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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編ー序章ー
8/118

第七話 火の街ロールライト 〜四〜

『戒めの剣』

 突き刺された剣は徐々に食い込み、最後には柄まで食い込んでいく。

 そして、柄まで達した時……

 その者は、死に至る。


 本来、『戒めの剣』の使い方は、罪を冒し反省の色が全く見えないアーツハンターや、捕らえたアーツバスターから情報収集を行う為用いる事が多かった。

 故に『戒めの剣』の保管・管理方法はアーツハンターギルドの支部長が、必要と判断した時のみ使用が出来、それ以外は持ち出し禁止とされていた。


 更に『戒めの剣』に刺された場合……

 それを抜く事は、支部長にも不可能であった。

 指す事自体は誰にでも出来るのだが、抜く事が出来るのはアーツハンター協会の幹部のみである。

 幹部は『戒めの剣』を常に持ち歩く事が出来。

 そして、自己の判断で刺す事も抜く事も許可されていたのである。



 では……

 なぜ、ルークを刺した青年が『戒めの剣』を持っていたのか?

 それは少し話が遡る………




 ◆◇◆◇◆



 セルビアは支部長室で書類を確認。

 嫌々捺印を押していると、緊急と言う事で一通の書類がもたらされたまであった。


 それはリンク仮司令官からの援軍の要請の書面だった。


 書類を確認はたセルビアは許可という捺印をした後に考え込んでいた。

「確か、アルディスちゃん今日はルークちゃんと共に前線に行くと話ししていましたわねぇ……」

 独り言とも言える言葉に、セルビアは支部長としての勘が嫌な予感を告げていた。


 “使わない事を祈りますわ………”


 支部長室の壁に飾られている『戒めの剣』を取りながらもセルビアは、出発の決意をするのであった。


「支部長どちらに?」

「アルディスちゃんの元に赴きますわ」

「えっでも……?」

 受付の女性はセルビアの返答に困っていた。

 援軍要請の許可をセルビア自身が出した以上、セルビア本人が現場に行く必要はないのだ。

 むしろ、溜まりすぎている書類整理を一刻も早く終わらせて欲しいぐらいだった。

 だが、セルビアを止めてくれるアルディスは今はいない。

 誰もセルビアの行動を止める人物はいないのであった。


「すぐ出発出来るアーツハンターはいるかしら?」

「はい。何人かは……」

「では……その方たちと共に先に行っております。他の者は準備が出来次第後から来るように……と伝えて下さい」


 そう言ってセルビアは、アーツハンター支部から出て行こうとしたのである。

 すると……

 依頼から帰ってきたアードに、タイミング良く出会うのであった。

「あら、アードちゃん」

「セルビア? こんな所でうろついていていいのか? 書類は?」

 アードの言葉に、受付の女性はもっと言って。と心の中で叫んでいたのだが、セルビアはニコリと笑い言い返していた。

「これからアルディスちゃんとルークちゃんの所に、行きますの」

 誰も言えなかった事を直球で言い放ったアードに受付の女性は、流石くされ縁と思っていたが何事もなくその話題をスルーしたセルビアに、今日は残業だな……と思ったのであった。


「ルークの所に?」

「えぇ、嫌な予感がしますの。アードちゃんも一緒に行きます?」

「あぁ。行こう……」


 アードは疲れを癒す暇もなく、セルビアと共に小屋に向かったのであった。





 セルビアとアードが小屋の近くに着いた時には前方で強い光が見え、その光は次第に小さくなって行くのであった。

「今のは間違いなく【白のアーツ】だな」

「えぇ、アードちゃん急ぎましょう。ルークちゃんが危ないわ」

「なぜだ?」

「あれ程の質量。幼いルークちゃんに制御するのは不可能よ。【黒のアーツ】の反動が起こるわ」

「わかった! 急ごう!!」


 セルビアとアードは、黒のアーツの反動が起きる前に駆けつけようと更に急いで向かったのであったが、セルビアは走り泣かせらもな目の前にある空気の連動。そして経験による勘によってすぐ様これから起きる事を察知し叫びを挙げていたのである。


「アードちゃん! ストップ!!」


 セルビアの言葉と同時に【黒のアーツ】は大爆笑。

 急停止したおかけでアードは黒波動に飲み込まれる事はなかったが、自らが立っている場所ギリギリの範囲まで【黒のアーツ】は爆発していた。


「ルーーーク!!!!!」

 爆風が降り注ぐ中、アードの叫び声が響き渡っていた……



 目の前に起きている光景を見ながらセルビアは、『戒めの剣』をギュッと握りしめていたのである。


 “ルークちゃん!!!!”





 次第に大爆発はおさまり、煙は徐々に晴れていく。

 大地しか残っていないその場所に、ルークは立っていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 と突然泣き出す青年。

「なっなによ………これ…………」

 茫然と立ちすくむ女性。

「!!」

 怖くなり言葉もでないまま逃げ出してしまうアーツハンターがいた。




「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 ルークの怒号とも言える叫び声と共に再び【黒のアーツ】が発動したと言う事はセルビアやアードにはすぐに察知する事が出来た。

「アードちゃんごめん!!」

 アードがどうにかして、この状況を打破しようと考えている最中にセルビアからの謝罪。

 セルビアのアードを見つめる目は真剣そのもので、なにか妙案を思いついた。と言う事はアードにはすぐに理解出来た。

 理解は出来たが、アードはセルビアが『戒めの剣』を握りしめている事に気がついたのであった。

「セルビア……まさか……?」

「こうなったら以上、使うしかないわ」

「待て、セルビア! まだ止められる!!!」

「もう無理よ!!」

「セルビア………頼む………俺を信じてくれ………」


 アードの賢明な説得にも関わらず、セルビアは自らが立てた結論に反対しているアードの言葉に最後には首を横に振り続けていた。



 ドン!


 突如の出来事だった。

 アードとセルビアが『戒めの剣』について口論をしている最中に、先程泣き叫んでいた青年がセルビアから『戒めの剣』を抜き去さって行って行くのである。

「!!」

「おいっ待て!!」


 セルビアとアードの制止を振り切り青年はルークへと突き進んでいく。

 それはまるでスローモーションのように突然の事で、全ての成り行きを二人は只々みている事しか出来なかったのである。


 青年は容赦なくルークに『戒めの剣』を突き刺し、崩れ落ちるかのようにルークはその場で倒れていくのであった。


「あっぁぁぁぁああ!!!! ルーーーーーーークゥゥゥゥゥ!!!!!」

「アードちゃん落ちついて、ルークちゃんはまだ死んではいないわ! むしろこの状況では、あの方法が一番の安全策よ」

「セルビァァァァァ!!」

 アードは涙目になりながら激昂。


 バチンッ!!!


 セルビアはアードの頬を思いっきり叩き、叫んでいた。

「アード・フォン・ルフ! 落ち着きなさい!!!」

 どんな事があっても決して怒鳴らないセルビアは怒鳴った。

 しかし、叩かれた頬を抑えながらもアードは青年に向かって走って行くのである。

「貴様ぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 静止の効かないアードを後ろで見ながらセルビアは【焔のアーツ】を発動。

「くっ!【焔のアーツ】発動!!」

 セルビアが発動した【焔のアーツ】は、アードの後頭部を直撃。

「セッセル………ビァァァァァ…………」

 アードは力の限りセルビアの名を呼びながらその場で倒れ気絶したのであった……


「ごめんね………アードちゃん………」





 セルビアは青年の元にゆっくりと近づいて行く。

 青年は【鎖のアーツ】の尖端をセルビアに向けていた。

「来るな!! …………いえ、来ないで下さい。支部長!!」

 セルビアは両手を上げながら、青年を見つめている。

 これ以上犠牲者を出さない為にも、セルビアは思考を巡らせる。

「わかったわ。これ以上近づかないわ、でもそこで倒れているルーク・ゼナガイアは連れて帰ってもいいかしら?」

「支部長すみません! こいつは絶対に許せません!!! こいつは! こいつは………!!!」

 青年は泣きながらセルビアをジッと見つめ……

「…………お断りします!」

 とキッパリと断ったのである。


「わかったわ、貴方の言う通りにしますわ。でも(わたくし)を支部長とまだ呼んでいただけるのなら、少しだけ言う事を聞いてくださるかしら?」

「?」


 セルビアは青年に、ルークをアーツハンターギルドの地下室の牢屋に入れ、青年もその中に入っていい事。

 地下室へ通じる道には門兵を配置し、勝手に他の者は降りて来ない事。

 青年には牢屋の鉄格子の鍵を渡し出てきたくなったら、いつでも出てきてもいい事。

 を条件に出し、青年は少し考えたのちに頷いたのであった。


 気絶したアード、そして剣が刺さったままのルークを運び、セルビアの命令でこの地域は立ち入り禁止令が発令されたのである。




 アーツハンターギルドの地下室へとルークは連れて行かれる。

「みんな出て言って下さい」

 青年はそう言い、ルークと二人っきりの状態になったのである。




 ◆◇◆◇◆



 剣で刺された俺は死んだと思っていた。

 だが、生きていた。

 意識ははっきりとする事はなくぼんやりとしている感じだった。

 次第に意識ははっきりし始める。

 周りは薄暗く所々に灯りが置いてあり、レンガ作りの部屋に目の前には鉄格子がはめられていた。


 身体を動かそうと試みたのだが、両手両足は鎖で縛られ大の字になっており 剣は突き刺さったままであった。


「!!!!」

「よう〜気がついたか? ルーク・ゼナガイア、『戒めの剣』が刺さっている気分はどうだ?」


 部屋の中に青年が一人座っていた。


「戒めの剣?」

「………」

「お前は、あの時なにをやった?」

 青年は座ったまま俺に聞いてきた。

「あの時………?」


 アルディスに北の町外れの小屋でアーツバスターと戦闘しているから、回復にいくぞと無理矢理連れていかれて………

 そして、【白のアーツ】で負傷者の人達を回復していたけど、途中で【黒のアーツ】が発動して…………

 ………徐々に記憶が戻っていく………


 辺り一面大地のみにした事を思い出していく。


 “そうだ、俺は【黒のアーツ】で全てを消し去ってしまった”


「あっあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 俺の叫び声に反応したのか、『戒めの剣』はズブズブッと身体に突き刺さってくる。

「ぐはっ!!!」


「その剣は『戒めの剣』と言ってな。突き刺す事は出来るが、俺には抜く事は出来ない。そして『戒めの剣』が柄まで突き刺さった時お前は死ぬ……せいぜい苦しみながら死んでいけ………」




 ◆◇◆◇◆


 アーツハンターギルドは、平常通りに動いていた。

 しかし、執務室にいるセルビアは頭をかかえていた。

 これからのルークのをどうするか、監禁? 拘束? それとも…………


 更に、地下室にいる青年……

 無理矢理、取り押さえる事は出来たのではないか?

 今地下牢にいるという判断を出した、セルビアの判断ミスではないのでは?

 という批判の声も上がっていた。


 早急に結論を出さなければならなかった。

 しかし、支部長セルビアと言う立場からはもう手には負えない程の大きな事件になっていたのも事実。

 どうする事も出来なかった。

 セルビアは気が進まなかったが、緊急の要件としてアーツハンター協会の幹部に書類を書き、幹部に直接この状況を確認してもらい、結論を出して欲しい事を要請したのであった。




 コンコン……



 書類を作成し終えた時、誰かがドアを叩いていた。

 ドアの向こうにはアードが立っていたのである。

 セルビアはアードを招き入れ、椅子に座ってもらう事にした。

 アードは何か言いたそうな雰囲気だったが、何も話さずただ黙ってセルビアの方から話すのを待っていた。


「ルークちゃんの件なんですけど………アーツハンター協会に詳細を書いてここに来るように要請しました……緊急の要件なので二、三日で協会の幹部が来ると思いますわ…………」

「そうか………すまなかったな」


 暫く沈黙が続きアードは話し出始める。

「……セルビア、さっきはその…………興奮して悪かった………」

 アードはセルビアの返事を待たずに、それだけ言って執務室から出て行った。




 ◆◇◆◇◆



【鎖のアーツ】を使う目の前にいる青年は、セイント・イーザスと名乗り俺に『戒めの剣』の説明を頼んでもいないのに、淡々としてくれた。

 どうやら俺が死ぬのを待っているらしい。



【黒と白のアーツ】を限界以上に使い切った俺は、時折意識がなくなる事が多い。

 多分休息という名の睡眠が、必要なんだ思う。

 しかし、セイントはそんな俺に休む暇を与えず常に話しかけてきていた。

 そして、俺が罪の意識に苛まれると『戒めの剣』は、深く突き刺さって来ている。


 突き刺さるたびに、激痛が走る。

「ぐっ!!」


 俺が苦しんでいる姿を見ながら、セイントはほくそ笑んでいた。

「お前、そのままだと明日の朝日は拝めないな………」



 コツンコツン………



 階段を降りる音がした。

 見知らぬ男は鉄格子の前で止まり、セイントと話しを始めた。

「アードさんが? ……………帰らせて下さい」

「わかった」


 “アードに一目会いたい!”


 と声に出したかった。

 しかし疲れ切っているのか、何も言えなかった。


「あっアードさんに伝えて下さい。明日には、『戒めの剣』は発動しルーク・ゼナガイアは死にますと」

 男は黙ったまま頷き階段を登りいなくなってしまったのである。



 そもそもセイントとは始めて会ったのだか、その目は俺への激しい憎しみで満ちていた。


 “身に覚えは全くない………”




 ◆◇◆◇◆



 アードはルークに会うべく地下室に赴き、牢屋番をしている男にその旨を伝えたのである。

 男は少し待てと言い、地下室へ降りて行った。


 牢屋番の男は暫くすると地下室から戻り、セイントはルークに会わせるつもりはない。と告げられアードは牢屋番に懇願していた。

 しかし、頑なに拒否されそれは受け入れてもらえる事はなかった。

「あっセイントからの伝言です。『明日には、『戒めの剣』は発動しルーク・ゼナガイアは死にます』との事です」

「なっ!!!!」

「アード様、ご自身も危ない立場だと言う事をお忘れないように、今日の所はどうかお引き取り下さい」

「今日の所はだと? 明日にはルークが死んでしまうんだろう!! 今、会わずしていつ会えと!!!!」

 アードは怒鳴った、しかし男は黙ったままだった。

「お引き取り下さい。アード様。」

「くっ!!!!」


 アードは睨みつけるかのように地下室を後にしたのであった。



「なんとかしなければ……このままでは……」

 アードはなんとかして、ルークを助けてやりたかった。

 セルビアもルークの為に、支部長としての立場が危なくなるのをわかっているのに頑張ってくれている。

 だが、セルビア自身が対応できない程までに発展している。と言う事もアードにもわかっていた。

 そしてあの時、無理矢理止めてくれた事にもアードはセルビアに感謝をしていた。


 しかし、ルークに何もしてあげられないという自分の力のなさ。

 立場のなさにどうしょうもない怒りが込み上げてきていた。

「ルーク…………」

 何か手はないかとずっと考えてはいたが思いつかず、いつの間にか夜は更けていった。


 気がつけば街の入口まで歩いていた。

「くそっいつの間にここに…………」

 アードは振り返り街の方へと歩き出した。



「アード・フォン・ルフか?」


 アードは呼び止められた。

 街入口の街灯に照らされ、目の前にいたのは、マント姿に立派な立ちこなしをしている女性が立っていた。

 アーツハンター協会の幹部の一人、戦闘隊、総司令官マーシャル・フォン・フライムだった。

 アードとは、お互いが認め合う程の仲の良い戦友だった。


「マッマーシャル? どうしてここに?」

「あぁ、隣町でアーツバスターと中規模な戦闘があってね。今、鎮圧した所なの。それで最近セルビアに会っていないから、ちょっとセルビアに会いにきたんだけど……?」

「そうか………」


 マーシャルは、セルビアが書いた要請書で派遣された訳ではなかった。

 二、三日はかかると言っていたし、いくらなんでも早すぎるだろうと思いガッカリしてしまった。

「なにかあったの?」

「………」


 アードとは長い付き合いだがその様子は、今までみた事もない落胆ぶりにマーシャルはなにかあった。

 とすぐに感じ取ることが出来ていた。

「話ししてみて」

 アードはルークの事をマーシャルに全てを話しのであった。




「…………確かに私の一存で判断出来る問題ではないわね……」

「そうか……」

「ん〜まず、セルビアと合流しましょ」

「マーシャル時間がないんだ! ルークに刺さっている『戒めの剣』はもうすぐ発動してしまう! そうなれば…………」

「わかってるわ、落ち着いて、アード。 最悪の事態にはならないように私も尽力を尽くすわ」

「すまない………マーシャル………」

 アードとマーシャルは、セルビアに会うべくアーツハンターギルドへと向かったのであった。



 執務室のドアをノックするが返事はなく、アードはドアを開けるとそこにはぐったりと倒れているセルビアの姿であった。

「セルビア!!!」

 マーシャルはセルビアを抱きかかえ、ソファに寝かせそして【月光のアーツ】を発動。

【月光のアーツ】は攻撃系が多いが、気休め程度の回復ができるアーツである。

「んっんっ…………」

「大丈夫?」

「マッマーシャル!? どうしてここに??」

「無理しすぎよ。セルビア……」

 セルビアは、ソファから起き上がり、マーシャルは話を続けた。

「アードから、詳しい話は聞いたわ。セルビア、今すぐ地下室にいけるかしら?」

「もちろん!」

 そう言ったセルビアは、立ち上がり三人で地下室へと向かう事にしたのである。




 ◆◇◆◇◆



 牢屋の隙間から朝日が見えてきた。

 俺は、まだかろうじて生きていた。

 しかし、『戒めの剣』は柄の近くまで突き刺さっていた。


「はぁはぁ………」

『戒めの剣』がドンドン突き刺さってくる為、全身が燃えるように熱く頭はぼぉ〜とし物が霞んで見えるようになってきた。

 痛みと共に俺の意識は次第に途切れ途切れになり、二度と目覚めない眠りつきそうになっていた。



「中々しぶといんだな、ルーク・ゼナガイア」

「…ハァハァ………」

「後、一回『戒めの剣』が深く突き刺されば、柄まで行き『戒めの剣』は発動。お前の死に目が見れるというのに………その最後の一回は以外と長いんだな。」

「ハァハァ………くっ……なぜそんなに……僕を殺したいのですか?」

 最後の力を振り絞るかのような小さな声での質問だった。


 セイントは立ち上がり俺に近づいてくる。

 鬼の形相をしながら……

「お前は、俺の尊敬している人を俺の目の前で、消し去ったんだ!!!」

「はぁはぁ……?」

「絶対許さない!!!!」

「ひょっとして…………その人って…………」



「アルディス・ミリシアだ!!!」

「!!」



 アルディスの名前を聞いた瞬間『戒めの剣』はズブッと柄まで完全に突き刺さった。

「きたっ!!!!」


「………ぐはっ」



 柄まで突き刺さった『戒めの剣』は一筋の光となり俺の身体の中に消えて行く。

 そして俺の意思とは裏腹に勝手に 【黒のアーツ】が発動していく。

「………」


 声もでない程の激しい黒の波動は、俺の身体を瞬く間に取り巻いていく。

【鎖のアーツ】で縛られていた、鎖も粉々に散り去り。


「きた!! きたぁぁ〜!!!」


 元々自らが持っているアーツは、自分自身を傷つける事は出来ない。

 だから自らがのアーツで命を断つ。という行為は出来ないようになっている。

 更に回復に至っては、他者を回復する事は出来るが自分自身を回復する事は出来ないのである。


 しかし例外もある。

 それが『戒めの剣』である。

 剣の柄が最後にはまで突き刺さった時、それは『戒めの剣』に寄って強制的に発動し自らの【アーツ】に寄って死ぬという、処刑方法である。



『戒めの剣』に寄って強制的に発動された【黒のアーツ】は、俺を消し去ろうとしていた。


「消えてしまえ! ルーク・ゼナガイア!!!」


 ドカンッ!!!!


 突然、牢屋の鉄格子は空きセイントはアードに殴り飛ばされ壁に激突していくのであった。

「つぅ!! なぜここに!?」


 そこには、セルビア、マーシャル、アードの三人が立っておりルークを見つめていた。


「おぃ、ルーク!! しっかりしろ!!」

【黒のアーツ】に飲み込まれ黒の波動で消え去りそうになっている俺に、アードの声は聞こえるはずもなかった。


 マーシャルはアードを制止し現状把握をしていた。

「アード下がっていなさい。 こうなってしまったら、後はもう【黒と白のアーツ】の持ち主の運次第よ」


 マーシャルは自らが持っている『戒めの剣』を抜き俺に近づいてくる。

 溢れ漏れている【黒のアーツ】の波動は、近づいてくるマーシャルを傷つけていく。

 しかし、そんなのはお構いなしにマーシャルは近づいてくるのであった。

 マーシャルは自ら持っている『戒めの剣』を構え容赦なく俺の身体に刺してきた。


「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 俺というか【黒のアーツ】は叫び声を上げ、マーシャルの身体を吹っ飛ばし壁に激突させた。

 アードはマーシャルの側に駆け寄り身体を起こし上げる。

「大丈夫か?」

「くっ……!! くはぁ〜この衝撃久々に味わったかも………」

「やれやれ…」

「アード、どんな結果になっても私を恨まないでね………」

「あぁ、わかった。ルークの運に賭けるさ!」


 アードに支えられながら、マーシャルは右手を上げ……

「『戒めの剣』我に従い発動せよ!」


 マーシャルの声に従うように『戒めの剣』は俺の身体の中に消えて行く。

「【黒のアーツ】発動停止!!【白のアーツ】発動、相殺!!」



 マーシャルの言葉通りに【白のアーツ】が強制的に発動。

 光は地下室全体を埋め尽くしていく。

 そして、俺を覆っていた【黒のアーツ】の波動も消え去り、傷ついたマーシャルを癒していく。



 光は次第になくなり、二本床に落ちている『戒めの剣』

 そして、俺は消えずにその場で倒れていた。






改稿したらページ数が多くなってしまいました。


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