ゲーマー姉妹さん・界図師さん
カランカランとと軽いドアのベルが鳴った。ゲーマー姉さんが軽く挨拶をしてから。
「次のオススメの攻略場所を教わりに来ました~」
そうは言ってももう片方のゲーマー妹のほうが思いっきり知り合いであった。店員は何て話せばいいのか解らず、話を混合して話を進める。
「おいゲーマー妹様、あんたジョブ。今忍者なのか? それとも神様なのか?」
「んお、一応忍者じゃ。次は何処に攻略に行こうかと二人で悩んでいたところだったのじゃ」
店員は知っている範囲で二人に話を進める。
「確か。輪廻転生の街『京』でゾンビ狩りをしてなかったっけ」
ゲーマー姉の方が続ける。
「そうなんだけど……、中々攻略が進まなくてねぇ。そうこうしている間に。左の大陸に位置するリュビアー大陸じゃなくて。右側のエウローパ大陸が開通しちゃったじゃない?」
ゲーマー妹が、創造神として言う。
「思ったよりモンスターとか、モブ入れ過ぎて中々進まなかったのよねアレ。気合入れて作り過ぎちゃったのかのう」
店員はメガネをクイっとしながら、気分転換を促す。
「そんなに進まないのなら、いっその所別のダンジョンを攻略してみるのはどうだ? エウローパ大陸の一番奥、地下都市ブロントとか」
ゲーマー姉は悔しそうに反論する。
「でもゾンビの『京』エリアをクリア出来れば、アシアー大陸とリュビアー大陸の間の橋が開通するじゃない。未開の地を開拓するその第1号になれるってのも、捨てがたいんだよね~」
まあ、解らないでもない内容だなと店員は思った。攻略始めて短くない時間を費やした、今更別のルートに切り替えた方が良いんじゃないか? という疑問は当然出てくる。
ゲーマー姉が店員に話を続ける。
「だから、あそこに居るボスモンスターの退治の仕方を触りだけでも教えてほしいな~と」
「あれって確か、時間内まで5重の塔を防衛するっていうクエストだろ?」
「うん」
魔具シリーズでもオススメしたい所だがジャンルが違う。アレはどっちかというと日常用の魔術道具だ。話を聞く限り、人数も、武器も、アイテムも十分そろっているのに時間切れで負けてしまって八方塞がりといった感じなのかもしれない。とにかくゾンビの数が多いい。
「そういうウイルス系だと、特効薬を錬成して。回復薬として打ちながら徐々に減らしていくか。爆弾で一気に消滅させるしか手が無いんじゃないか?」
「あ~、それだったら派手なほうが良いから。ワクチンキャノンでも開発して一発ドカンとするか」
一気に豪快になった。単純だが、解りやすい解決策だった。
「じゃあ今度からそれで手を打ってみるよ。相談に乗ってくれてサンキュー」
「相談に乗っただけだ、感謝すると言うのなら。またご利用してくださいよ」
「おう、そうするのじゃ」
軽い返答と共に二人は店を出て行ってしまった。一応常連なのでリピーターだったのだが。
「あいつらまた金払わないで行ってしまった」
やれやれと思いながら、店員は次のお客さんに向けて気持ちをシフトしていた。
「界図師さん、結論から言うと。初心者のための街、『電脳都市ライデン』の図面が欲しいんだ、早急に頼む。これじゃあ商売ができない」
世界の地図を書き記す術師、略して界図師さん。かっこ女さんは、内容を値踏みするように言った。
「ほほう、いくらで」
「金などない、まだリピーターが来てないからな」
「それ……、あんたが初回無料にしたからで。あたしには何の落ち度も無いと思うんだけど」
「良いだろ! 元から趣味で作ってたようなもんなんだからさー!」
「それでメシが無料で出てきたら苦労は無いんだよ!」
両者とも理解はしている。内容が2転3転するだけで、これでは話が進まない。
「俺と同じように、初回は無料で頼むよ」
「いや……。初心者のための街とあっちゃ、あんたの店が一番利用するような代物だ。はっきり言ってラスボスのダンジョン並みにどっこいどっこいの価値はあると思うがね」
「ぐぬぬぬぬ……、値引きは出来ないのか?」
「あんたも冒険者じゃなくて相談所って言う情報屋に転職したんなら、【情報】を売るのが筋だろう? それで値引きしてくれ、商売下手め」
困り果てたように頭の角度を変えて、店員は重い口で言う。
「あぁん、……解ったよ。で、お前さんの悩みってのは何だ?」
界図師は、店の中を一周見渡して。その中で無さそうなものを考える。彼女にとっては新しい地図を書くためには、ある程度、遠出をしなくてはならない。従って今ある範囲で見つかってない土地で、尚且つ安全に休める場所が無いと長旅も仕事も出来ない。曰く……。
「本当はマルチバースの未開拓海域の情報とか、でっかいのを要求したい所だが……。今は『イギリス』て所の情報が欲しい」
ポカンとなる店員、店員は地球育ちの日本生まれなので。全くの未開拓地域ではなく『日常』の地域を指定されたことに驚いた。
「いや、それぐらいは自分で調べろよ。ネットに思いっきり載ってる、未知でも何でもない土地だし……」
「んなの私だって解ってるよ、その情報で割引してやるって言ってるの!」
肩透かしを食らう店員、だが界図師さんにもこれにはわけがある。
「……魔具方陣師っていうのは知ってるか?」
「……名前だけなら」
「そいつらが使う多層結装ってのがこれまた厄介なの、ちなみにモンスターもこれを纏って襲ってくる」
専門用語が飛び交う、何しろ文字通り世界と世界をまたにかけて飛んでいる界図師だ。通貨やら言語やら特殊能力やら知らぬ惑星やら色々飛び出してくる。いちいち全部にツッコミを入れていたら霧がない。
「ほむほむ」
「その『イギリス』てのと『エウローパ大陸、嵐の目のサッカー競技場』の世界がぼやけて重なっているのよ。私が行きたいのは『嵐の目』なんだけど……界図を書く時、重なっていたり重なってなかったりしているってわけよ。それを正確に測るのが私の仕事」
店員は一呼吸おいてから難しい問題の答え合わせをするように答える。
「つまり、イギリスの正確な地図を渡せば。『嵐の目』の半分の地図は出来上がるってわけか」
「そういうこと! やっすい商談でしょ!」
店員からしてみたら、イギリスの地図の画像を手に入れて、プリンターで印刷して渡せば良いだけなのだ。それだけで界図師の目的の半分は達成したことになる。
そういうわけなので、店員は地球のネットに転がっている、イギリスの地図をプリントアウトして界図師に渡した。
「サンキュー! んじゃタダで作っとくね~」
界図師はそそくさと相談所から出て行こうとする。
「割引じゃなかったのか~?」
「良いの良いの! この商売って信用で成り立ってるもんでしょ? ましてや初心者の街なんて危険度ゼロだし~」
なんとも頼もしいなと感心もするが、それよりもお礼の言葉が先に出た。
「じゃあ、よろしく頼むな~! なるべく早くな~!」
不思議な人たちの不思議な休息が訪れた。




