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第41話  第3章-第2話

20170325公開

3-02



「1.5倍から2倍のサイズと言う事は、防御力も比例して上がっていると見た方が良いだろう。となると、コルト・ガバメントやウィンチェスターライフルでは口惜しいが全然火力が足りないと思う。もちろん、初速を上げれば威力は増すが・・・」


 M1911攻撃魔法小隊のカルロス・ヒル准尉が最初に口を開いた。

 彼としても自分達の武器が通用しない事を認めるのは悔しいのだろう。それは表情に滲み出ていた。

 体長が1.5倍という事は、体組成がそのままと仮定すると、装甲に当たる皮も脂肪層も筋肉層も1.5倍の厚さになっていてもおかしくない。

 コルト・ガバメントの弾丸0.45ACPの運動量は元が500ジュールで、ウィンチェスターM1873の44-40で1000ジュールを超すくらいだ。RAMが少ない中で無理やりに初速を2倍に上げても(次弾発射までに時間が更に掛かる弊害も無視しても)2000ジュールと4000ジュールを超える位だ。64式小銃の7.62x51mm NATO弾はそのままで3300ジュールの運動量を持つ。

 特にコルト・ガバメントでは初速を2倍に上げても通常の『災獣レックス』相手でさえ火力が不足している。

 まあ、それ以前に衛兵たちはピコマシンの容量が少ないので30発しか撃てなくなる。

 ファーストランドに残された攻撃魔法(Aファイノム)小隊は3個だけだ。M1911攻撃魔法(Aファイノム)小隊が2個で生存している衛兵が合計20名、M1873攻撃魔法(Aファイノム)小隊も1個22名しか生き残っていない。合わせても42名しか残されていない。

 ただでさえ純粋に火力が不足しているのに、継戦能力も増強されたとはいえ不足している。 

 相手が普通の『災獣レックス』ならば、M1873攻撃魔法(Aファイノム)小隊を連れて行く事も有り得たが、効果が見込めないのに危険に晒すのは下策だ。

 それならば、いざと言う時を考えて、ファーストランドの城壁に守られた状態で迎え討つ役割を担って貰った方が良い。


「カルロス准尉、俺としては君達攻撃魔法(Aファイノム)小隊は3小隊ともファーストランドに残って欲しいと考えている」


 第一、今回の『災獣レックス』の群れの規模が分からない事には作戦の立て様も無い。

 弓兵中隊から偵察として3名出ているが、情報は限定的になるだろう。

 更なる偵察が必要だ。最悪、威力偵察になるだろうから投入する戦力は十分な戦力が必要になる。


「今回は陸自の7人だけで行こうと思う。第一、少数精鋭の方が動き易い」

「拠点はどうする? 足はどうする? まさか徒歩で行く気か?」

「少し離れた村に拠点を設けて、そこから徒歩で偵察に入る。拠点までは誰か馬車で送って貰う必要は有るな」

「それなら俺の部隊が支援に回ろう。ニューランド行きで経験も積んだしな。拠点になる村まで馬車で送る。ただし、万が一を考えてミユキ嬢たちを借りたい」


 軽槍兵小隊小隊長のニコラス・ソウザ中尉が発言した。

 本来は素人の深雪たちをこれまでよりも更に危険な状況に晒す? さすがにそれは許容出来ない。


「それは却下せざるを得んな。確かに足手まといとは言わんが、兵士でも無いんだ。これまでと違って・・・」

「お兄ちゃん、る? でかい『災獣レックス』が出たって聞いたで」


 ただの偶然なんだろうが、深雪が会議室に顔を出した為に俺の発言が途中で途切れた。


「あ、ごめん、会議中やったん? まあ、出発時間だけ教えてくれたらええんやけど?」


 行く気満々だ・・・・・

 深雪、お前はどこに向かっているんだ?


「いや、今回は現役と元の自衛隊員だけで行く予定だ」

「あ、それ、却下や。止められてもウチらは行くで。第一、計算出来る戦力としてはトップクラスの7人やけど、余裕が無さ過ぎとちゃう? ウチら7人を戦略的予備に回さんとやりくりに困ると思うで」

「7人?」

「ソラさん、ニューさん、レジっ4人とウチの7人やけど?」 


 深雪が両手の指を拡げながら前に突き出して、わざわざ指を折って数えた。

 妙に子供っぽい仕草だった。


「みんな、ピコマシンの嵩上げは終わったから、全員が普通に2倍速を撃てるで。連れて行かん理由が見当たらん気がするやけど?」


 俺たち被召喚者とこっちの人類の差は大きい。

 なんせ、こっちの人類はほとんどが初代iP級で、俺たち被召喚者は最低でもiP4s級だ。

 レジっは全員がiPSE64GB級なので、遺伝子操作とピコマシンの嵩上げで小さな身体でも筋力はこっちの人類を軽く上回り、ピコマシンの容量は最低でも5倍以上(64GB÷12GB相当)、更にCPUの能力とRAM容量まで考えると、女子高校生でさえチート性能を持っている。

 しかも、深雪のiP6s64GB級は即応自衛官組さえも上回って、スペック的には俺の次に高い。

 深雪たち7人で衛兵の攻撃魔法(Aファイノム)3個小隊の戦力を軽く上回っているのも事実だった。

 しかも、全員が生活魔法(Lファイノム)Advをインストールしている為に、治療魔法と言っても良い「ヒール」を使える。

 純粋に戦力として考えれば、連れて行かない手は無い。


「遠いみたいやから、馬車で行くんやろ? その馬車部隊を守る為にもウチらを同行させた方がええんとちゃ?」


 俺は思わずニコラス・ソウザ中尉の方を向いた。


「いや、先に相談なんてしてないぞ、オダ。第一、デメティールに『災獣レックス』が出たと聞いてすぐに来たんだ。打ち合わせをする余裕も無かったぞ」

「そうだな」

「ほらな、お兄ちゃん。ウチらを連れて行かん方が間違っている気になったんとちゃうか?」


 我が妹はニコリと笑ったまま、俺の返事を待っていた。




 深雪、本当にお前はどこに向かっているんだ?

 

 



お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m


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