表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ー風の街サイクロンー
54/118

第五十三話 解放

「遅かったか?」

 シュトラーフェは、マーシャルに背を向けドランゴと対峙しながら、そう聞いてきたのである。

「いえ、タイミングバッチリよ」

「そうかっ!」


 ドランゴは一人が二人になろうが構わなかった。

 余裕で勝てると思っていたから……

 だから、ドランゴは構わず攻撃をしかけてきたのである。



「ねぇシュトラーフェ」

「なんだ?」

「主に絶対服従の、技ってなんだっけ?」

「大雑把すぎるな。それだけでは数が多すぎて絞れきれない……詳しく話せ」


「ん〜主の為なら自分の身体の心配をしないとか……

 普段の限界以上の力を発揮するとか……

 何も考える事を許されない、空虚な眼差しとか……?

 かしら……」

「ふむ!」

 そんな会話を、マーシャルとシュトラーフェはドランゴの攻撃を避けながら余裕で、話していたのである。

 流石にドランゴも、それにはカチンッときていた。


「それは、あれだな。【誘惑のアーツ】の一つ魅惑の蠱毒だろ?」

 シュトラーフェの回答にマーシャルはやはり……間違いではなかった。

 と結論を出したのである。



 魅惑の蠱毒にかかった者を、元に戻す方法をマーシャルは知らない……

 そして、シュトラーフェもそれ以上なにも言わなかった。

 解除方法は知らないんだろうと、マーシャルは察していた。


 “さてさて、どうしましょ……”



「マーシャル、まずは目の前にいる敵を倒すぞ! いつものあれ、出来るか?」

「えぇ!!」

 シュトラーフェとマーシャルは、アイコンタクトを送る。

 マーシャルは【月光のアーツ】を発動し、満月からマーシャルに向け光が注がれで行く。

 淡い光がマーシャルにおおい尽くされている間に、シュトラーフェは大剣を振りかぶりドランゴに飛びかかって行く……

「月光の輝き!」

 マーシャルの言葉と共に淡い光は、シュトラーフェの持つ大剣へと移っていく……


「うらぁっ!!」

 振り下ろされた大剣は、ドランゴに当たり大地を真っ二つにする程の威力を持っていた。


 月光の輝き……

 月の加護を受け、その月の形に寄って攻撃力が変わっていく技である。

 三日月であれば、0.5倍の力……

 そして、満月だと十倍となるのである。

 しかし、本日は満月ではないので、約五倍程の威力がある。


「………驚いた……」

 シュトラーフェは、剣を再び構えながら呟いていた。

 ドランゴは両腕をクロスさせ、シュトラーフェの攻撃を受け止めていたのである。

 右腕に小さい剣筋を残して……

「殆ど無傷とは……」

 マーシャルも驚きを隠せない様子だった……



「フッ……俺も驚いたぜ。

 竜の闘気を破り俺の身体を傷をつける者がいるとはな……」

「!!」


 竜の闘気と……

 ドランゴが話した瞬間、マーシャルもシュトラーフェも一瞬表情が曇った。


 “厄介だな……”

 “厄介ですわね……”


 と二人は同時思ったのである。


「まずは、あんたのその大剣、破壊させてもらおうかな……」

「ふっ出来る物なら!!」

 シュトラーフェはそう言いドランゴの攻撃に待ち構え始めた。

 そして、ドランゴはシュトラーフェの持つ大剣に両手を合わせる。

「竜の逆鱗!」

 ルークに放った、闘気の衝撃波が大剣に襲いかかる。


 衝撃音と共に大剣からは煙が立ち込めている。

 だが、シュトラーフェの持つ大剣は傷一つ付く事なく無傷であった。

「つぅ……この衝撃久しぶりに味わったかも……」

 大剣は無傷だったが、シュトラーフェの両手がビリビリと痺れ持っている事が不可能であった。

 堪らず大剣を地面に突き刺すシュトラーフェは、ドランゴを見つながらそう感想を漏らしていた。

「あんたとなら、最高のパートナーと慣れたかもしれないのにね」

「光栄だが、それは無理な注文だな」

「えぇ、そうね。倒すか倒されるかね!」


 痺れの取れていない手で大剣を手にしたシュトラーフェは、ドランゴと再び激突を繰り返すのであった。




 ルークと対峙しているディアルスは、戦いたくなかった。

 しかし、ディアルスは何も言わない……

 黙ってルークの繰り出す攻撃を、受け止めているだけだった。



「お前なにやっているんだ!!」

 叫び声を上げ、ヴァルディアは慌てて駆けつけてくる。

「この人はな!!」

 ルークを睨みつけながら、ヴァルディアは何かを言いかけた。

 ディアルスがヴィルディアを制止したのだ。

 相変わらずルークの目には光が戻らず、ドランゴに忠実な者として命令された事を遂行しようとしている。


 持っていた木刀を振り回しディアルスにかかっていく。


 剣が混じり合う音と共に、ディアルスの前にヴァルディアが間に入り受け止めていた。

「ルークお前、どうしちまったんだょ!」

 ヴァルディアは必死に訴えるが、その声はルークに届く事はなかった。


 力を込めルークは、ヴァルディアの剣を飛ばす。

「あっ!?」

 とヴィルディアが思った時には、右肩目掛けて思いっきり木刀で振り下ろされていた。

 痛みと共に骨の折れた音を聞いたヴィルディアは、苦痛の表情に顔を歪ませる。

 かつての友はそんなのは御構い無しに、脇腹目掛けて剣を叩きつけたりして、手加減する事なく攻撃し続けてくる。

 堪らずその場に倒れこむヴァルディア……


「トドメだ………」

「……ルッルーク」

 ドランゴの命令はディアルスの捕獲……

 関係のないヴァルディアを、ルークが手加減する理由は何一つなかったのである。



「待ちなさい!!」

 トドメを刺そうとしているルークに対して、リーサが駆けつけてきたのである。

「くっ来るなっ! リーサ!」

 しかし、ルークにはリーサという認識はなく……

 また邪魔者が間に入ってきた……

 排除する……


 ルークの剣は地を這いながら、リーサ目掛けて振り上げられて行く。

「!!」

 あまりにも突然の事にリーサは反応出来なく、その場で目をつぶり立ち尽くしてしまうのであった。



 ルークの木刀はリーサに当たらなかった……

 ディアルスは、リーサに向けられた木刀を片手で受け止め守っていたのだ。



 ディアルスは、覚悟を決めた……

 これ以上、ルークの意図しない攻撃を繰り返して欲しくなかった。

 多少力ずくになるが、ルークを取り押さえようと考えたのだ。


 ディアルスは【竜巻のアーツ】を発動し、竜巻をまとった拳がルークのお腹に捻じり込んできた。


「がはっ……!!」

 竜巻の拳はコークスクリューのように直撃している。

 堪らず木刀を離し両手で、お腹を抑えながら疼くまるルークの姿をディアルスは何も言わず黙ったままだった。


 そして、ディアルスはリーサに目でヴァルディアの所へ行くようサインを送り、リーサは慌てて駆けつけるのであった。


 ディアルスの一撃で、ルークは反撃出来なくなった。

 あまりにも激痛で息が出来ず、苦しみに耐えるので精一杯だった。

 しかし、それでもルークの目にはしっかりと、ディアルスの姿を捉えていた。


「………」

 そんなルークの姿をディアルスはこれ以上見ていたくなかった。

 傷つける事もしたくはなかった……


 ディアルスは竜巻から作り出された檻を作り出す。

 そして、ルークを身動き出来ぬよう拘束し始めたのだ。


 檻に触ろうとするのなら、竜巻は容赦なくルークを傷付けていく。

 どんなに身体を傷つけられようが、何も感じぬルークは只々ドランゴの命令を果たそうと、それでも必死に檻を壊そうとしている。

 だが、足掻けば足掻くほど、逃がさぬよう竜巻の形をした檻はルークを攻撃し続けて行く。

 ディアルスは、ルークを元に戻す方法を知らない……

 マーシャルがドランゴを倒し、ルークを元に戻してくれる……

 そう信じていたディアルスは黙って、ルークの姿を見つめる事しか出来なかったのである……




 一方……

 激しい戦いを繰り広げているドランゴとマーシャルたちは、二対一とは言え互角の勝負を繰り広げていた。

 マーシャルが【月光のアーツ】でシュトラーフェの身体能力を強化しドランゴに攻撃を仕掛ける。

 剣の聖地『ウイッシュ』於いて、現役最強の剣士と言われ、剣の達人であるシュトラーフェ……

 その戦う姿は、いつも側で強さを体験している門弟たちにとって信じられない光景であった。


 ドランゴが、互角に戦っている事が……


 そして、更にドランゴにはまだ余裕があるようにも見えたのであった。



「その竜の闘気……ほっとに厄介ね……」

「大剣を振り回しながら、その素早さ厄介だな……」


 お互いがお互いの力を認め合って行く中、マーシャルは更に月光の輝きを二重かけしてきたのである。

「シュッ……シュトラーフェ!!」

 マーシャルの渾身の言葉を聞いたのと同時に、更に力が溢れ出して行くのを感じたシュトラーフェは、渾身の一撃をドランゴに放ったのである。


 二重かけは極度の負担を身体にかける。

 マーシャルはその場に倒れこみ、勝負の行方を見守る……


 シュトラーフェの渾身の一撃がドランゴに当たる瞬間だった。

 ドランゴはニヤリと笑っている……

「約束通りその大剣、破壊させてもろう」

「!!」


「竜の闘気、開放!」

 その言葉と共に、ドランゴの筋肉は二倍にも膨れ上がり、シュトラーフェの剣を拳で叩き折ったのである。

「!!」

 折れた刃が空を舞い上がる中、ドランゴは息をつかせぬままシュトラーフェに両手を合わせている。

「竜の逆鱗、二連打!!」

 激しい衝撃波が二発、シュトラーフェを襲いかかる。


 避ける暇もなかったシュトラーフェは、攻撃を全て受け煙を上げながらその場で白目を向きながら、倒れてしまうのである。

 そして、竜の闘気を解放したドランゴの筋肉も急速に元に戻っていく……

 リバンドで僅か十秒程の間ドランゴは、身動き出来なくなる。

 折られた刃はゆっくりとクルクルと回りながら、落ちてくる……

 その刃は身動き出来なかった、ドランゴの右肩目掛けて深く突き刺さったのである。

「っ!!」


「シュトラーフェ!!」

「ドランゴ!!」

 同時に門弟たち、アーツバスターたちの声が響き渡るのであった。




 お互いに勝負の決め手を失い、にらみ合いが続く中……

 門弟たちは、シュトラーフェを介抱する。

 息はあるが、気絶し動かないシュトラーフェの姿を門弟たちはドランゴの力の凄さを、マジマジと体験する事が出来たのである。



 ミステリアに介抱されるドランゴもまた、意識はあったが瀕死の状態だった。

「ドランゴ!!」

 ドランゴに突き刺さった刃をミステリアは抜こうとした。

 だが、抜けば大量出血で死に至ってしまう。

 その事に気がついたミステリアは、敢えて抜こうとはしなかったのである。

「だっ……大丈夫だ。はぁはぁ……

 それよりも……ミッ……ミステリア。

 くぅっ……いっ一旦ゲートをくぐり戻るぞ……」

「作戦は中止するのね?」

「あぁ……ひとまず『風の街サイクロン』から……撤退する」

「わかったわ」


 ミステリアの命令でアーツバスターたちがゲートに入って行く中、生き残っていたアーツハンターたちは誰一人攻撃をする者はいなかった。

 マーシャルが、追撃を許さなかったのだ……



 最後にスフィア、そしてミステリアに支えられているドランゴの三人だけが残り、竜巻の檻に囚われているルークの方に目を向ける。

「……おいっルーク! 一旦ここは……引き上げる! ゲートをくぐれ!!」

 その声は必死に抵抗を続けていた、ルークの耳に届いたのである。

「……はい、(あるじ)ドランゴ」

 ドランゴの命令は、今まで破壊する事が出来なかった竜巻の檻を己の傷など御構い無しに、いとも簡単に壊したのである。

 流石に血を流しすぎたのか、その歩みは遅かった。

 しかし、一歩一歩ルークはドランゴの待つゲートへと歩み寄っている。


「いっ……行くな! ルーク!!」

 ヴァルディアがリーサの腕の中で介抱されている中、腹に力を入れ叫ぶ。

「そっそうよ、ルーク! 行ってはダメよ!!」

 リーサもヴァルディアに続き叫ぶ。


 皆が皆、ルークを呼び止める中……

 その声はやはり、ルークに届いてはいなかった。

 ひたすらルークは傷ついた身体を支え、ドランゴの元へと歩いていく……




「ルーク坊ゃ…… セルビアはどうするの……?」

 消え入りそうな声で、マーシャルは小さくルークに向けて発した……


 誰の声もルークには届かなかった……

 しかし、マーシャルが発したセルビアの声にルークは反応したのだ。

 ドランゴの元へと歩いていたルークの足は歩みを止めていた。


「セッ……セル……ビア…さん?」


 始めてルークがドランゴの命令を無視したかもしれない。

「!?」

 歩みを止めたルークに、ドランゴは不思議に思いながら見つめている。

 しかし、ドランゴにはもう話しかける力など残ってはいなかった。

 かろうじて意識を保つ事が出来たのは、彼のプライドの成せるものだろう。


 セルビア……セルビア……


 ルークの頭の中で、その言葉だけ駆け巡って行く……

「っ!!」

 堪らず頭を両手で抑えその場で疼くまってしまう……

「……セルビ……ア……」


「あっ……あっ…………」

 突然ルークは白目を向き身体を震わせながら、苦しみだした。


 誰もがその状況がわからず、立ち尽くしている。




 スフィアだけはルークの苦しむ理由を知っていた……

「ドランゴさん、やばいわ……拒絶反応起きてる……」

「……」

 このままでは、ルークを連れて帰る事は不可能と判断したミステリアは【生気のアーツ】を発動し、話せるだけの力をドランゴに渡して行く……


 少しだけドランゴの顔色が良くなって行く。

「無理…するな。ミス……テリア」

 辛うじて、話が出来るまで回復出来た事を確認したミステリアは、ドランゴに全て吸い尽くされる前に発動を停止したのである。


「でっ? スフィア、拒絶……反応だと……?」

「ええっ奴らが引き止めていた言葉の中に、自我を開放する言葉があったみたい」

「そ……れで?」

「もう一度、魅惑の蠱毒をかけないとダメよ……」

 スフィアはルークの姿を見ながら、ドランゴにそう話してくる。


 ルークの身体には拒絶反応満載の黒い波動が渦巻いている。

 もう一度、魅惑の蠱毒をかけるとなれば、黒の波動が効かない竜の闘気を持つドランゴが行く必要がある。

 しかし、ドランゴはつい先程シュトラーフェを倒す為に解放してしまった為、殆ど闘気は残ってはいなかった。


 元の世界に帰れる唯一の鍵が、手に入れたとドランゴは思っていた。

 だが、実際ルークは【黒のアーツ】を使いこなせてはいなかった……

 むしろ自我があった時の方が、まだ可能性はあったかもしれない。

 世話のかかる殺戮人間を、ドランゴは必要としていなかった。

 殺戮人間など、本国に帰ればいくらでも補充する事が出来る。

 ドランゴに必要なのは【黒のアーツ】を完璧に使いこなせ、尚且つ元の世界に返してくれる人間だけである。


「スフィア……」

「はい」

「ルークの側まで行く、力は……俺には残ってはいない……だから……放置する。

 残っている…奴らが何とかするだろ? 俺たちは帰還するぞ……」

 ドランゴの決断に、スフィアとミステリアは頷き、ゲートへと入り消えていく……


 ドランゴは最後までルークの苦しむ姿を見ていた……


 “さらばだ……生き残れよ……”


 こうして、アーツバスターたちは全て『風の街サイクロン』から撤退をし、アーツハンターたちの勝利と記憶され『風の街サイクロン』は漸く解放されたのであった……




 ◆◇◆◇◆



「あっぁああぁぁぁぁあぁ!!!」

 拒絶反応に苦しむルークに誰も、近寄る事が出来なかった。

 近寄れば消される……

 ルークの立っている場所にあった草や花は残さず消え去り、更に大地さえ消し去りそうな勢いだった。


 制御しきれていないルークを放置し、ドランゴたちアーツバスターは撤退した。

 満身創痍の中、誰も何も出来ず結末を見守る事しか残されてはいなかったかもしれない。



 気がついたシュトラーフェは、某然と立ち尽くしているマーシャルに話しかけてきたのである。

「マーシャル……あれは、魅惑の蠱毒の拒絶反応だ……」

「シュトラーフェ……気がついたのね」

「あいつら……、拒否する心を無理矢理封じ込め、言いなりにしたから……くそっ……痛い……」


 傷ついた身体を触りながら、シュトラーフェは話を続ける。


「拒絶が激しくすぎる……」

「この状況、やばいわよね?」

「あぁ、このままじゃあいつ死ぬぞ」


 魅惑の蠱毒にかかっている状況で、元に戻す方法はマーシャルもシュトラーフェも知らなかった……

 だが、拒絶反応を起こしている場合……

 元に戻す方法を二人は知っていた。

 方法は一つ、取り敢えず半殺しにして正気を取り戻させるか、そのまま死んでしまうか……

 二つに一つであった。


「あっ!! ぐぁぁぁぁっ!!」

 ヨダレを垂らしながら苦しみ悶えるルークの姿を、マーシャルは何もしてやれなかった。


 限界以上までに酷使した身体は動かず、ルークに近づく事など不可能であった。

 しかし、このまま放置すれば、ルークは死んでしまう。


 そんな中、ディアルスがルークの側へと近寄って行くのである。

「ディアルス!!」

 マーシャルの制止にディアルスは、振り返り黙ったまま頷く。

 ディアルスの決意にマーシャルは受け取り、月光の輝きをディアルスにかける。

 そして、更にルークの元へ辿り着けるよう黒い波動の中に一本の月の橋を照らしたのである。


 月の橋のおかげでディアルスは黒い波動に飲み込まれる事はなかった。

 だが、抑えきれず漏れてきた波動が近寄ってくるディアルスに襲いかかる。

 マーシャルの月光の輝きのお陰で五倍に強化されている、ディアルスの身体は竜巻で黒の波動を吹き飛ばしていたのである。



 ルークを取り巻く中心は外で見ていると分からなかったが、白の波動で満ち溢れていた。

 ディアルスは苦しむルークに対して【竜巻のアーツ】を発動する。

 両腕に高速回転している竜巻を身にまとい、ルークにそっと当てる。


「ぐぁぁぁぁああ!!」

 ディアルスは、マーシャルたちに解除方法を聞いていた訳ではない。

 苦しみながら死ぬぐらいなら、一層の事自分の手で……

 そう思ってディアルスはルークの側へと行ったのだ……

 だから、手加減するつもりは毛頭なかった。

 みるみるうちにルークの身体は傷つき、骨が折れる音や血吹雪が飛び散る中、ディアルスはそれでも攻撃の手を緩める事はなかった。



「がはっ……」

 次第にルークの目に光が宿り始める……

「!?」


 その目の光にディアルスは竜巻をすぐさま停止させ、ルークを見つめている。

 ルークを取り巻いていた黒の波動は、次第になくなっていく……



「おっ気絶反応なくなったな……」

「成功したようね……」

 シュトラーフェのマーシャルは座り込みながら、事の成り行きを見守り続けている。




「ディアルス……さん?」

「…………」


 ディアルスは、ヤレヤレと言う顔をしながらルークを見つめていた……

「あまり世話をかけすぎるな……帰るぞルーク、ロールライトに……」


【竜巻のアーツ】の発動を停止させ、ディアルスはこの時始めて口を開いたのである。

 ルークにとってその声はどこかで聞き覚えのある声だった……


 だが、誰だったか思い出せずにいた……

 そしてルークは思った……


 “話せるなら、最初の出会いの時から話ししてよ!!”



 しかし、その言葉を発する事はなく、ディアルスの腕の中でルークは気絶したのであった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ