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好きの自覚は遊園地で?!

ここ数週間、弓弦と遊びに行ったりして、とうとう俺は気づいてしまった。


(・・・俺、コイツのこと、好き、かもしれない・・・)


まー、少し考えればわかる話だ。


今まで女っけがなかったのにいきなり中身はちょっとアレだけど、見た目可愛い弓弦が瀬名さん瀬名さんつって、慕ってますって風によって来たんだから。




*********



映画に行った二週間あと、MRIの結果報告と一緒に遊園地に誘われた。


遊園地に到着してすぐ、作戦会議(アトラクションを回るためのだそうだ)と称してベンチに座った。


「で。どーだった、結果は?」

「はい、あの何にも異常は出ませんでした。わざわざ心配してくださって、ありがとうございます。今日も無理言ったのに一緒に来てくださって」

「・・・不良は暇だからな」

「それ、嘘ですよね?瀬名さんがアルバイト一杯入れてること、ユージさんから聞いて知ってます」


(ユージ・・・。お前何余計なこと言ってんだこの野郎・・・)


「つーか、ユージと仲良くなってんのな」

「はい。ユージさんは私の事応援してくださるって」

「あぁ、そう・・・」


それであわよくば弓弦の友達でも紹介してもらおうという魂胆なんだろう。見え見えだっつーの。


しばらくマップとにらめっこしていた弓弦が顔を上げて唐突に言った。


「それじゃあ、瀬名さん。ジェットコースター乗りましょージェットコースター!!」

「え、何いきなり。ちょーっと待て!って」


俺の手を引いていこうとするから、全力でその場に踏みとどまった。


「もしかして、瀬名さん、苦手ですか?ジェットコースター」


言い当てられて、俺はそっぽを向いた。


「・・・悪ぃかよ。あーいう加速度変化されんの無理。マジで無理。ここで見てっから、一人で乗ってくれ」

「むぅ。一人は面白くないです。・・・じゃ、メリーゴーランドはどうですか?」

「・・・なんで今度はメルヘンかつガキの乗り物になるんだ・・・?振り幅おかしいぜ?」

「・・・フリーフォール」

「無理」


だから絶叫系無理だっつってんだろー!と叫びだしそうになる。


いい歳した男(しかもパツキン不良)が言うと恥ずかしいから言わねーけど。


「コーヒーカップは大丈夫ですよね?カップルの定番ですし!」

「へ、いや何?・・・カ、カップ・・・」

「あ、今なら空いてますね!!ほら早く瀬名さん!!」


カップルという単語に一瞬思考がフリーズした。

その隙を突かれて、引きずられる。



気がつくとカップの中だった。


しかも乗ってるの俺たちだけ!そりゃそーだ、大体は絶叫系行くよな!


係員のおっさんが、なんか微笑ましい感じで見てる。


(ちょ・・・なんの羞恥プレイ?!)


恥ずかしい、超絶恥ずかしい。


(弓弦はまだいい。なんか違和感ない。似合う。・・・でも俺は無理でしょ?!完っ全に浮いてるよな、あぁ?!)


メルヘンなカップにパツキン不良の俺!!


「どうしました?瀬名さん?ほら、ここ回すとくるくる回るんですよー」


にっこり笑う弓弦。

その笑顔を見ていたら、文句なんて言えなかった。


「・・・いや、なんでもねぇ。うん、そーだな。ぐるんぐるんに回しちまおーぜ・・・」


俺は乾いた笑みを浮かべていたに違いない。

なんか、精神的ライフが削られまくった。




・・・ぐるんぐるんに回しまくった結果。


「・・・っうぇぇ・・・気持ち悪い・・・」


俺は吐き気でノックダウンされた。


(回しすぎた・・・あそこまで回すんじゃなかった・・・)


「大丈夫ですか?瀬名さん?どこかで休みます?」


何故か弓弦は平気そうだ。

コイツ強いな、見かけによらず。


「い、いや。大丈夫だ。ちょうど胃の中空っぽだったし、もう少ししたら治る、と思う」


(俺、三半規管も弱かったんだな。・・・知らなかった)


そもそも遊園地なんて来たことがなかったから知りようもなかったってことだろうけど。


近くのベンチに腰を下ろす。


(あー、まだ世界が回ってらぁ・・・)


「・・・ごめんなさい、私が無理に頼んだから」

「あ?謝んな。俺がやりすぎたんだし、俺の三半規管が弱いのが悪い。お前は何にも悪くねーよ」


だからそうしょげんな。


そういうつもりで、弓弦の頭に手を伸ばした。

触れた髪の感触は、すべすべしてた。もっと言うと・・・気持ちよかった。


「っあ、の?瀬名さん・・・?」

「あぁ、悪ぃ。嫌だったか?」


普通は嫌だろうな。いきなり男に髪触られんの。


でも弓弦ははにかむように笑った。


「いえ、嫌じゃ、ないです。なんていうか、お兄さん、みたいだなって・・・。あ、ごめんなさい。瀬名さん私より年上です、よね」

「・・・一個だけだし、学年はタメだから気にすんなって最初に言ったろ?・・・それで?次は何にすんだ?」

「もういいんですか、休憩」

「おう」


なるべく元気に言った。


「・・・そうですねぇ。ミラーハウスに行ってみたいです」

「おし、んじゃ行こーぜ」








それからはミラーハウス、ペダルを漕いで空中を散歩する的なやつ(名前?んなもん忘れた)、たまたま近くでやってたゆるキャラショーを見て、園内のフードコートで今は昼メシ中だ。

俺はバーガー、ポテト、シェイク。弓弦はたこ焼きと焼きそばだった。


「粉もん好きなの?」

「はい。こういうところで見かけるとつい、食べたくなっちゃうんですよね」


口の端に青のりをつけたまま笑う。


(・・・そういや弓弦って、飾らねぇよな)


映画行った時も鼻水がぁぁとかフツーに言うし。


今まで見たことある女と全然違う。ケバくねーし、びても来ねぇ。


(・・・それなのに、スゲェ可愛い)


俺がじっと見てたからか、弓弦は首をかしげて俺にたこ焼きを差し出してきた。


「どうぞ?美味しいですよ?」


はい、あーんとか言ってる。


(ちょ、それ何?!ナチュラルにあーんとかすんなって!!)


俺は慌てた。それでもたこ焼きは近づいてくる。


「・・・あーん・・・」


自分でもサムイとは思ったが、口を開けてたこ焼きをほおばった。


アツアツ、外カリ中フワ、ソースの香ばしい匂いと味。


「・・・旨いな、たこ焼き」

「でしょう?一回本場で食べてみたいなぁって思ってるんですよ。知ってます?大阪の人って皆一家に一台たこ焼き器があるんですよ」

「へぇ?スゲーな。流石ソウルフード。・・・ポテト、食う?」

「え、頂いていいんですか?」

「たこ焼きもらったし。・・・あぁでもポテトだけじゃ釣合い取れねぇな。シェイクも飲む?」

「え・・・シェイクも、いいんですか?」


なんか戸惑った感じの弓弦の態度に、なんか変なこと言ったかと思った。


「あ、もしかして嫌い?これフツーのバニラだけど」

「いえそうじゃなくって、あの・・・間接キス・・・に、なっちゃうんです、けど」


(間接キス?!)


「か?!・・・ごめん、そこまで気づかなかった。今ストローもらってくっ?!」


俺が席を立とうとした時、弓弦がシェイクのストローに口を付けた。

俺が言葉もなく見つめている中、弓弦はシェイクを吸っていた。


「何やってんの・・・?」

「・・・美味しかったです。ありがとうございました」


えへへといって、頬を赤く染めて弓弦は笑った。


(なっ・・・)


嫌だったんじゃねーのか?違うのか。

ていうか間接キスってそれお前・・・?!


(あーん以上に恥ずかしいぞ?!・・・何なんだ、コイツは!)


絶対俺今顔赤い。しかもなんか動悸がする。


「・・・そりゃ、良かったな」


ぶっきらぼうに言って座り直したが、なんかもうスッゲェ恥ずかしい。


さっきからずっとそうなんだけど。

なんだ今日は俺の羞恥プレイ記念日なのか?


後は一刻も早く食べ終わることしか考えられなかった。










「・・・あれ?もう夕方なのか。はえーなぁ」


昼メシのあと、お土産とかの買い物をしてるとあっという間に時間が過ぎていた。


「そうですね。あ、最後にあれだけ乗りたいんですけど」

「何?」

「観覧車です!」

「・・・ぉ、おう」


ここで密室に二人かー。気まずくねぇかな。


少し心配になる。


でも弓弦が本当に楽しみにしてるっぽいから、付き合おうと思った。









「今日もありがとうございました。本当に楽しかったです」


観覧車に乗って、開口一番弓弦はそう言った。

今日だけで、何回礼を言われているんだろう。


しかも今日は遊園地に来たけど、俺のせいで弓弦は絶叫系アトラクションに乗らなかった。


「弓弦、お前ホントに楽しかったのか?俺に合わせたせいで、全然絶叫系、乗れなかったじゃねーか。ジェットコースターとか、フリーフォール、とかさ」


最初に弓弦が候補としてあげたものを言った。

きっと彼女はこれに乗りたかったのだろうと考えて。


「いいんです」


窓から夕日を見つめていた弓弦は俺に向き直ってそう言って笑った。


「でもお前」

「いいんですったらいいんです。・・・私にとっては絶叫系アトラクションよりも、瀬名さんと一緒に乗ったコーヒーカップの方が楽しかったんです。乗り物がどうとかじゃなくって、瀬名さんと一緒に居られたことが、楽しかったんです」

「っ弓弦・・・」


(オトモダチだとしか言わねぇ男なのに、どうして・・・)


「だって私、瀬名さんが好きですから」


それを聞いた瞬間、心臓が跳ねた。







*********




(思えばあの時の言葉だよなぁ。決定打)


部屋のベッドの上に寝転びながら、俺は遊園地でのことを思い返していた。


俺の手にはあの遊園地のゆるキャラのキーホルダー。

帰りになにか記念になるものと思って買ったものだ。


それを手の内で弄びながら、俺は苦笑いを浮かべた。


「・・・あそこまで言われて、落ちねー男はいねぇよな」


どうしよう。好きになるつもりなんか、なかったのに。


俺が好きになったって、あいつのメーワクになるだけなのに・・・。


(だから、言わねぇ。絶対)


枕元の写真を見た。


「・・・どう思う?親父、母さん・・・」


写真の中の二人は幸せそうに微笑むばかりだった。



次回はちょいシリアスになる予感・・・。

次回更新は・・・ちょっと未定です。(8/14現在)

でも、8月中に完結予定(目標)なので、またお時間があるときにでもお付き合いいただければ嬉しいです。ペコリ

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