ニューさんの最後の言葉も唇の動きで分かったけど、最後まで気にしていた。付き合ってたらきっとええカップルになったんやないかと思うだけに自分の力の無さに口惜しさが積み重なるな・・・

 

 帰りの馬車の中は沈黙が支配してた。

 レジっの3人が色々と気を使っているけど、玲奈ちゃんは気丈にも涙を見せへんかった。

 ニューさんの遺体を入れた棺桶は、町長さんが手を回してくれた馬車に乗せられて最後尾を付いて来ている。

 休憩の度に、玲奈ちゃんが数分間話し掛けに行くのを、アヤッチ達がフォローしてる。

 到着したファーストランドでは、店員の全員がニューさんを出迎えてくれた。

 やっと、落ち着いて来たと思った頃に出た犠牲者だけに、みんなは沈痛な表情だった。


 帰って来たウチを佳澄ちゃんが涙目になりながらぎゅっと抱き締めてくれた。


 ああ、帰って来た・・・

 その瞬間に、初めてそう思えた。



 衝突は翌日の葬儀の時に起こった。


「もう一度、言ってみて下さい! 恥ずかしくないのですか!」


 アヤッチが珍しく興奮している。

 詰め寄られているのは確か角田さんという40歳半ばのオジサンだ。

 ウチが知る限り、召喚されていきなり始まった逃避行時に1度も発砲をしていないグループに属していた筈。

 もっと言えば、隊列の真ん中近くに居た。アヤッチ達からすれば、自分では危険を冒さずに守られていただけのオジサンだ。


「自分から危険に飛び込んだんだ。死んだって自己責任だろ? 銃を撃てて満足した筈だって言って、何が悪い?」

「銃を撃ちたいから、私たちが危険を冒しているとでも?」

「違うのか? 日本に居たら手に入れる事が出来ない様な力を持った事で気が大きくなったのではないか?」


 ウチはそっと周りを目だけで見渡した。

 困惑している人が多い。

 ずっと手を握って来ている佳澄ちゃんがウチを見上げてる。握った手にさっきまでよりも力が入ってる。

 少しだけ笑みを返して、安心させてあげた。

 目を閉じて、久し振りに使う力の反動に備えた。

 次に目を開けた時には、みんなの姿に色が重なっていた。

 お兄ちゃんは相変わらず黒の比率が高いなあ。対照的な白も目立っているし、それを囲む様に金色や銀色の縁取りも結構目立つ。ヤバいくらいにお兄ちゃんらしい。

 まあ、今は前に見た時と違って真っ赤な部分も有って、隠し切れていない。

 佳澄ちゃんは緑色を基調にグレーやオレンジも混じってる。うん、佳澄ちゃんらしいと言える。でも色んな種類の紫が混じり合っている部分は今の状況に不安を感じているんだろう。

 角田さんは思っていた通り黄色いな・・・ しかも、緑が混じって黄緑色に見える部分も多くて、小学校の我儘な未成熟な子供にそっくりだ。

 対するアヤッチは、プチお兄ちゃんだな。

 今回の遠征に参加したみんなはやはり赤が目立つ。その気持ちは分かるで。

 他のみんなは佳澄ちゃんと同じ様に紫の斑模様が目立つのがほとんどだけど、何人かは角田さんに近い人がる。その人達を覚えておかんとな。


「では、貴方は何もしなくても良いと考えていると理解していいんですね? 危機に陥っている、こちらの世界の人達からほどこしを受けて、ただ単に生きていれば良いと?」

「我々は拉致された被害者だ。それくらいの補償を求める権利は当たり前だろう」

「プラント、質問です。あなたが我々をこちらに顕現させた目的の中に、私たちの遺伝子をこの世界に取り込むという狙いは有りましたか? 16歳以上の全員に聞こえる様に答えなさい」

『個体名神崎彩の質問を確認。肯定』


 うわ、さすがアヤッチや。そこに気付いていたとは。ウチはソラさんからその可能性を聞いた時にはさすがに引いたけどな。

 しかも、それを明らかにしてしまうと角田さんの行動が制限される。


「良かったですね。どうやらあなたが求める権利を満たしながらも出来る仕事が有る様ですよ」


 アヤッチはワザと間を開けた。

 ウチはその時間で佳澄ちゃんの耳をふさいだ。

 小さな子供を連れた親たちは口論がもたらす子供への影響を考えて、聞こえない様に遠くに動いた後だから大丈夫だろう。


「その仕事は種馬って言います」


 


 まあ、アヤッチみたいな花も恥じらう可愛い女子高生がドヤ顔で言うセリフではないで、アヤッチ。

 




お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m


【間違って覚えていたので修正した箇所が何話かに亘っています。ニューさんとソラさんが入れ替わっています。作者自ら設定を勘違いするなど言語道断なので、折檻しておきますね^^

 修正した話

 第48話  第3章-第9話

 第50話  第3章-第11話

 第51話  第3章-第12話

 第52話  第3章-第13話】

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