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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ー火の街ロールライトー
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第六十一話 久しぶりの我が家

 家は、出て行った時のまま……

 何一つ変わっちゃいなかった。

「そんな所で呆けていないでルークちゃん、まずは風呂に入って綺麗さっぱりしてね」


 言われるがまま、俺は風呂に入る……

 いつぶりの風呂だろう。

 背中の烙印があってから風呂なんて、殆ど入った記憶がないな。

 湯船に浸かりながら、遠くの方でセルビアの張り切っている声が聞こえてくる。


「それは、あそこに置いて下さい」

「スープは、ルークちゃんが来てからお願いね」

 セルビアの足音とメイドたちの足音が交互に響き渡ってくる。


 “帰ってきて良かった……”


 ウトウト………

 久しぶりの風呂は危険すぎた。

 思わず、寝入ってしまう所だった。


 “さっさと上がろう……”


「ルークちゃん、そろそろ上がらないとのぼせますわよ!?」

 そう言いながらセルビアは脱衣場のドアを開けてくる。


「!!!」


 多分同時だろう……

 俺もセルビアも顔を一気に真っ赤に染めている。

 セルビアは何も言わないまま、巻き戻ししているかのように脱衣場から出て行くのであった……


 “みっ見られた……思いっきり……”


 ドキンドキン……


 “おっ落ち着け………俺……”


「ふぅ〜」

 一息付きながら気分を変えよう。

 取り敢えず湯冷めしないうちに服を着るか……


「ルークちゃん……」

「はっはい!!」

 ドア越しからセルビアの声が聞こえてきた。

「その胸にある大きな傷……どうしたの?」

「これは……」


 右肩から左腰にかけて一本の傷痕が禍々しく残っている。

 セルビアが言っているのは、この傷痕の事だろう。

「アーツバスターのドランゴという男にやられました」

「そう……その名前……覚えておくわ」


 “殺気……!?”


 ドア越しだと言うのに、セルビアから放たれる殺気は物凄く恐ろしかった。


 “いっいかん!! 怒りを沈めないと!!”


「セッセルビアさん、今度から入る時はちゃんとノックして下さいね」

「あら、親子なんですもの……恥ずかしがる事はなくてよ?」

「……」


 口では勝てないとわかった俺は、ドアから顔だけだしセルビアを見る。

「ルークちゃん、(わたくし)に文句言う前にちゃんと服を着なさい」

「……」


「セルビアさんのエッチっ!!」


 そして、勢い良くドアを閉める。


「はぁはぁ……」


 “いっ言っちゃった!! 怒ったかな?”


「わっ(わたくし)はルークちゃんのお母さんよ!! 息子の成長を見守る義務が……!!」


 コホンッ

「いつまで戯れていらしゃるのですか? セルビア様」

 咳払いをしながら執事が現れたのだ。


 “ナイス! タイミングです!!”


「親子のスキンシップよ!」

「……ふむ、苦しい言い訳ですな」

「んぐっ……」


「セルビア様、食事の用意が出来たので最終確認をして頂きたいと、メイドたちが探しておりましたぞ」

「はっそうだったわ!」


 パタパタ……

 とセルビアの走り去る音、執事も足音を音立てずにセルビアが向かった方へと歩いて行くのであった。



「つっ……疲れた……取り敢えず服、着るか……」


 俺の服は鎖帷子を除いて全て、回収されていた。

 まぁ、ボロボロだったし捨てられたと思う。

 鎖帷子を着て、セルビアが用意してくれたと思われる服を着る。

「……」

 金色の竜の刺繍が施されている白の服に、黒のズボン。

 そして、真っ黒なマント。

 真ん中には、これまた金色の流れ星が刺繍で刻まれていた。


 “うわぁ……ド派手!!”


 他にも着る服もなく、渋々服を着る事にした。

 サイズはぴったりで大きくもなく、小さくもなかった。

 しばらく会っていなかったはずなのに、セルビア怖し!


 風呂から上がり、食堂に向かう。

 そこには食べきれない程の量が用意されていた。


「……」

「あっ! ルークちゃんその服気に入ってくれまして?」

「はっはい……ありがとうございます」


 “下手に刺激しないでおこう……また暴走されても困るし……”


「お腹空いたでしょ? ささっ食べましょう」

 セルビアは凄く嬉しそうだった。


 本来の目的である、セルビアに謝りたい……

 言うタイミングを思いっきり逃した気もするが……

 取り敢えず今は、セルビアが折角俺の為に用意してくれたんだ。

 食事を楽しもう。


 食事の間中、セルビアはずっと俺の話を聞いてくれた。

 ロールライトを出てから『水の街ヴァル』、『土の街グランディ』、『風の街サイクロン』……

 全て俺は語った。

 語り尽くせない程あったが、そこはある程度掻い摘んで……

 セルビアはその話を相づち打ちながら、ずっと聞いていてくれた。




 お腹も膨れ、もう食べきれない程食べ尽くし俺とセルビアは、暖炉のある部屋へと移動する。

 椅子に座りながら今度はセルビアの話を聞く事にした。


 先程、監視していた男が言っていた約束の日……について。



「あの……セルビアさん、約束の日って何ですか?」

「ルークちゃんが『水の街ヴァル』にいた時、(わたくし)はルドベキアちゃんに手紙を送りましたわ。

『ルークが十五歳になる前に必ず、ロールライトに帰還し私と共にガーゼベルトに赴かなければならない』

 と」

「確かにその話は聞きました。

 でも、何故俺はガーゼベルトに行かないとならないのですか?」

「ルークちゃんの、その背中ですわ」

「!!」

「ルークちゃんの背中……

 警備兵連隊長 ユンム・ラブウムという者は何故か存じていましたわ」

「……」

「あの時は、ルークちゃんの背中にはないです。

 と言って誤魔化したのですが……」


「直接見ないと納得しない……だから、ガーゼベルトに来い。

 と、そう言う事ですか?」

「……えぇ、その通りですわ」

(わたくし)は、ルークちゃんが帰って来るまでの間……

 なんとかしてバレない方法を考えてきましたわ」


「でも、(わたくし)は何も……」

「……」

「ガーゼベルトに行き、ルークちゃんが奴隷とわかれば、(わたくし)はその場で処刑されます」

「なっなぜ!?」

「アーツハンターには、規約というものがあるのよ」


 一、我々の質問に対して、嘘、偽り、誤魔化しや曖昧な返答を禁じ真実のみ伝えること

 一、我々の会話を遮らず聞かれた事のみ、答えること

 一、この場で過半数を超えて決定した事は、決して覆る事はないこと


(わたくし)はこの内の一つ既に、破っているわ」

「……」

「でも、まあ……」


「今日、ルークちゃんに会い、逞しく成長した姿をみれたのですもの……

 もう(わたくし)に思い残す事は何も……」

「何、言っているんですか? セルビアさん!」

「ルークちゃん?」

「折角帰ってきたのに、セルビアさんがいなくなるなんて、そんなのダメに決まっています」

「でも、(わたくし)は何も考えつきませんでしたわ……」

「セルビアさん、協力して下さい」

「??」



 俺は袋の中からゴソゴソと『土の街グランディ』で出会い、なんでも屋のおばちゃんに作ってもらった、二本の金属の棒を取り出す。

「ルークちゃん、なにこれ?」

「丸い金属板の裏を見て下さい」


 セルビアは、俺に言われるがまま裏を見てくれた。

「???」

 ますます、わかっていない様子だったけど……

「一つは、何もないタダの丸い金属板ね。 もう一つは……白黒の勾玉を組み合わせた物かしら?」

「はい、そうです」

「??? ルークちゃん、(わたくし)にはさっぱりわからないわ」

「【焰のアーツ】で、それを熱して下さい」

「それは構わないけど……その後どうするの?」

「高温になったその金属板で、俺の背中を焼いて下さい」

「!!!」

「お願いします」

 驚くセルビアを前に俺は深々と頭を下げ、セルビアにお願いする。


「いっいやよ……」

「……」

「なっなんで、息子を自らの手で傷つけないと行けないのよ…… それなら、(わたくし)は………」

「セルビアさん!!」


 セルビアは受け入れようとしていた。

 だから、俺はその言葉を制止したんだ。

 ……だって、折角会えたのに今度はセルビアがいなくなるなんて、そんなの絶対ダメだ。


「俺は……今までセルビアさんの想い何一つ理解していなかったです。

 ごめんなさい……」


「今からでも遅くなければ、セルビアさんの想い……俺は受け止めたいです」

「でっでも……」

「これがある限り、俺は何も出来ません……」

「……痛いのよ? 熱いのよ……! そんな辛い思いを……」


 思わず苦笑いしそうになった。


 “何処まで心配症なんだろう……”


 そう思いながら、苦笑いを必死に堪える。


「大丈夫です」

 俺はセルビアの手を掴みながら、目を逸らさずにいる。


「ルークちゃん……」


 五分ぐらい経った頃だろうか?

 その間、セルビアも俺も目を逸らさずにいた。

 先に目を逸らしたのは、セルビアだった。


「はぁ……負けましたわ。

 ルークちゃんの言う通りにやりましょう」

 かなり気は引けますが……

 と、最後にセルビアはそう付け加えていた。



  早速俺は上半身裸になり、背中をセルビアに見せるようにうつ伏せに寝転がる。

「っ!!」

 セルビアは何も言わなかった……

 言わなかったが、俺の背中にある烙印をそっと触っていた。


「ふぅ〜〜〜」

 深いため息をつき、気分を切り替えていた。


「ルークちゃん、要するにこの二本の棒を使うという事でいいのね?」

「はい、先に何もないタダの丸い金属板で、奴隷の焼印を消し去ります。

 そして、次に白黒の勾玉を焼き付けて下さい」

「はぁ……」


 “ごめんなさい……セルビアさん”


 と言いたかった。

 でも、折角セルビアがやる気になってくれているんだ。

 変な事を言って、やる気が削がれてしまっては元もこうもない。

 黙っておこう。


「かなり痛いですが、覚悟はよろしいですね?」

「はい、お願いします」


 セルビアは【焰のアーツ】を発動し、何も刻まれていない丸い金属板を熱して行く……

 徐々に熱く、金属板は次第に真っ赤になり十分に熱せられた。

「行きますわ」


 ジュウウゥゥと背中が焼ける音と共に煙が巻き上がる。

「っあっ!!」

 両手をバタバタさせながら、それでも必死に耐える……

 完全に消し去る為には、すぐに離さない方がいいらしい。

 しばらくの間、セルビアは押し続けていた。

「ぐはぁぁ!」

 だんだんと煙は小さくなっていき、音も聞こえなくなった頃……

 俺の背中から金属板から離れていく。

「つぅ………はぁはぁ………」

 ヒリヒリッと痛みと共に気絶しそうなってしまう……


 “気をしっかりもて……俺!!”


 自分に言い聞かせるように、痛みに耐え続ける。


 しばらくすると痛みが和らいで行く……

 セルビアに事前に話していたように、回復の札を使ってくれたのだ。

「はぁはぁ……」


 まだ痛いが、気絶する程の痛みでは無くなってきた。

「大丈夫? ルークちゃん?」

「……はっ……はい」

 脂汗を流しながらも必死に虚勢を張って見た。

 二回目は、更なる痛みが俺を襲ってくるはずだ。


「もうやめましょう……(わたくし)はやはりこんな姿見たくないわ」

「だッ……ダメです。

 ……はぁはぁ。さっ最後まで……お願いします」

「でも、これ以上の叫び声は外にいる監視人さんにも聞こえてしまいますわ」

「……」


 確かにこんな事をやっているのをバレてしまうと、水の泡になってしまう……

「セルビア……さん。タオルを……」

 セルビアから受け取りタオルを噛みながら、俺は再びセルビアに二回目の焼印をお願いする。

「ルークちゃん……」



 再び背中の焼ける音、煙が巻き上がって行く。

 先程とは比べ物にならない程の激痛が、全身を襲いかかってくる。

「んーーっ!!」

 手を思いっきり握りしめ、声を出さぬよう必死に耐える。

 タオルを噛みしめていなければ、大音量の叫び声を上げていたと思う。


 二回目の焼印が離されていく。

 タオルを外してくれたセルビアは泣きそうな顔をしながら、俺を見下ろしてくれていた。

「はぁはぁ……」

「ルークちゃん、よく耐えましたわ……」

「……」

 余りにも痛すぎて、セルビアが何を言っているのか俺には聞こえてはいなかった。

「綺麗な円形の中に、二つの勾玉がありますわ」


 “よっよかった……”

 気を許したのか、ガクンガクンと俺の身体は大きく全身を震わせていく。

 その後、俺は昏倒した。


 回復の札も使い切り、セルビアは何も出来なかった。

 気を失っている俺をゆっくりと寝室へと運ぶ事しか出来なかったのである。

 うつ伏せに寝かし、セルビアは気絶した俺の頭を優しく撫でてくれている。


 明日の朝には、ガーゼベルトに出発しなければならない。

 この状態で起きあがる事は果たして出来るのだろうか?

 無事、ガーゼベルトに到着したとしても、幹部たちを誤魔化し切れるのか……


 辛い思いをしてまで行った行為が、身を結ぶのか……

 俺もセルビアもまだわからなかった。




 ---------------------------



 コンコン……

 玄関先でドアを叩く音がし、執事はドアを開ける。

 そこには監視している男が立っていた。

「今、叫び声が聞こえたのだが、何かあったのだろうか?」

「……」

「中に入って確認をしたいのだが?」

「なりませぬ」

「なに?」

「大変失礼な事を言いました。お許しください」


「ですが、少し空気をお読み下さい。

 あの二人は久しぶりの再会を果たしたのです」

「っ……あっ……しっ失礼した」


 やはり一回目の焼印の時に叫び声は外まで聞こえていたようだ。

 執事は何をやっているのか実は知らされてはいなかった。

 だが、まぁ男と女の関係もまたいいのでは?

 と勝手に想像を膨らませていた。


 しかし、それと同時に。

「今の叫び声は、ルークおぼちゃまの声でしたな……」

 全く何をやっているのやら……

 と肩をすくめながら、執事は自らの仕事に戻ったのである。






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