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第35話  第2章-第16話

20170226公開

2-16


◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

-7d15h07m12s  織田 深雪 viewpoint


 

 うーん、ここはどこや?

 薄暗いが、白く塗られた天井が見えると言う事は自宅では無い・・・

 第一、天井に蛍光灯が貼り付いていないもんな。

 ああ、そう言えばニューランドのホテルやったな。

 確か、こういう時に言う言葉が有った筈やけど思い出せん・・・

 『初めての天井だ・・・』だったっけ?

 ウチは松浦さんや松永さんと違ってオタクちゃうから、よう分からん。

 後で会った時に訊いとこ。


 昨日は夕方に着いたせいも有って、そのままここに連れられて来て、お偉いさん達と夕食を食べて、割り当てられた部屋のお風呂に入って、歯を磨いて寝たんやった・・・

 えーと、時間は・・・ 

 起きるには微妙な時間やけど、身支度だけは整えておいた方がええやろ。

 しかし、本当に魔法みたいやな、ファイノムって。

 こっちで貰った現地製の下着は厚くて着心地が今一やから、日本で着てた下着をアプリ化して使っているけど、本物そっくりや。

 しかも着替えも一瞬で済むし、慣れたら手放せんな。

 えーと、今日着るのは迷彩服やったな。まあ、その方が楽でええ。ヒラヒラしたドレスとか着慣れんから疲れるだけやしな。


『深雪、起きてるか?』

『おはよう、起きてるで』

『うん、おはよう。30分後に朝食をナバーロさんたちと全員で摂る事になった。詳しくはメールしとくので読んでおいてくれ』

『うん、分かったで』


 メールはすぐに届いた。

 正直、メールだけ送って貰っても構わん気もするけど、やはり残された唯一の肉親と言う事で気を使ってるんやろ。

 基本的にお兄ちゃんはウチには甘い。時には大甘な時も有って、うっとうしい時も有る。

 でも、その反面、結構、ウチを一人前の女性として扱ってくれる。これは大事な事や。必要以上にベタベタされるのも嫌やけど、それ以上に半人前扱いされるのが嫌やしな。

 多分、ウチとお兄ちゃんは他人から見たら、仲の良い兄妹に見えるやろな。

 両親を亡くして中学生の妹が1人で暮らすくらいならと、自衛隊を辞めてスーパーを継ぎに大阪に帰って来てくれたのを、世間からは好意的に見られているのはウチの耳にも入るからな。


 お兄ちゃんの記憶は、多分幼稚園に入る前のが一番古い。

 暑かったからお盆やと思う。両親が妙にソワソワしてたのも覚えてる。

 ドアを勝手に開けて家に上がって来たオジサンに両親が『おかえり』と言ったのも覚えてる。

 不思議に思った事も覚えてる。

 『だれ?』ってお父ちゃんに訊いたら、『みゆきのおにいちゃんだよ』と答えてくれたのも覚えてる。

 不思議だった。

 知らないオジサンなのにおにいちゃんと言われても、その時のウチには分かる筈も無かった。

 ウチの混乱が分かったのだろう。テレビの上に置いていた写真を見せられた。

 その写真には、お母ちゃんの腕の中で赤いワンピースを着て寝ている幼いウチとお父ちゃんの他にも制服を着た男子高校生が写っていた。

 記憶に無いけど、前から何度もお兄ちゃんが居る、と言われていたらしい。

 とにかく、その時の記憶の中のお兄ちゃんの顔はよく覚えてないけど、怖いとは思わなかった筈だ。

 だって、よく分からないながらも『おにいちゃん?』と言ったら、抱き上げられて笑顔を見せてくれた記憶が残っているからな。


 元々歳が離れていたせいもあって、毎年盆と正月に帰って来るお兄ちゃんは、小さい頃はウチにとって甘やかしてくれる優しい親戚のオジサンみたいな感じやった。

 そりゃあ、ウチが小学生の低学年の頃には自衛隊で小隊長してたんやからオッサンにしか思えんて。

 ああ、そう言えば、やたら姿勢が良くて、顔が日焼けしていて、足が臭かった事は覚えてる。

 足が臭いと言えば、いつからか、帰省すると真っ先に風呂場に向かう様になってたな。

 多分、ウチが鼻をつまんだか、文句を言ったかしたんやろな。ごめん、お兄ちゃん、子供は時として残酷な天使になるから、しゃあないねん。まあ、今は水虫も治って、そんなに気にならんで。

 それに、今やったら分かるけど、両親にも洗脳されてたと思う。

 盆や正月が近付くと、やたらとお兄ちゃんの事を持ち上げてたからな。

 まあ、確かに高校時代に剣道で日本一になったんやから、自慢の息子やったんやろ。

 でも、今やから洗脳しようとした気持ちも分かる。

 歳も離れてるし、一緒に住んでもいない血が1/4しか繋がっていないお兄ちゃんを何とか兄として認めさせようとしてたんやろ。

 おかげで、どこで間違えたのか(これは全部お父ちゃんのせいやけど)、自衛隊の軽いオタクになったけど、まあ、今の現状を考えると良かったと思う。


 両親が交通事故で一緒に死んだと、担任の先生から知らされた時はさすがに動揺したけど(でもアヤッチやみんなからは運び込まれた病院の名前を確認したりして冷静に受け答えしていたと言われたんやけど、本当に動揺してたんやで)、お兄ちゃんが制服姿で帰って来てくれた時は軽く後光が差して見えたのは内緒や。

 あの時がきっと、本当の意味で兄妹きょうだいになる切っ掛けやったと思う。

 一緒に住み始めた頃はお互いに意識してたけど、気が付いたらギクシャクした所は無くなっていた。

 うーん、考えたら、お兄ちゃんはモテる筈やのに、浮いた話が無いのはなんでやろ?

 自衛官と聞いて思い浮かぶ初心さも無いし、女性の扱いに慣れている気がするし、ウチのスーパーに来る女性客でもファンが居てるのはアヤッチから聞いて知ってるし、その気になればいつでも結婚出来る筈や。

 家に残っていたお兄ちゃんの高校時代の色んな写真や新聞の切り抜きを両親にことある事に見せられたけど(洗脳されてた証拠や)、甘いマスクをしてたし(世間ではイケメンと言うらしいな)、剣道部の主将で全国制覇もしたくらいやからモテた筈や。

 一時はホモちゃうかと疑ったけど、それも違うみたいやし、浮いた話が無いのが本当に謎や。

 まあ、おかげでアヤッチが狙うチャンスが有るんやけどな。



 うろ覚えやけど、確かこの様な朝食会って英語で『power breakfast』と言うんやなかったっけ?

 アヤッチなら知ってるんやないかな。伊達に学年トップやないからな。

 そう言えば、本当に高校を卒業したらそのままウチとこのスーパーに就職する気やったんやろか?

 もう関係ないけど、勿体無いで。お兄ちゃんに説得してもらう気やったけど、アヤッチくらい頭が良かったら、まずは日本の大学卒業して、それから世界的な大学にでも行ってグローバル?な箔を付けてからでもええのにな。

 

「オダ殿、『プラント様が遣わした使徒』様は確か60人だと聞きましたが、全員がオダ殿と同じ様な身体能力をお持ちなのですか?」

「いえ、さすがに自分程の身体能力は無いですよ。まあ、元々よりも大幅に向上はしているのは事実ですが」

「しかし、未だに信じられません。あれだけの数の『災獣レックス』をたった10人で殲滅するなど・・・」

「まあ、自分達の時代の地球は未だ戦争している地域があったくらい野蛮でしたからね。偶々、こちらで言う衛兵よりも更に戦争に向いた自衛隊関係者が7人も居たのは不幸中の幸いとしか言えません」


 お兄ちゃんがみんなの代表やから、さっきから1人で質問に答えてる。

 お兄ちゃんの言いたい事は、アマチュアとプロフェッショナルということんやろな。

 それか、地球の歴史が戦争に彩られ過ぎって事かもしれんな。

 多分やけど、こちらの兵隊さんよりもウチの方が戦争や戦闘に結び付く言葉を多く知っている筈や。

 パッと出て来るだけでも、

 奇襲、強襲、総力戦、限定戦争、局地戦、制限戦争、殲滅戦、消耗戦、遅滞戦闘、正規戦、不正規戦、侵略戦争、機動攻撃、防衛戦争、陣地戦、包囲戦、突撃、野戦、塹壕戦、攻城戦、籠城戦、山岳戦、上陸戦、市街戦、遊撃戦、遭遇戦、白兵戦、占領、制圧、ロジスティック、攪乱、迂回機動、正面突破、横撃、追撃、待ち伏せ、先制攻撃、空中戦、情報戦、海戦、核攻撃、相互確証破壊、レーダー、ステルス、火力、囮、地雷原、空襲、通商破壊、陣形、砲撃・・・


 あかん、花?の女子高生が嬉々として思い浮かべる事柄や無いな・・・

 

 地味に落ち込みそうや・・・・・





お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m

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