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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ー火の街ロールライトー
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第六十四話 ガーゼベルトの秘密

「あの、すみません……あなた達はアーツハンターの方ですか?」

 宿屋に向かっていると女の人が、俺たちを呼び止めたのであった。


「えぇ、そうですけど。どうかしました?」

 振り返りながら、そう答えるセルビアに女の人は何故か、言いずらそうに少しオドオドとしていた。

「本当はアーツハンター協会に行って相談をすればいいのですが、一刻も早く解決して欲しくって……」

(わたくし)でよければ、気にせず話していただいて構いませんわよ」

「ありがとうございます」


「実はですね……家の裏路地に不思議な物があるのです……」

「???」

 女の人の言っている不思議な物……

「不思議な物とは……? 随分抽象的ですわ」

「すみません……」

「もう少し具体的に説明してくださるかしら?」

「えっとですね……」


 セルビアに言われるがまま女の人は説明してくれた。

 だが、やはりピンとくるものはなかったのである。

 説明してもらうより直接見た方が早いと決断したセルビアは、見に行くと話をつけていた。

 そして、セルビアは俺にここで待てと言ってきたのだ。

 流石にそれは嫌だと拒否すると、セルビアの側を離れないと言う事であっさりと了承してくれた。




「ここです……」

 女の人が案内してくれたのは、住宅街の中心地の角地の小路だった。

 滅多に人は通らない場所に、俺の見覚えがある物があった……


 七芒星の形をし、その七芒星の中に更に三角形の魔法陣と四角形の魔法陣が、グルグルと時計周りに動きぼんやりと青白く光り輝くサークル……


 “あれは、どう見てもゲートだろ!?”


「なんですか? これは………」

 どうやら、セルビアは初めて見るものらしい……

「わかりません……一ヶ月前にはなかったのですが。

 今日台所に立っていると家の中から光が見えたので確認しに来てみると、これがあったのです……」

「……」

「アーツハンターさんにもわからないものなのですか?」

「初めて見るものですね……」


「セルビアさん……マーシャルさんを今すぐここに、呼び出す事って出来ますか?」

「緊急度によりますけど……? ルークちゃんはこれがなんなのか知っているの?」

 俺は冷静に、そして取り乱さないように自分の気持ちを押さえるのに精一杯だった。


 もし、このゲートを通ってアーツバスターたちがこの街に侵入を果たし、大暴れし始めたら……

 そう考えると嫌な事しか連想出来なかった。

 でも気のせいという可能性もある。

 だから、俺はこのゲートの事を知っているマーシャルに来て欲しかった。

「はい……そして、マーシャルさんもこれ(ゲート)について知っている筈です……」

「わかりましたわ」

 セルビアは俺の話を信じてくれた。

 すぐさま、アーツハンター協会に戻り緊急事態という事でマーシャルを連れてきてくれたのだ。




「あらあら、誰かと思ったらルーク坊ゃじゃない?」

 セルビアと俺が一緒にいる事を知っていながら、マーシャルはワザとらしく言ってきた。

「先ほどは、どーも」

 軽く頭を下げる。

 今は、それどころではないのだ……


「それで、緊急事態と言う事でしたけど、どうかしまして?」

「マーシャルさんも、これに見覚えがありますよね?」

「!!」


 マーシャルにも見えるように俺はゲートを見せる。

「なっ!? これはゲートではありませんか!?」

「ゲート??」

「ですよね……」

「ゲートってなによぉ!?」


「これってかなり、やばいですよね?」

「……」

「マーシャルさん??」

「ねぇ! 二人で楽しくお話ししないで、(わたくし)にも教えてくださるかしら?」

 セルビアは俺とマーシャルに、少し髪の色が変わりそうになりながら聞いてきたのだった。


 “セルビアさん、もしかして切れやすくなった!?”


「ちょセルビアさん落ち着いて下さい。ちゃんと説明しますから……」

「でもその前に、あなたが報告してくれたのかしら?」

「あっはい、そうです」

 マーシャルは女の人に、この事は他言無用な事。ここには近づかない事。などを説明していた。

 はい、はい……と女の人は何度も頷いている。


「それでは最後に……ここには、アーツハンターを派遣いたします。身の安全は保証しますわ。

 ですので先程の約束事、守ってくださいね」

「はい、わかりました」

 女の人は頭を下げ、家の中へと入って行くのであった。



「ふぅさてと……ルーク坊ゃたちの今日これからの予定は?」

「宿屋に行こうと話していましたけど……?」

「予約しているの?」

「いえ、していませんよ」

「では、(わたくし)の家に来なさい。セルビア、(わたくし)の家の場所は覚えています?」

「えぇ。覚えていますわ」

「じゃ先に言ってて、すぐに行きますわ」

「ちょっと、マーシャル! 話は!??」

「後で話すわ〜」

 マーシャルは、そう言いながら何処かへ行ってしまうのであった。

「もぉ〜」

 少し頬を膨らしながらも、セルビアと俺はマーシャルの家に向かう事にしたのである。




 ◆◇◆◇◆



 マーシャルの家は、幹部合同宿舎にあった。

 宿舎と言うから、共同住宅なのかな? とも思ったが、幹部合同宿舎と言う区域があって、一軒一軒セルビアの家より立派な豪邸が建ち並んでいた。

 その中でもマーシャルの家は一番小さいらしい……

 三階建ての家を見上げながら、どこが?? と言いそうになった。

 コンコンとセルビアが玄関ドアをノックすると、はーいと男の人の声が聞こえてきた。


 ドアが開かれるとドアノブを握りしめている、ヴァルディアがいたのであった。

「ルーク……?」

「ヴァルディア!?」

「あらあら、お久しぶりね。ヴァルディアちゃん」


 “ヴァルディアちゃん??”


 プッと笑いそうになってしまった。


「お久しぶりです、セルビア様」

「お元気そうでなによりだわ」

「俺が今までこうしていられるのは、セルビア様のおかげです」

「あらあら、ルークちゃんより礼儀正しいわ。この子」

「ぬっ!?」

「セルビア様は、本日はマーシャル様に御用でしょうか?」

「えぇ、街でマーシャルに会ったら、家で待っていろと言われましたの」

「なるほど、ではこちらへどうぞ……」

「ありがとう、ヴァルディアちゃん」



 ヴァルディアに案内されるがまま、俺は応接室の椅子に座っていた。

 立派過ぎて落ち着かなかった。

「ルークちゃん、少し落ち着きましょうね?」

「いや、なんか立派過ぎて……」

 クスクスとセルビアの笑い声が聞こえてくる。


 応接室に案内されて三十分程経った頃だろうか? マーシャルが帰宅したのは……

「フゥ……お待たせしたしましたわ」

 マーシャルは、ヴァルディアと共に応接室に入ってきたのである。


「マーシャル早速教えてくださるかしら? あそこにあったアレ(・・)は何なのですか?」

「あれは、ゲートと呼ばれるものです」

「ゲート?」

「簡単に説明すると、例えばあのゲートを使うとガーゼベルトとロールライトを一瞬で行き来出来る物と言えば理解出来るかしら?」

「りっ理解は出来ますが、そんな事が可能なのですか?」

「ええっ、現にあのゲートはアーツバスターの本拠地である、ガルガゴス帝国と繋がっていたわ」

「なっ!?」

 セルビアの驚きよりも先に俺が反応してしまった……

「ゲートの中に入ったのですか??」

(わたくし)は入ってはいませんわ。

 ですが、バカで無鉄砲などっかの誰かさんと、同じようなバカが、(わたくし)の部下にもいましてね」

「……」


 “俺のことかよ……”


「確かに未知の場所に行くのは、勇敢というより無鉄砲なバカですわね」


 グサリッ!!

 セルビアの言葉に見えない剣が、俺の心を突き刺してくる。


「俺でもそんなバカな事はしませんので、ご安心ください。マーシャル様」


 “うぅ……ヴァルディアまで……”


「……して、そのバカで無鉄砲などっかの誰かさんって誰の事なんですか?」

(わたくし)たちの目の前にいますわ」

「ルークちゃん!?」

お前(ルーク)か!?」

 セルビアとヴァルディアは同時に俺の方を向いてきた。

 そんなやり取りを、マーシャルはニヤニヤと悪い顔をしながら見ていた。

 いじめる気満載だ。


「そっそれよりも、あのゲート今後どうするんですか?」

「あら、話をそらすのね?」

「うっ……」


「まぁいいわ。あのゲートは実はあそこだけではありませんのよね……」

「えっ?」

「実はここだけの話なのですが、ガーゼベルトの街中に既に五ヶ所ゲートが見つかっています」

「つまり街中にアーツバスターがウヨウヨといる…… そう言う事ですか?」

「そこまでは、まだ断定していないわ」

「断定していないのですか?」


「仮にアーツバスターたちが、侵入していたとしても被害が出ていないんだ」

「えっヴァルディア、それってどういう事?」

「ガーゼベルトは王都というだけあって、戦闘行為そのものが封印されている」

「???」

 不思議そうな顔をしている俺に、ヴァルディアは言葉にはださなかったが……


 この無能めっ!


 そんな顔をしていた。

「要するにガーゼベルトの街中では、アーツが発動出来ないんだ」

「へぇ〜でもさっ、アーツハンター協会はアーツ発動していたよ。なんでだ?」

「なんでって……俺に聞かれても……」


「ガーゼベルトの地下奥深くには、アーツを発動しない宝珠が祀られていますわ」

「セルビアさん……?」


 ヴィンランド領建国時……

 つまりセルビアのご先祖様は、何もない土地に一から街を作り上げていた。

 完成した街は珍しい星形をしていた事もあり、あっという間に住民は増え続けていた。

 住民が増えれば、アーツ同士でくだらない争いも起こりやすくなる。

 静止しても中々無くならなかった争いにご先祖様は心底心を痛めていた。

 そして、考え出したのが……

 地下深くにアーツを発動させない宝珠の設置。

 それと同時に困った人たちを助けると言う名目でアーツハンター協会を設立したのであった。

 アーツハンターになった者は、協会内部でのみアーツを発動できる。


「と、言い伝えられていますわ」

「初耳ですわ……」

「あら? そうなの? 王族にのみ伝えられている事なのかしら?」

「……」

「てへっ♪ 秘密にしておいてね♩」


 “てへっ♪ じゃないでしょ!!”


「まぁ取り敢えずですが、幹部たちの出している結論と致しましては……」

 マーシャルたち幹部が出した結論は、今の所宝珠のお陰でアーツバスターたちはガーゼベルトにいるが何もできない。

 アーツバスターがいる事事態問題ではあるも、彼らの方から何らかのアクションを起こさない限り見つけ出す事は不可能に近いようだ。

 後は、引き続きゲートの監視と、アーツバスターらしき者を見つけた場合には対処するという結論になっているらしい。


「セルビアさん」

「んっ? なぁに、ルークちゃん?」

「アーツバスターの狙いが、王の命って事はないですよね?」

「仮にそうだとしても、彼らが城に侵入する事は不可能かと思いますわ」

「ですね、城は臣下以外入る事を禁じられているし、協会会長のローラですら入った事はないのですから……」

「なるほど……」


 “外から入れるのは、セルビアさんだけと……”


「まぁ、ルーク坊ゃが心配しても始まらない事ね」

「ぬぐっ!!」

「アーツバスターを捉えた時に、政治専門館長スカンディスが問い詰めるだけよ。忘れなさい」

「……はい、わかりました」


 幾つか腑に落ちない所はあったが、マーシャルが忘れろというのだ。

 気にしないで忘れ去ろうではないか。




 次の日……

 マーシャルは馬車を用意してくれた。

「ルーク、またな」

「ヴァルディアも元気で」

「あぁ」

 セルビアはヴァルディアに、ロールライトに戻るかどうか聞いていた。

 しかし、ヴァルディアはこのままマーシャルの元にいると言っていた。

 やはりロールライトに戻る気はないらしい。


 セルビアとマーシャルは、夜遅くまでなにやら話し込んでいた。

 それでも、二人とも寝不足なそぶりを一切見せない。

 そこらへんは流石だなと、感心してしまうぐらいだ。

 俺もヴァルディアとあの後の『風の街サイクロン』の事について話を聞いていたから、結構寝不足気味だ。

 リーサたち『ウィッシュ』の皆は俺が旅立った後、すぐ剣の聖地戻ったらしい。

 そして、今『風の街サイクロン』は、あの時のまま変わらぬ生活を送っているらしい。


「マーシャル、ありがとう。助かりましたわ」

「いえいえ、どういたしまして」


「ルーク坊ゃも元気で」

「あの、マーシャルさん。ずっと言おうと思ったんですが、坊ゃは卒業したのではないんですか?」

「ふっ、そう思うならもう少し賢くなりなさい」

「ぬぬっ!」


 マーシャルは、俺に近づき耳元で話しかけてくる。

「魔法の言葉は効果ありまして?」

「!!!」

 顔を真っ赤にしながら、マーシャルを上目使いで睨みつける。

「ぷっはははははは」

 とマーシャルの笑い声が聞こえ、セルビアの肩にポンッと手を置いていた。

「良かったですわね! セルビア!!」

「???」

 セルビアには何がなんだかわからなかった。

「なにがですの? マーシャル?」

「馬車の中でルーク坊ゃに聞いてくださいまし……」


 “また、余計な事を……”


 ロールライトに着くまでの馬車の中で、セルビアが何度もその事をしつこく問い詰めてきたのは言うまでもなかった……




 ◆◇◆◇◆



 ここは、ガーゼベルトの貧民街……通称スラム街。


 その一角に誰も使っていない空き家の屋敷を、先遣隊であるアーツバスターたちは買い取っていた。

 先遣隊は『風の街サイクロン』がアーツハンターに奪還される前、数名各町へと散っていた。

 そして、最初は村や町などでゲートを開き怪しまれないよう、アーツバスターたちを次々と増やして行ったのである。

 そこから更に、主要都市と思われる場所でゲートを開き、更に戦力を強化。

 ついに、ガーゼベルトに侵入を果たしたのであった。

 屋敷の応接間には、ドランゴとスフェラ、ミステリア。

 他に百人程のアーツバスターたちが詰め寄っている。

 スラム街は、ほぼアーツバスターの傘下に堕ちたと言っても過言ではなかった。

 それをわかっていないガーゼベルトの住民たちを、ドランゴは心底馬鹿な奴らだ。と思っていた。


「そうか……やはりユンムは失敗したか」

「えぇ、蹴落としたい人間のがいるからと言っていたので、弱味を教えたのですが……」

「ふむ、まぁいい。後で始末しとけ」

「はっ」


「さて、お前たちそろそろ第二段階、始めるぞ」

「了解」


「所で、ドランゴ?」

「んっ、なんだ?」

「あの子、昼間見かけたけど、放って置いていいの?」

「あぁ……今はいい」

「今は?」

「俺の計画の中では最終段階完了時に、あいつは自らの意志で俺の仲間になる……」

「期待しているわ。ドランゴ」

「あぁ総帥の為にもな……」


 アーツバスターたちが作戦遂行の為に散って行く中、ドランゴはヴィンランド領全域の地図を見ながら薄ら笑いを浮かべていた。






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