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Arts hunter   作者: kiruhi
青年編 ー最後の教えー
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第九十一話 対峙

 ギレッドとドランゴ。

 互いの拳がぶつかり合う度に、地面は震え放たれる闘気の衝撃に寄って放射線状に全てをなぎ払って行く。


 マーシャルの張った結界はグランドのみ。

 これがもし建物ごと結界の中に入っていたとしたら、あっという間に瓦礫と化していた事だろう。

 そして……

 俺はと言うと、闘気を全身に気を気張り弾き飛ばされないように耐える事で精一杯だった。



「こんな戦い久々だな。中々、楽しませてくれる」

 まだ余裕たっぷりのドランゴに対し、ギレッドもまた余裕で言葉を返していく。

「儂もじゃっ」

 再び激突する二人の間には言葉ではなく、拳と拳で語り合っているように俺には見えた。




「むんっ!!」

 ギレッドの言葉と共に音速を越え、衝撃波はドランゴへと放たれる。

 俺には、どうする事も出来なかったギレッドの衝撃波をドランゴは、簡単に闘気を使って消し去ってしまうのだ。


 これだけで俺とドランゴの次元の違いを、見せつけてられてしまった。


 衝撃波をドランゴが消し去っている間にギレッドは前進。

 ドランゴとの間合いを、詰める。


 轟音と共にギレッドは、ドランゴの顔面目掛けて衝撃波を纏った拳を振り下ろしていく……


 ブンッ!!


 空振りした音と共に三日月状の衝撃波が、空彼方に飛んでいくのであった。

 ドランゴはギレッドの振り下ろされた拳を、身を逸らす事で交わし更に後ろ回し蹴りで反撃していたのだ。

 だが、そのドランゴの反撃もギレッドは身体を沈める事で回避し、瞬時に両足に力を籠める。

 そこから繰り出されたのは、地面スレスレからすくい上げるように突き上げていく剛腕であった。

 ドランゴもまた、その拳に合わせるかのように拳を振り下ろし再び大激突。


 ギレッドとドランゴが激しくぶつかり合いたびに、地面はボコッとへこみ地形を変えていく。




 ドランゴの姿が、残像のようにかすれて行く。

 俺には、ドランゴの動きは捉える事が出来なくなて行った。

「……えっ?」

 人間が消えるなどあり得ない事。

 ならば…… 

 ドランゴは俺の目に写らない程の速さで移動している。

 そう考える方が、俺の中に抱いている疑問を解決へと導いてくれた。

 だが、ドランゴは……

「どこに……?」

 行ったのだろうか?

 今はギレッドと戦闘中である。

 当然姿を表すのは……

 ギレッドの視界を付いた場所。


「ギッ……!!」

 ギレッドの名を叫ぼうとした瞬間、ドランゴはギレッドに向かって攻撃を仕掛けようとしていたのであった。


 だが、俺にはドランゴの動きを捉える事が出来なくとも、ギレッドにはドランゴの動き……

 その物を捉えていたのであった。

「甘いわっ!!」

 ギロリと振り返り、睨みつける。

 そして、たちまち闘気を纏った衝撃波を発動させ、ドランゴを後退させるのであった。

「ちぃっ!!」

 地面を擦りながら後退して行くドランゴは、悔しそうに舌打ちをしていたのであった。


 ズズズズズズズズズッ……


 と後退が治まり、ドランゴはギレッドの次の攻撃に対して身構えるのである。

 だが、ギレッドは追撃する事はなかった。

「?」

 不思議な顔をしているドランゴに、ギレッドはドランゴの方に目を向け、話し出すのであった。

「おいっ……準備運動は、これくらいで良いかのぉ?」

 ギレッドの問いかけにドランゴは一瞬目を丸くしたように俺には見えたが、すぐにニヤリと笑みを浮かべギレッドの問いに答えるのである。

「……あぁ、十分身体は暖まった」



「……」


 “マジかよ……”


 俺には覚えたての闘気をまとい、二人の戦いの中から産まれる闘気の渦に飲み込まれないようにする事。

 これだけでも、大変だと言うのに……


 この二人にとって今までの戦いは、ほんの小手調べに過ぎないと言うのか……


 凄いな。と関心するのと同時に、高揚感で胸が一杯だった。


 俺が目指している強さは、想像以上に険しく高い。

 いつか俺もこんな戦いをしたい……

 そう思いながらも、目が離せないでいたのであった。


「では………行くぞっ!」

「こいっ!!」


 ギレッドとドランゴ……

 全力の戦いが、火蓋を切る……

 願わくは、最後まで立って勝負の決着を見守りたい。

 そう思うのであった。




 ーーーギレッド視点ーーー



 ふむ……どうやら儂と、ドランゴの実力はほぼ互角と見ていいじゃろう。

 だが、少しばかり羨ましい面もある。

 儂の見たてでは、あゃつ(ドランゴ)は二十代後半。

 といった所じゃろ。

 儂が、あゃつ(ドランゴ)と同じぐらいの年の頃。

 才能のない自分にうち平伏し、伸び悩んでいた頃じゃ。

 そう例えるなら、今のルークのように。

 ルークは力の使い方を、流れを把握し取らん。


 それを読み取れた時、儂よりも強くなる事は出来るだろう。

 じゃが、それも今のままでは一生花開かんとは思うが……


 だが、儂の目の前におるこゃつ(ドランゴ)は違う。

 力を目覚めさせ、己の力。才能を花開かせようとしておる。

 そして、儂との戦いで生き延びたのち……

 新たな力に目覚めるかもしれん。


 ルークでは、太刀打ち出来ぬ程の力をこゃつ(ドランゴ)は秘めておる。

 ならばっ!!

 近い将来……

 末恐ろしい力の持ち主になるのは明白じゃ。


 出る杭は出る前に打つ。

 その役名、今ここで儂が果たす!



 ……

 ………


 ……と思っておったんじゃが、そう簡単にはいかんようじゃ。

 儂が攻撃を仕掛ければ、あゃつ(ドランゴ)はそれを避け反撃。

 逆も然り……

 互いの攻撃が空を切り、決め手となる一撃が入らないようじゃなぁ。


 だが、その決定的な一撃決める事で勝負は決するじゃろう……



 再びドランゴは、高速に動き始め儂の視界から消えて行こうとしていた。


「……ふむ」


 確かに、あゃつ(ドランゴ)の動きは速い。

 速さだけで言ったら、儂を超えているじゃろう。

 儂は遅くとも良い。

 一撃、入ればそれで終わるからのぉ。

 だが、速くはなくとも儂にはその動き見えておるぞ!!


 高速に動くドランゴの動きを正確に突き止める。

「ぬんっ!!」


 “大振りは、避けられる。ここは小さく最短ルートで奴の顔面に……”


 小さく素早く動く拳を、ドランゴは一瞬にして勘付いていた。

「!!」

 だが、ドランゴは避けきれなかった。

 繰り出した拳はドランゴの顔面に直撃。

 その反動で、ドランゴの上半身は大きく後ろへと反り返っていく。


 “殺ったか!?”


 そう思ったが、甘くはなかった。

 上半身を仰け反らす事は出来たが、下半身は後退してはおらんかった。

 避けきれない、と悟ったドランゴは下半身に力を込め首を捻る。

 たったそれだけの事を、瞬時に考え実行に移す。

 あまつさえ、儂の放った拳の威力を最低限に留めて入れ受け流したのだ。

 だから、その場で踏み留まる事が出来た。


 “やりおるわいっ”


 思わず、楽しい戦いに口元が緩んでいくのがわかった。


 スウッ……


 と、ドランゴの左拳が儂の胸。

 心臓の辺りを正確に捉えていた。

「!!」


 “今度は、儂がやばいっ!!”


 だが、気づくのが半歩遅かった。

 ドランゴは叫ぶ。

「竜の逆鱗!」

「ぐはっ!!」


 “これがルークの言っておった、儂と似た威力を持つと言うドランゴの技か……”


 一瞬にして、息が出来なくなる程の破壊力。

 更に、全身を衝撃波が巡り破壊していく。

 正に儂が理想としていた一撃に近い。


 だが、儂は倒れん。


 確かに、充分威力は持ち合わせておった。

 両足はプルプルと震え、支えているのが精一杯。

 両膝を着いて、呼吸を整えた方が楽なのはわかっておる。

 それでも……

 倒れる事自体、儂のプライドが許さんかったんだと思う。

 可愛い教え子が、見ている目の前で倒れる事など出来る筈もあるまい。



 そんな事を考えておると、ドランゴ追撃の手を休める事はなかった。

「これで終わりかな!!」

 そう言葉を残し勝った気でいるドランゴに対し、儂はゆっくりと呼吸を整えていく……

「竜の咆哮!!」

 両の拳を握りしめドランゴは、近距離から儂に向けて放とうとしておる。


 ……だが、奴もまだまだ甘い。


 竜の逆鱗のすぐ後、そう一呼吸置かずに攻撃を繰り出しておれば、確かに儂に致命的な一撃を与える事が出来たじゃろう。

 ありがたい事に、その一呼吸で充分じゃた。

 既に儂の呼吸は安定し、反撃の体制に入る事が出来ておるわいっ。


「フッ……甘いわっ!!」

 言葉と同時に、儂の周りからブワァァァァッ!! と衝撃波を巻き起こしドランゴを吹き飛ばす。

「くっ!!」

 ズズズズズズズズッ!! 


 とドランゴは、再び後退していくのであった。


「ふぅ……さすが衝撃のアーツの使い手。衝撃波に関しては、俺よりも破壊力は上だな」

「フッハハハハハハハハ……まだまだ青二才に、負けるつもりはないわっ!」


 確かにこれ程の力……

 アーツバスターではなくもっと他の道もあっただろうに……

 惜しい人材じゃな。

 セルビアと知り合っておれば、お互い幸せな道を歩めたかもしれんな。

 だが、何を言っても方向転換する事はないじゃろう。


 ……道を違えている以上、儂は容赦せんっ!


 それにしても儂も年をとったものじゃ。

 いやいや、全くもって年のせいにはしたくないものじゃ。


 ……じゃが現実的に判断遅れは、明らかに年のせいじゃろうな。


 ふむ……

 身体が急速的に重たい感じるわい。

 どうやら先程の攻撃で、儂の体力も残り少ないようじゃな。


 そう思いながら、ドランゴの立ち位置に狙いをつけ次の攻撃を仕掛ける。

 これが、儂の最後の攻撃になる。

 如何せん、この技は威力は凄まじいが、時間がかかるのが難点じゃな。

 ここは一つ、時間稼ぎでもするかの……


「お主に、聞きたい事がある」

「おいおい……年寄り特有の説教か?」

 軽愚痴を叩きながらも、ドランゴの警戒心は解けない。

 そこが、ルークとドランゴの実力の差でもある。

「……そうではない。ただ、少しばかり儂は聞きたいだけじゃ」

「なんだよ?」

「お主は、何の為に力を求める?」


 “ルークにも一度聞いた事がある言葉。果たして、なんと答えるかの……?”


「……」

 ドランゴは少しだけ考えたかにも見えたが、すぐ様儂の顔を真っ直ぐ向いて答え始める。

「力は俺の全てだ。力があったからこそ今の俺がいる」

「……」

「理不尽な道理を、払拭する力。

 助けられなかった命を、救えるまでに高めた力。

 そして、今の地位を得る為に振るった力。

 全て力によって出来たものだ」


 ドランゴは力強く拳を握りしめ、そう儂に語った。


「……力を手にして、その先にお主は何を求める?」

「その先だと……?」

「あぁ、そうじゃ」

「決まっている更なる力を手に入れる! 俺は俺の思うまま力の限り振るい続け、そして己の道を切り開く!」

「……」


 “こういう奴がおる限り、アーツハンターと手を取り合う事など夢のまた夢じゃなぁ……”


 ドランゴは、一歩前へ踏み出す。

「おしゃべりも、もういいだろう。時間稼ぎのつもりなのかもしれないが、そろそろ決着を着けようか」

「……あぁ、そうじゃな。充分時間を稼ぐ事が出来たわい」

「何!?」

 ドランゴが、声を上げる刹那……

 儂は、衝撃波で作り上げた立方体を作り出しドランゴを取り囲む。

 その大きさ、約大人五人分。


 “本当は、もっと大きいの作り出したかったのじゃがな……竜の逆鱗は、確かに儂の攻撃力を少なからず減らしていたようじゃ”


「ぐはっ!!」

 衝撃波で作り出した立方体の中では、空気中を伝播する圧力などが不連続な変化を起こし、超音速の衝撃波がドランゴに襲いかかる。

 要するに、息も満足に出来ず。

 身動き取れず、ドランゴは無限に襲いかかる衝撃波の渦にいるのである。


 見る見る内にボロボロに、成り果てるドランゴ。

「息は出来なかろう……今、その呪縛儂が解き放ってやるわいっ!!」


 ブオオオオオオオオオオオンッ!!


 音と共に両の拳を開き僅かばかり後ろに下げ、闘気を込める。

 両の手には超高温、超高密度に寄って衝撃波の闘気が出来上がって行く。

 両の手を再び握り締め、拳へと変えて行き叫ぶ。


「奥義っ、衝撃乱舞!!」


 言葉と共に下げていた両の拳を胸の辺りまで動かし静かにコツンッ……と拳同士をぶつけ合う。

 放たれた衝撃乱舞は、立方体を取り囲むドランゴの中でビックバンを起こし大爆発。


「ーーーーーーっ!!」

 言葉にならない絶叫と共にドランゴは、崩れ去るようにゆっくりと仰向けに倒れこむのであった。


 “儂の体力も、もう殆ど残っておらん。だが、この戦い……”


「はぁはぁ……儂の勝ちじゃ」






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