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第50話  第3章-第11話

20170505公開


20170516役割一部修正 ソラ⇔ニュー

3-11


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

-14d5h23m51s  白石 玲奈 viewpoint



『悪い、到着が遅れそうだ。『災獣レックス』の群れと遭遇した』


 店長の声が聞こえた。意味も無くきれいに聞こえた。


『数は2頭か3頭だが』


 一旦声が途切れた。


『木が邪魔で、排除に時間が掛かりそうだ』


 そう言えば、自衛隊部門のみんなにはいつもと違ってボール偵察機も無いし、深雪さんも居ないんだ。出会いがしらに出くわしてもおかしくない。

 気落ちしなかったと言えば嘘になる。

 店長さんたち自衛隊部門が居ると居ないとでは、戦力の差が大きい。


「やばいかも・・・ 敵が森の中では小銃の強みを発揮し難い筈・・・」


 ソラさんが呟いた。

 

『分かりました。なんとか粘ってみます』


 ソラさんが応答しなかったので代わりに彩先輩が答えた。


『彩君、安全優先で頼む』

『はい。店長たちもお気を付けて』


 そう答えた後で、彩先輩がソラさんの方を向いた。ソラさんは何かを考えている表情をしていた。


「ソラさん、どういう事ですか?」


 声を掛けられて全員から見詰められている事に気付いたのか、ソラさんがちょっとびっくりした顔をした。

 ソラさんは気を落ち着かせる為に咳を1つして話し始めた。


「ああ、そうだな・・・ 店長が言っていた様に時間が掛かると思う。さっきの群れを完封出来たのは距離が取れていたからだ。『災獣レックス』との距離が100㍍と10㍍とでは対応に割ける時間が全然違うからね。それに例え100㍍先の森の中に『災獣レックス』を発見しても木が邪魔で撃ってもあまり当たらない筈だ。開けた場所で遭遇していればなんとかなったんだろうけど。時間優先で振り切っても追い掛けて来るだろうし」


 さすがにそこまで言われると、自衛隊部門と言えども簡単に戻って来れない事が分かった。


「分かりました」


 そう答えた彩先輩の声は普段と変わらなかった。

 一拍を置いて、彩先輩は息を吸い込んだ後で普段よりも大きな声を出した。


「やるしかないなら全力を尽くすだけ! 幸いにも2頭は見当外れの場所に居るし、1頭はミユキが倒した。しかも1番大きいのも含めて2頭を引っ張ってくれている。残り2頭、なんとしてでも撃退するよ! 分かった?!」

「はい!」


 良かった。まだ声は揃ってる。

 深雪さんも凄い女性ひとだけど、ここにも男前ハンサム女性ひとが居た。

 『カメラシンク』に意識を向けると、残っていた2頭の『災獣レックス』が遂に城壁を越えていた。

 向かう先は城壁沿いの西の方向だ。

 そう、こっちに近付いて来ている。


「前列は私とソラさんのハチキュウ組、後列はウィンチェスター組で迎え討ちましょう。私はウィンチェスター組に混じりますので、ソラさんは1人でヤツラの目を潰して下さい。ウィンチェスター組は右側に居る『災獣レックス』の左足を狙う。分かった?」

「はい」

「了解」


 ここでニューさんだけが違う応答をした。

 しまった、という顔をしている。

 でも、いつまでも引きずられても困るので、ニューさんには急いで頭を切り替えてもらって前後2列に並びを変えた。


「出来るだけ近付けさせない様に、こっちに来そうになった瞬間に発砲を開始するよ」


 実は私たちウィンチェスター組は、遠征前と今とでは遠距離での命中率がかなり違っている。

 昼食中に、ウィンチェスターが100㍍先の標的にほとんど命中しないという愚痴を、里璃亜ちゃんがこぼした事が切っ掛けだった。

 一番射撃が上手い店長さんでさえ「どうにもならない」と言うから、もうお手上げだという空気が流れた中、続けて言った「なんせ8つの方向に30㌢くらいずれるんだからな。どの方向にずれるか撃つ前に分からん限り手の打ちようがない」という言葉にニューさんが反応した。

 ウィンチェスターライフルが攻撃ファイノムに使われているのは、実物が宇宙船プラントの倉庫に眠っていたからだった。

 弾丸もそうだったに違いない、というのがニューさんの仮説だった。

 通常なら鉄砲の中で弾丸がどの角度で装填されるかは分からないけど、攻撃ファイノムは一定だとしたら8発の弾丸の実物を再現しているのではないか? という事だった。

 それからはとんとん拍子だった。出発までの時間を使って、店長さんが試射してずれる方向が違う弾丸を組み合わせて真ん中に寄る様に宇宙船プラントに計算させて、新しい弾種としてアプリにさせたのだ。

 おかげで、100㍍先でも直径10㌢の円内に収まる様になったのはありがたかった。

 ちょっとピコマシンの消費量が上がるけど、納得のお買い得品と言える。

 まあ、消費ピコマシンの答えを聞く前に言ったニューさんの「でもお高いんでしょ?」というセリフはみんなの爆笑を誘っていたけど・・・

 

 2頭の『災獣レックス』は1つ目の交差点を無視した。

 監視塔から弓が放たれたが、これも無視をした。きっと全く脅威に感じないのだろう。


「各自、装填!」


 レバーをほんの少しだけ円弧を描く様に下向きに引く。レバーがそれ以上進まない所まで来た瞬間に逆向きにレバーを戻す。

 6人分の金属音が重なった。

 私たちの邪魔にならない様に彩先輩とソラさんがしゃがんでくれた。これでレバー操作と照準もやり易くなる。


 『災獣レックス』2頭が北門の手前まで来た。

 何人かの衛兵さんが門の上に有る櫓から槍を投げてくれたけど、これもチラッと見ただけで無視された。

 さっきの弓を射た人も、槍を投げた人も勇気が有ると思う。 

 だって、あんな大きな『災獣レックス』にあんなに近くから攻撃をするなんて反撃を受ける覚悟が無いと出来ない事だから。

 そして、今、2頭の『災獣レックス』は、何かを探している様に首を前と左に交互に振っている。

 何を探しているんだろう?


「構えて!」


 2頭は北門直前まで来たところでゆっくりを進みながら首を左に振った。こっちを探っている様に感じる。

 直後に『カメラシンク』の映像に加えて、80㍍先の建物の陰から実物の顔が姿を現していた。

 目が合った。

 80㍍先のソフトボール大の目と、確かに視線が交叉した事を何故かしっかりと理解した。

 2頭の『災獣レックス』が途端に走り出して、角を回った。


「撃て!」

 

 『ウ』の段階で引金を引き、右肩に衝撃が来た。やはり2倍速はキツイ。

 発砲音は消しているので金属音だけがやけに大きく響いた。

 右側の『災獣レックス』の顔に連続で着弾しているのが分かった。ほとんどが弾かれているみたいだけど、それでも黒い血が舞っているのが分かる。

 視界の下の隅でソラさんのハチキュウが小刻みに上下動をしている。その隣の彩先輩のハチキュウは初弾を撃った反動を抑えて2発目の照準を付けようとしているみたい。

 私の弾はちゃんと左足の太ももに吸い込まれて堅そうな毛が揺れた。

 私の右手は特訓の成果も有って、無意識にレバーを下向きに引き始めていた。

 レバーがそれ以上進まない所まで来た瞬間に反射的に逆向きにレバーを戻す。 

 レバーがライフル本体にぶつかって止まると同時に照準を少し上に修正して発砲。

 この繰り返しを7回したところで、これまで狙って来た『災獣レックス』の動きがガクンという感じでおかしくなった。

 効いている?

 よし、効いている! 左足が上手く動いていない。

 更にバランスが崩れた。ついに倒れ込んだ。

 あ、左側の『災獣レックス』が交差点を曲がって姿が見えなくなった。

 『カメラシンク』の画像を見たら、そのまま直進して西の城壁に行く手を塞がれて、南向きに進路を変えた。

 このままだと南西の角で曲がるからこっちに大回りでやって来る?


「ニコラス中尉、私たちの所まで出て下さい! 『災獣レックス』が1頭、西から城壁沿いにやって来ます!」

「了解だ!」

「みんな、移動するよ!」 


 時間はそんなに無い。

 でも、ふと気になって、走り出しながら倒れ込んだ『災獣レックス』の方を見た。立ち上がろうとしているけど、左足が踏ん張れない為に道路に面した家に倒れ込んだ。

 疎開が終わった家でありますように・・・ 誰も居ませんように・・・

 その時、視界に後ろ向きで西に向かって走っている深雪さんの姿が東西メインストリートから現れた。

 直後に追い掛ける2頭の『災獣レックス』が現れた。



 もしかしたら、織田一族って戦闘種族なんだろうか?

 兄妹揃って、勇敢過ぎる気が・・・・・




お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m

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