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定番の映画館デートとか?!後編

ブサ犬を嬉しげに抱えた弓弦と映画館に戻る。


適当にジュースとポップコーンを買った。弓弦がうるさかったから俺は全額払うつもりだったけど、割り勘にした。


「あー、そーいや結局何見るんだっけ?」


全然気にしてなかった。


弓弦は映画のチラシを見て言った。


「感動するって結構人気なんです。『君とぼくの五日間』っていう青春ものです」

「へー」


(青春ものか。・・・そういや俺も世代としては青春時代なんだよなぁ・・・)


自分が青春を過ごしている自覚はほぼない。


ユージあたりに言わせると、『立派に青春してるじゃんよぉ。こんのリア充め!』らしいが。


(・・・もしかして、外から見たら、フツーに映画館デート?なのか、これ・・・)


隣に座った弓弦を見る。

実際弓弦みたいなカノジョができたら・・・なんて考えた。


(・・・とりあえずユージには自慢しそう、だな。・・・いやいや、何考えてんだ俺?)


危ない危ない。

なんか弓弦の思惑にはまりそうだったぞ、今。


(あれだ・・・今は弓弦に付き合ってるけど、コイツが飽きるまでのことだからな、どーせ)


そうだそうだ。

パツキン不良が珍しいから、構ってくるだけだ。


「始まりますねー、瀬名さん。楽しみです」


弓弦は嬉しそうにニコニコしている。


「・・・あぁ、そーだな」


コイツがいなくなる未来を想像したら、少しだけ、少しだけ寂しいような気がした。


(・・・でもそんなことは、ぜってぇ言わねー)









映画は、転校生と僕がいろいろ喧嘩も経験して仲良くなったという時に、転校生が事故で意識不明の重体に陥るというもので、泣かせどころははっきりしていた。


『ねぇ、カズ、いつまで寝てんのさっ。一緒に遊ぶ約束、すっぽかすつもりなのかよ?!』


主役の少年がベッドに横たわる親友に泣いて縋っている。


(意識不明の重体だっつってんのに、返事するわけねーだろ)


ポップコーンを口に入れながらそう思う。


(・・・返事、するわけねーのに・・・)


頭で分かっていても、心がついていかない。


スクリーンの中の少年と、いつかの俺が重なって見えた。


映画はここで回想シーンに入った。


初めて会ったとき。喧嘩したとき。仲直りして一緒にアイスを食べたとき。クラスで歌った合唱曲がBGMで流れ出す。


(・・・ぁ、なんか、ダメだ・・・つーかなんで・・・)



俺、泣いてんだ・・・?



隣の弓弦に知られないかとビビる。

チラ見すると。


(っ・・・・・・うわぁ、号泣・・・)


俺がちょっと引くくらい泣いてた。

驚いたからか、俺の目から涙は引っ込んだ。


「・・・弓弦?」

「っヒッ、ぐすっ。せ、瀬名さぁん・・・ティッシュくださいぃぃ・・・」

「ティッシュ?」

「自分で持ってた分使い切っちゃいましたぁ・・・」


顔を半分隠しているから目だけしか見えないが、その縋るような目に、少し罪悪感が・・・。


「・・・ごめん、俺ティッシュ持ってない・・・」


逆に俺が持ってるって思う方が変だ、なんて責任転嫁してしまう。

ハンカチ王子じゃねーんだよ。・・・今回はティッシュだけど。


「そ、そんなぁ・・・」


このままじゃ、外歩けませんーと続ける。


「いや、大丈夫だろ別に」


ちょっと腫れた目でも大丈夫だろ。なんて思った俺は甘かったようだ。


「・・・この鼻水まみれの顔で歩けって言うんですかー?!ひ、ひどいィィ」

「鼻水だらけってお前な・・・。わかった。エンドロールになったら持ってくるから、ちょっとだけ我慢しろ、な?」

「・・・ずみばぜん・・・」




映画はクライマックスに突入していた。


意識不明の親友の意識に最新機器で潜り込むとかいう、途中からSF的展開になっていたものの、無事親友の意識も戻って、一緒に学校に通う・・・という穏便なエンディング。


(ってか、途中おかしすぎだろ。客席ちょっと失笑してたぞ?・・・監督途中で交代でもしたのか?)


終わってみれば、前評判ほど感動ものとは言えない気がする・・・。

でも、それで俺泣いちゃったしなぁ・・・。


(コイツに至っては号泣だし。・・・てか、まだ泣いてる)


少し笑ってしまった。


それに気づいたのか、ジトっとした目で弓弦が見てきた。


「あーごめんごめんって。そう睨むな。ちょっと買ってくるから」

「・・・睨んでません!」


(顔真っ赤だ。・・・おっかしい奴。早く戻ってこねーとな)


暗がりの中、身をかがめて素早く移動した。




公衆便所の入口以外でティッシュがどこに売ってるかわからなかったから、結局便所探して買ってきた。・・・結構遠かったな。


「ほい。お待たせ」

「・・・ありがとうございます」


ティッシュで鼻をかむ。顔も拭く。


(おいおい。どんな使い方してんだ。)


「・・・いい映画だったな?」

「はい。感動して、涙が止まりませんでした」

「あ、そう・・・」


正直、そこまでの映画とは思えなかったから、相槌も気のないものになってしまった。


「瀬名さんはどうでした?」

「いや、面白かったぜ。・・・途中のSFとか特に」

「ああ!あそこもちょっと泣いちゃいました」

「え、あそこで?」


あそこはこの映画の笑いどころだろ?


そう思った俺に、泣いて真っ赤になった目を向けて弓弦は言う。


「だって、普通他人に自分の心の中とか、入られたくないって思うのに、かずくん、ひろくん(主人公)をすぐに受け入れてたじゃないですか。そこまで信じてるんだなぁって思って・・・」

「・・・そう言われれば、そう、だな」


そんな風に見てなかった。


(コイツの感受性って、凄いな・・・俺とは、全然違う)


「お前、スゲェな」

「へ?」


思わず感嘆の言葉が口から出た。


「俺、ショージキそこは笑うとこだと思ってた。いきなりのSF展開だったし・・・。でもそっか。考えてみればたしかにそうだ。・・・弓弦、ありがとな」

「えっ、そんなお礼言っていただくようなことでは」

「俺が言いたかったんだ。お前と見てなきゃ、この映画はイマイチだなって思って終わってた。・・・うん。今日は誘ってくれて、サンキュな」


自然と顔が微笑んでいた。


弓弦の顔が真っ赤になる。


「こちらこそ、あの、ありがとうございます。一緒に映画見られて嬉しかったです。瀬名さん大好き!」

「っだから、そーいう台詞は軽々しく使うなって!!」


今度は俺の顔が真っ赤になった。


・・・なんか読み返して恥ずかしくなってきた。でも多分糖度は次回の方が高いと思います・・・。うわぁ。


次回更新は21日22時を予定しています。

よろしければお付き合いください。

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