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第25話  第2章-第6話

20161218公開

2-06



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

-6d4h46m12s  織田 深雪 viewpoint



 

 今、私の目の前50㍍も離れて無い緩い登り坂を、3匹の『災獣レックス』が密集しながら姿勢を低くして迫って来てる。

 この姿勢を取るという事は、ウチを強敵と考えてるという事やろう、多分。


 ベルト帯に来てから遠目にやけど1回だけ、はぐれの『災獣レックス』が2匹連れの『害獣アロ』を狩った瞬間を目撃したけど、その時は上から圧し掛かる様にして大きくて強力な顎で背中を咥え込んでたな。完全に強者による蹂躙やった。

 また、その襲撃は別の一面を物語っていた。

 そう、『災獣レックス』が普段は襲わない『害獣アロ』に手を出さなければならない程飢えているって事や。


 正面から見た時の投射面積を絞るって事は明らかにこっちの火力を警戒してる証拠やな。

 咄嗟にしゃがみながら真ん中の『害獣アロ』の眉間に照準を合わせる。

 残念ながらウチのハチキュウには、こういった時に便利なドットサイトは装備されていない。信太山駐屯地の創立記念行事で触ったハチキュウには無かったからや。

 だから、こういう一瞬を争う時には致命的な遅れを齎す。

 お兄ちゃんなら余裕で全部殺せるんやろけどな・・・・・


 発砲と同時にその場で太ももとふくらはぎが許す限りの負荷を掛けながら身体を上に押し上げた。

 真ん中の『災獣レックス』がさっきの『災獣レックス』と同じ様に崩れるのがスローモーションの様に見えた。

 計算上、ギリギリ飛び越えられるタイミングやった筈やけど、世の中そんなに甘くなかった。

 ウチの垂直跳びに合わせて、左端の『災獣レックス』が速度を上げながら首を上に持ち上げた。口も出来るだけ大きく開けてる。 やば! このままやったら左足のすね辺りを咥え込まれる! 狩りを見た限り『災獣レックス』の顎の力は多分人間の何十倍も有る筈や。ティラノザウルス並みかもしれん。そんなのに捕まったらどうやっても逃げられへんし、そのまま噛み切られる方が可能性が高い。


 ウチは無理な姿勢になるのも構わずにハチキュウを突き出した。動きを滑らかにする為にハチキュウを握る手はワザと緩めてる。狙いは鼻先。銃口が鼻に突き刺さる直前に全力でハチキュウを握り締めたがとんでもない衝撃がウチを襲った。

 ハチキュウを手放しそうになったけど、その一瞬を耐えて、ジャンプで得た真上への加速とハチキュウを軸にして真正面から襲って来る衝撃も利用して身体を強引に上に持ち上げる。


 よっしゃ、なんとか大きく開いた顎の上に身体を持って行けるベクトルに乗ることに成功したで。

 勢いが付き過ぎて逆立ち状態になったウチの真下に『災獣レックス』の頭頂部が在る。鼻先をいきなり下向きに押されたせいで身体も泳いでる。


 やり過ごした、そう見切った瞬間にハチキュウを引き戻す。その途中で右手の人差し指が動いて、引き金に掛かった。


『怖かったやんか! これはそのお礼や!』


 まだ銃床を肩に付けてない体勢やけど、かまへん。これ以上遅れたら頭を撃てん。

 そのまま引き金を引く。

 肩を守る様に装着しているパットのおかげで少しは和らいだが、それでもいつもの大人しい反動よりは大きな衝撃が右肩に走った。

 銃床がパットを滑って銃口が下がり過ぎたんで2発目を撃つのは無理やな。そのまま体の前で保持するしかあらへんな。


 意識を自分の身体の状況に切り替えたけど、これってかなりヤバいんちゃうかな?


 今日は本当にきれいに晴れ渡ってるなぁ。


 無茶をしたせいで身体が錐もみ状態でしかも縦回転もしてる。


 頭上に見える地面までは余裕で3㍍を超えてる。凄い勢いで地面が流れて行く。


 こんなにいい天気の日にソフトボールしたら気持ちいいやろな。ソフ部のみんな、元気にしてるかな?


 うわ、着地予定の地面は結構大きな石が多いで。捻挫に注意やな。


 さて、そろそろ錐もみを緩めよか。身体を捻って少しはマシになったけど、完全に止めるまでは無理やった。しゃあないな。


 一旦足を折りたたんで回転を調整して、足から着地する様にせんと。

 まあ、捻挫程度なら『ヒール』で5分もせん内に治るけど、その5分が命取りになるかも知れんからな。


 うん、一旦たたんだ身体を伸ばして回転を緩めたけど、調整は上手く行った。


 3匹の中で1匹だけ生き残った『災獣レックス』が反転してこっちを向いたのが見えたけど、その瞬間に着弾が相次いだ。

 ソラさんとニューさんが来てくれたんやな。


 さあ、あと1回転したら着地や。

 最後に着地地点を確認して・・・・・・・・



 10秒後、ウチはさすがに精根尽き果てて大の字で寝っ転がっていた。

 すぐ傍で、ソラさんとニューさんが最後の1匹に射撃をしている。ウチが足止めに成功したヤツや。


 ニューさん、凄いな。発砲の反動がかなり強くなったのに、レバーアクションで連射してるで。

 1秒に1発以上は撃ってる。なるほど、ウィンチェスターでもやろうと思えば結構速射出来るもんなんや。今度、コツを聞いて練習しとこ。


 発砲音はすぐに止んだ。 


「深雪ちゃん、大丈夫か?」

「大丈夫。でも、さすがに寿命が縮んだわ。我ながらよう飛んだな。うん、大丈夫、どこも怪我はしてないで」

「いや、マジで勘弁して欲しいで。こっちの心臓が先に止まりそうや」

「はははは・・・」



 乾いた笑いだけが出た・・・・・



 ウチらは射殺した『災獣レックス』を確認してから、根拠地にしている乳牛業者の自宅にゆっくりと戻った。

 6匹とも痩せていた。

 まあ、普通の状態の『災獣レックス』を生で見た事は無いけど、少なくともコンパニオンのネエチャンに見せられた映像での『災獣レックス』はもうちょっとガッシリしてた気がする。

 原種の『害獣ラプトル』はもうちょと肉が付いてるから、多分、飢えているというのは確定やろ。

 

 わざわざ、牛さんを十数頭も連れて来たけど、これやったら釣餌つりえ作戦は効きそうやな。

 むしろ、効き過ぎてコントロール出来ん様になるかもしれんな・・・・・・


お読み頂き誠に有難う御座います m(_ _)m

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