表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
長編小説 4 『花纏月千(かてんげっち)』  作者: くさなぎそうし
第三章 『花弔封影(かちょうふうえい)』 黄坂千鶴(こうさか ちづる)編
26/78

第三章 『花弔封影』 PART1

  1.


 花は妖艶な香りを残し、鳥を惑わす。惑わされた鳥は感じたままに唄い、思いを風に乗せて仄めかしていくだろう。


 花鳥諷詠かちょうふうえい、四季の移り変わりをあるがままに唄おうとする俳句の理念だ。


 だけど今の私はこの言葉のようにできない。自分の気持ちを正直に告げることなど、できそうにない。


 本当は伝えたいのだ。誰でもいい。自分のことを知らない人であれば、なりふり構わず思いを述べて楽になりたい。


 あなたと出会わなければ、叶わぬ夢を見ることもなかった。


あなたの存在を知らなければ、眠れぬ夜を過ごすこともなかった。


 あなたに気持ちを伝えることができない状況の中で、私の気持ちは無意識のうちに肥大するばかりだ。


 この一瞬が、永遠に変わらないかと。


 もう少しだけでいいから、時間を止めて欲しいと。


 私はそればかり願ってしまう。


 私の願いはたった一つ。


 残されたあなたの時間を共有したい、それだけなのに。


 でも、成就しないことはわかっている。感情が追いついていないだけだと理解もしている。


 だけど、あなたが愛しくて、あなたが恋しくてたまらない。


 私の全ては今、この瞬間にあるのだから。


 決してこの先私が望んだ未来がこなくても、私は思い続けるだろう。あなたがここにいたという証は私の瞳に刻まれているのだから。


 そして、今でも私の胸の中に――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ