不幸?
けたたましく鳴るケータイのアラームが今日は学校ですよ、と親切にも爆睡中の水間理篇に告げている。当の理篇はというと慣れた手つきで解除作業にかかっている。
「なんだよこのアラーム、二重ロックになってんのかよっ…くそったれが」
遡ること前夜、彼の通う高校の始業式を明日に控えたその夜、理篇はいつも以上の緊張感に苛まれていた。
「またこの日が来たか…初日から遅刻なんてみっともないことはできねぇよな」
という極論に至った。
そこで理篇はスマートフォンで人気の高い目覚ましアプリをダウンロードすることにした。
『二重ロック式アラーム目覚まし君』
なるものを落とした彼は、満足したのか七時セットのアラームをかけることにした。
問題はこの時起こっていた。
とにかく時間通りに起床することができればいいや、なんて甘い考えをもったのが運の尽き、理篇はアラームを解除するためのロックナンバーを完全に記憶から消去しており、ようするに今も彼の部屋で鳴り続けている大音量悪魔ノイズはこれから先、鳴り止むことはないということだ。
「なんたる不幸……いや、これは俺の不注意が招いた妥当な結果だ」
なんて落ち着いた感想を述べられるのも時間の問題、急がなくては時間通りの電車の発車時刻に間に合わなくなってしまう。
「っと、仕方ないな、ケータイは今日は諦めるしかないか…」
と理篇はスマートフォンを布団にぐるぐるに被せた。