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聞き取りの覚書

作者: C・ハオリム

暫くの間お付き合い頂ければ幸いです。

「若旦那の枯山水」(観光パンフレットより)


「参のお宮」の近くにイギリスのストーンヘンジの小型版を思わせる石組みが残されています。

昔、この辺りを納めていた庄屋の若旦那が本業そっちのけで造り上げようとしていたそうですが、その熱の入れように父である庄屋が怒り、■■寺の住職や村の若い衆が総出で打ち壊し、若旦那の目を覚まさせた、と言い伝えにあります。


■■寺の住職の話(調査のための聞き取り)


 あの枯山水のことですか…。

 パンフレットにあるとおり、と言いたいのですが、この寺の住職が代々言い継いでいる話と少し違います。

 他言は無用、下手に興味を持ったり、探ったりすると、ええ、先代の住職は何か調べていたようですが、ある日ふと姿を消して今に至ります。

 あの若旦那と言われている男の性格から話すのがいいのかもしれませんね。

 彼は、今で言う所の芸術家的な感性の持ち主でとても家業を器用に切り盛りできるような男で無かったと伝えられております。

 参のお宮に立派な白馬の絵馬が奉納されていますが、あれを画いたのは彼らしいということです。誰か絵師に師事したわけでもなく、独学であそこまで画き上げているのですから大したものなんでしょうな。…奉納された絵馬はアレだけじゃないんですが。

 私の聞いている所では、ある日いきなり彼は何かにとり付かれた様に、性格が変わったと言われております。

 何があったのか…、先代は夢でも見たのだろう、と言っておりました。感性の鋭い人たちはお山を見ていると不安に駆られたり、呼ばれたりしている気になるそうですが、それと関係があるのかもしれません。

 お山に居るモノがナニなのか…。我々は、敢えて「山の神」としか言っておりませんが、あのお山には人智を超えたナニかがいると…、村の者は決して口にはしませんが、あの存在を信じておるのです。

 あのお山に入って無事に出てこられることは、幸運としか言いようがありません。山菜に目がくらんだり、好奇心に突き動かされたのが時々入っておるようですが、その内帰ってこなくなります。

 ああ、あの枯山水でしたな。あれは、そんな呑気なモノじゃなかったようですな。

 アレに似た御神座のようなモノをお山で見たとか噂はありますが、多分、山の神を呼ぼうとしたしたんじゃないかと…、アレは枯山水じゃなく、御神座だったのでは、と思っております。

 そう、アレを造ったのは若旦那一人ではなかったようで、何でもお遍路の様な格好をした見知らぬ連中がどこからともなく、あの石を運んだり、建てたりしたそうです。

 あれを壊したのは、我々の身の安全を保つため、と聞いております。

 どうやって壊したかって?

 …村の若い衆総出で、しかも戦をするような物々しさで壊しにいったそうです。

 その場で何があったのか良く分かりませんが、何人かは帰ってこなかったと聞いております。若旦那もそれ以来、姿が見えなくなったそうで…。

 一説にはそこに「山の神」が居たとか…。帰ってきた者の中には、性格が変わってしまった者もいたようです。

 …先ほどの絵馬の話ですか…。

 ええ、この寺で預かっております。

 見ないほうが身のためと申しますか、私は心の平安を取り戻すのに暫くかかりましたよ。

 …どうしても見たいと仰るなら…、この箱の中に入れてあります。

私はもう見たく無いので席を外させてもらいますが、決して他言したり、持ち出したりしないで下さい。

 噂では、枯山水を壊しに行った若い衆がそこで見たモノが描かれていると言われています。

 …あの画家先生ですか?ええ、一度この絵馬を見られてますよ。

何か言っていたかって?

 ええ、一言「間違っていなかった」と言っておられたのを覚えています。

 私が知っているのはこの程度ですよ。

 これ以上知りたくもありませんし、誰かに話したいとも思いません。

 ただ、この絵馬を預かる以上、この寺の住職は知らなくてはならないことでしょうがね。

 

 追記:先代住職が残した資料は既に回収済みである。近々、この絵馬も回収する予定である。

お読み頂き、ありがとうございます。

これからも、なんだかんだと書き散らかしていく予定です。

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