第九十六話 闇の住民、再び
『ーーー約束を果たそう。お主に更なる使い方を教えてやる』
無意識にその差し伸べられた手を受け取り、身を委ねると意識は外に弾き飛ばされ真っ暗な闇の中へと陥ちていく。
心地よい空間を漂いながら目を見開くとそこは、見覚えのある空間が広がり杖をつきながら腰の曲がった白髪のご老人が、俺の両手をしっかりと握りしめていたのである。
この懐かしい思えてしまう真っ暗な空間。
そして、目の前にいるご老人。
ほのかに両手にあるアーツから、再び再開できた事を嬉しい。そんな感覚がしてくる。
間違いない、目の前にいるご老人は先代黒と白のアーツの使い手、ヴィンランド・ガーゼベルトに間違いないだろう。
あの時俺は、ヴィンランドと出会い。そして、潰れそうな家に案内されたのを覚えている。
しかし、今は違う。
力が抜けたかのように無気力な状態で、ただ立たせれていた。
軽く小突かれば倒れてしまうそんな状態の俺を支えているのは、きっとヴィンランドだろう。
そして、ヴィンランドの力が両手にある黒と白のアーツに流れてくる。
俺がアーツを発動しているのではなく、ヴィンランドが俺の身体を使い勝手にアーツを操っている。
そんな感覚に囚われていた。
“一体……何を……?”
言葉も発する事が出来ず、ただこれから起きる事を第三者視点。
即ち傍観者のようにただ見ている事しか出来なかった。
見ているだけで理解出来る、ヴィンランド凄さ……
ヴィンランドの操る黒のアーツは、俺が発動するのよりかなり強力で凶悪だった。
“すごいけど……これって……”
一瞬にして世界を滅ぼしてしまうのではないか? と疑問に思ってしまう程の破壊力を黒のアーツを発動する事など、現時点の俺には不可能だった。
死神は割れた黒のアーツを何故か修復。力を使い果たし倒れている俺に止めを刺そうとしている死神は近づいてくるが、不死鳥はその危機を助け出してくれた。
おかげで俺は黒のアーツも元通りに、死神に殺される事なく事なき終える事が出来た。
ブリュットから授かった不死鳥。本当に俺の力になろうとしてくれている。
闘気を覚える事が出来たのも、不死鳥のお陰だし……
当初は焼き殺されると思っていたんだけど、考えを改めないといけないかもな。
こうして俺は死神に殺される事なく窮地を脱出した。めでたしめでたし。
……じゃないよな。
意識がヴィンランドではなく、俺の物になったのと同時に身体に感覚が戻り口を開いていた。
「……なんであんな事をしたんですか? 俺、超危険人物になってしまう所でしたよ!?」
再会を喜ぶ前に俺は、ヴィンランドを睨みつけていた。
「そう睨みつけるものではないぞ。二代目よ……」
一歩間違えば俺は、世界の破壊者となってしまう所だ。睨みつけてるのは、当然である。
「ただ儂は、黒のアーツの限界値までをお主に見せてやりたかっただけじゃ」
「……」
確かに俺には、あそこまでの力を発動するのは無理だ。
でも、あんなの俺は望んじゃいないし、やりたいとも思わない。
「別に儂はあそこまでの力を発揮しろとは思ってはおらん。単純に黒のアーツの力を身を持って体験してもらいたかったのじゃ……」
「それは結果論ですよね? 死神が邪魔をしたから黒のアーツは最後の最後で発動しなかった。と俺は思っているんですけど……?」
「……強くしてやろうかと思っただけなんじゃがのぉ……」
それにしても俺の目の前に現れたタイミングが、良すぎるだろ。
この世界に、闇の世界か?
ここに来るタイミング不明確なんだよな。
そして、怪しい。何を考えているのかわからないし。
だが、確かに言える事は、ヴィンランドは初代黒と白のアーツの持ち主。それは間違いないようだ。
「しかし困った事に、お主には封印がかかっておるのぉ〜」
「封印……?」
なにそれ? 全く持って見に覚えはないぞ。
確かに幼い頃、アーツが暴走しない為にアーツ自体を発動出来ないように封印はされていた。
だが、今はその封印は外れ普通にアーツを発動する事が出来ている。
なにを持ってヴィンランドは、封印がかかっていると言っているのだろうか?
「そうじゃ。簡単に言うと【黒と白のアーツ】の真の核なる部分が封印されておるようじゃな」
「封印されていると……どうなるのですか?」
「絶対に暴走は起きん。その代わり威力は7割っと言った所じゃな……」
「なっ……!?」
……そんな話し聞いていないぞ?
セルビアさんたちは、勿論この事を知っていてよな……?
知っていて黙っているよな……
「因みにその封印は、人間には無理じゃな」
「えっ!?」
じゃ、知らない……のか?
「ふむ……」
ヴィンランドは顎に手を当てながら、再び黒と白のアーツを黙って見つめていた。
「どうやら玄武が封印したようじゃな」
「玄武……?」
「あいつならやりそうじゃのぉ」
この世界には血脈を守る四精霊と呼ばれ朱雀、白虎、青龍、そして、玄武が存在している。
そして、北に位置するヴィンランド領やガルガゴス帝国。アーツを主流に生活しているこの区域は玄武が、地下でひっそりと見守り支えているのである。
「ちょっと待ってください」
「なんじゃ?」
「突拍子もなく、いきなり壮大すぎる話しに発展しそうなので……玄武が存在し黒と白のアーツを封印したでいいです」
「ふむ、そうか?」
世界とか……区域とか無理無理。
ヴィンランド領やガルガゴス帝国他にも国や街があるようだけど、それ以上の理解は無理。
そんな面倒そうな話しは、もっと頭の回転の早い人に任せる。
俺は、アーツハンターでいい。
よし、話しを戻そう!!
「それで……ヴィンランドさんは、その封印解く事は出来るのですか?」
「無理じゃのぉ〜玄武を直接探し出すしかないのぉ〜しかし、お主。封印されたって事はじゃ、一度玄武に会っているって事じゃぞ?」
「一度会っている……?」
「うむ」
ふむ、全く記憶にないな……
「まぁ封印解除は戻ってから、ゆっくりと玄武を探す事じゃな」
確かにヴィンランドの言う通りだよな。
玄武を取り敢えず探し出して、封印を解いてもらわないとなぁ。7割の力しか発揮していないとは知らなかったな。
一度会っているって事は、今まで俺が行った事のある場所って事だよな……
何処だろ……??
「ですね……って俺、ここに来た意味あるのですか?」
俺は、ヴィンランドに『お主に更なる使い方を教えてやる』と言われてここに来たみたいだが、封印が解けない以上、意味ないような気がして来たぞ……
「封印されておっても、黒と白のアーツを儂がどうやって使ってきたか。それをお主に伝える事ぐらいしかないのぉ〜」
「それで、更に強くなるんですか?」
「お主次第じゃろ。黒と白のアーツを信じ共に生きる覚悟があるのなら、儂は全てをお主に教える」
「……共に?」
「そうじゃ……例えるなら『黒のアーツを使い過ぎたら眠くなって困るから、白のアーツを発動しておこう』とか」
「……」
「『白のアーツで回復するのはいいけど、使いすぎると寿命が縮むから黒のアーツ発動しておこう』とかじゃな」
「……」
全部思っていた事だけど……
だってそれはデメリットを回避する為の処置だし、仕方がない事なのでは?
黒のアーツを発動して眠気くなるのは仕方ないが、白のアーツを発動して寿命が減るのはいやだぞ?
「なぜ、お主がドランゴに勝てぬか。教えてやろうか?」
「!?」
「ドランゴは自ら使うアーツを信じ、その身を委ねておる。更にあやつはアーツの声を聞こうとしておる。正に一心同体って奴じゃ」
「??」
「そこがお主がドランゴに勝てぬ理由だ。アーツと心を通わせぬ限り闘気を覚えた所で意味はない。無駄な努力、焼け石に水じゃな」
「なっ……」
更にヴィンランドは鋭い口調で、指摘してくる。
それはまるで今まで俺の戦い全てを見ていたかのような……そんな口ぶりだった。
「最強の黒と白のアーツが何故……ったく……情けないものじゃ」
「……」
封印されているとか、問題外のようだった。
問題は俺にあるようだ……
「ドランゴと互角に戦いのなら、まずアーツに耳を貸す事じゃ」
「耳を貸す……?」
「きっかけと言う名の道は先程儂がつけておいた。後はお主次第じゃ」
ヴィンランドの言葉と共に俺の身体は光り輝き薄くなって行く……
「こっこれは……?」
ここから戻った時と同じ現象。目が覚めるって事か。
「どうやら時間のようじゃな」
「俺は、なにも教えてもらっていませんよ!?」
「言うべき事は沢山じゃ。じゃが、一番重要なのは、黒と白のアーツはお主を主として認めておる。後は信じてお主が思った通り発動して見る事じゃ」
どんどん俺の身体は薄くなり、この場に留まる事を許してくれそうにない。
「なんで、最後の最後で意味深な言葉を残すんですか!!」
「フォフォフォ」
ですかぁ〜
ですかぁ〜
と残響を残しながら俺の身体は、闇の世界からスッと消えてなくなった。
「……しかし不死鳥を従えて来るとは思っても見なかったわい。ここは流石と言うべき事なのかのぉ〜フォフォフォフォ……」
一人佇むヴィンランドは、静かに闇の中に消えていくのであった。
更に東の青竜、南の朱雀、西の白虎。も存在しており、アーツ以外の文明が進んでいます。
しかし、四精霊の互いの結界により互いの区域の人の行き来は不可能で干渉も四精霊以外出来ないです。
要するに、他の精霊がいる世界は全く別な話しとなっております。




