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長編小説 4 『花纏月千(かてんげっち)』  作者: くさなぎそうし
第二章 『月運花馮(げつうんかふう)』 緑纏 凪(ろくまと なぎ)編
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第二章 『月運花馮』 PART1

  1.


 月雲花風げつうんかふう


 この言葉はいいことには総じて邪魔が入るという意味だ。


 たとえ今夜が満月だとしても雲が群がれば新月と変わらないし、花が満開に咲いていても風が吹けば花びらは散ってしまう。自然にあるものは総じて美しいが、それはいつも完全な状態にはない。


 だが心に余裕があれば、何をみても美しいと俺は思う。

 たとえ空一面が曇っていようとも月の灯りを探すことはできるし、風によって花の美しさが奪われてしまっても散った花びらに思いを託すことはできる。


 要は自分の考え方次第だ。 


 人生にはいいことだけでなく必ず悪いことがある。新しい命の誕生を喜ぶ日があれば、大切な人との別れを迎える日だってある。それでも余裕がある人は希望を持てるから生きようとできるのだ。


 この感覚はきっと時代を経ても変わらないのだろう。同じ時を生きていなくても、言葉は違っても、きっと同じものだと思う。全ては人の思いから成り立っている。


 このことわざは俺の店では漢字を変えて店に飾ってある。最近親父から意味は教わったけど、本当かどうかはわからない。これを書いたのはじいちゃんだからだ。


 なぜ人は特別な日に花を扱うのだろう。結婚式、葬式、人の一生を左右する日には必ず花が飾られる。花の命は儚く、風が吹いてしまえば終わるようなものだというのに。


 もしかすると理由など存在しないのかもしれない。ただの習慣なのかもしれない。それでも俺はその答えを知るために祭壇で菊を挿す。


 そう、俺の仕事は葬儀の花屋。真っ白な祭壇に故人の魂を刻み込むために、季節の花で故人の思いを描いていく。


 答えは当分、見つかりそうもないが、俺はそれでいいと思ってる。


 彼女さえここにいてくれるのであれば――。

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