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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ー風の街サイクロンー
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第五十話 封じられた意思

 ドランゴの攻撃による竜の逆鱗は、ルークを一撃で深い闇に叩き落としていた。

 今だにルークの身体からは煙を上げている。

 それは、竜の逆鱗の破壊力の凄さを物語っていた。

 ピクリとも動かないルークをドランゴは、悲しそうに見下ろしていた。


 “悪く思わないでくれ……”


 ドランゴは、【誘惑のアーツ】を持つスフェラの方へと振り向く。

「おいっ、言われたとおり瀕死にしたぞ。さっさとやれ」

「は〜い」


 スフェラは動かないルークの側へ駆け寄り、仰向けに動かす。

 全身傷だらけのルークの姿を見ながらスフェラは、生きているのが不思議……

 と感じていた。


「どうだ?」

 ドランゴはスフェラの真後ろに立ち、ルークを見ている。


「ちょっとやり過ぎかな? って感じがあるけど、まだ辛うじて生きているし大丈夫よ」

「おいっ!!」


 “瀕死にしろと言ったのはお前(スフェラ)だろ!?”


 とドランゴは、言いたかった。


 しかし、大丈夫と言うスフェラに、ドランゴは舌打ちをしながら黙って見ていた。




 スフェラは両手を大きく広げ、空の方へ両手を挙げながら【誘惑のアーツ】を発動する。

 徐々にその手の中に、ピンク色をした目に見える誘惑の塊が出来上がって行く。


「【誘惑のアーツ】発動……魅惑の蠱毒」

 スフェラが唱えると、誘惑の塊はピンク色に輝きながらルークの身体の中に吸い込まれいった。

 ドランゴの攻撃を受け、瀕死の状態だったルークの身体はみるみる回復して行くのであった。


 ふぅ〜とスフェラがため息をつく。

 すかさず、後ろで一部始終見ていたドランゴはスフェラに話しかけてくる。

「……で? どうなったんだ、スフェラ?」

「魅惑の蠱毒は、成功しましたわ」

「ほぉ〜」

 まだ目を開けないルークを見下ろしながらドランゴは、少し喜んでいたのかもしれない。

 スフェラはドランゴの気持ちなど理解せずに、話しを続けてきた。


「ドランゴさんにやられた、ルーク君の傷は全快しました。

 それは、魅惑の蠱毒がきちんと作用した事を表しています。

 仮に、最後まで意識が残っており心が拒否してたら、魅惑の蠱毒によって死に至ります」

「ふむ、ならやり過ぎた訳でもないな……」

「結果的にはね……」

 スフェラは少し嫌味ったらしくそう答えていた。


「所でドランゴさん、魅惑の蠱毒の効果知っているわよね?」

「あぁ……」


 そもそも【誘惑のアーツ】には、五段階の誘惑の仕方があり、

 魅惑の蠱毒……

 これは五段階目の一番強力な誘惑の仕方である。


 一段階目は、わからないように徐々に効果を現しいつの間にか虜になっている。

 この方法は、スフェラがルークに最初にかけていたものである。

 二段階は、一段階目よりも更に強力にしたものであって、二段階目は割と気づかれやすい。

 そして、三段階目……

 三段階目は、ルークが『土の街グランディ』で出会った女性がかけてきたものである。

 四段階目……激しい拒否がなければその者を虜にさせてしまう。

 そして、五段階目……

 これに囚われた者は、自らの意思を封じ込められ、何も考えない状態に強制的にさせられる。

 (あるじ)に忠実な部下……

 生き人形にさせられてしまう。


 ルークも同様、何も考える事が出来ず意思も生まれない。

 ドランゴに忠実な殺戮人間になってしまったのであった……




「起きろ、ルーク」

 ドランゴの言葉にルークは目を開け、立ち上がる。

 その目にはかつての輝きは失わられていた。

 何も考える事を許されない空虚な眼差しをルークはドランゴに向けていた。


「今日から俺がお前の(あるじ)ドランゴだ。」

「はい、(あるじ)ドランゴ……」

 暗く冷たい声でルークはドランゴにそう返事していた。


「それで、今後どうするの? ドランゴ?」

「多分アーツハンターたちが来るはずだ…… 詳しくは部屋に戻りルークに話しを聞こうと思う。

 交代で二、三人ゲート前を見張りさせておけ」

「りょーかいー」

【生気のアーツ】を使う女性は、他の幹部たちと話し合いドランゴの部屋へと歩いていく。



 ルークはドランゴの後を歩いていく……

 一定の速度、歩幅、手の振り方……

 全て同じ動きを繰り返している。

 そんなルークの後ろ姿を見ながら、スフェラは悲しくなっていた。


 スフェラは元々アーツバスターでドランゴの事を、親友だと思っている。

 実際の所、ドランゴがどう思っているのかは謎だが……


 親友であるドランゴの為とはいえ、この三ヶ月間一番長くルークと顔を合わせていたのはスフェラである。

 ドランゴが、なぜルークに惹かれその力を手に入れようとしているのか……

 ルークの持つ【黒と白のアーツ】意外にもあるとわかっていた。

 わかっているだけにスフェラは、このような結果になった事が悲しかった……

「ごめんね……ルーク君」

 スフェラは、ルークの後ろ姿を見ながらそう呟いていた。




 ドランゴの部屋に着くと、ドランゴは椅子に座りルークは壁際に立つ。

 スフェラと【生気のアーツ】を使う女性、ミステリアも部屋へと入って行く。


 ドランゴはルークを見つめながら、話しかけてきた。

「ルーク、アーツハンターたちはいつ来る?」

「決行は本日……としか聞いておりません」

「その方法は?」

「『土の街グランディ』側のゲートの封印を解き、再び再稼働させる。

 そして、我々が来た時には直ちに合流を……と言われました」

「ふむ、誰に?」

「戦闘隊総司令官マーシャル・フォン・フライム」

「ほぉ〜わかった。もういい」

 そうドランゴが言うとルークはそれ以上何も言わず直立不動なまま、動かず何も言わず……

 ただ立ち尽くしていた。



 そんなルークの姿をスフェラは目を逸らしていた。


「戦闘隊総司令官の名は、私も知っているわ」

 ミステリアは、そう言いながらドランゴの顔を見る。

「あぁ……俺も知っている。奴は確か【月光のアーツ】の使い手だろ?」

「でも、今日は満月じゃないわよ?」

「あぁ昨日が満月だったから、今日は十六夜月だな……

 それでも戦闘隊総司令官の力は十分に発揮されるな」

「という事は?」

「夜……もしくは夕方……と考えるべきだろうな」


 ドランゴは、ゲート付近の見張りは継続し手の空いている者は、アーツハンター襲撃に備え準備と休息の指示を出したのである。



 そして、ドランゴたちも食事を始める。

 三人でテーブルを囲いながら、アーツハンターたちに対抗する作戦を言い合いながら、次々と決まって行く。

 空腹に満ちたスフェラは、ルークの顔を見ながらドランゴに話しかけてきた。

「ねぇ、ルーク君のご飯は?」

「あぁん? 腹が減ったら勝手に食べるだろ?」

 ミステリアは、ドランゴの返答に驚いていた。

「それは違うわよ? 命令しなきゃあの子ずっとあのまま立っているわよ」

「ぬっ!?」


 “ちっ何も考えないという事は、いちいち命令しないと行けないのか…… めんどくさいな……”


「今、面倒と思ったでしょ?」

 ミステリアはドランゴの心を見透かしているかのように、質問してきた。

 ドランゴの表情が少し曇るのを、見ながら更にミステリアは話しを続けてくる。

「それが、あなた……ドランゴが望んだ事でしょ? 最後まで面倒見なさいよ。大きな人形をね……」

「ちっ……!!」

 ドランゴはミステリアに言われるがまま、不機嫌そうにルークのご飯を隣の席に用意しルークの方を見る。

「おいっ腹が減っているなら、食えっ!」

 そうドランゴは言うが、ルークは何も反応せず黙ったまま立ち尽くしていた。


「くすくすっ」

 とミステリアとスフェラは笑いだし、ドランゴとルークを見ていた。

「何が可笑しいんだよ! スフェラ!!」

「ドランゴさん……」

 スフェラは必死に笑うのを堪え、目に溜まった涙を軽く拭っている。

「『腹が減っているなら、食えっ!』と言ってもルーク君が答えるわけないわ」

「何でだよ!?」

「お腹が減る……その考え自体しないからよ」

「!」

「クスクス……」

 ミステリアは口を押さえて笑いを堪えていた。

 スフェラもまた、ニヤニヤと笑っている

「ルーク、俺の隣に座って飯を食え!」

「はい、(あるじ)ドランゴ……ご命令のままに……」

 ルークはドランゴの隣に座り、ドランゴが用意したご飯を無表情のまま食べていく。

 そして、食べ終わるとまた元の位置に立ち黙ったまま立ち尽くしていた。




 食器の片付けも終わりドランゴは、戦闘準備を始めて行く。

 幹部を直接部屋に呼び、一人ずつ指示を出していった。

 幹部全員に指示たドランゴは、自らも準備を始めたのである。


 突然部屋の中から異臭がしてきた。

 アンモニアのような……

 部屋にいたドランゴ、ミステリア、スフェラの三人は堪らず鼻を押さえ、疑問を口にしたはミステリアだった。

「ねぇ、なんか臭くない?」

「確かに臭いな……」

 ドランゴも不思議そうに辺りを見渡す。


「あぁっ!!」

 大きな声をスフェラは上げをルークを指差していた。

 その声にドランゴもルークを見つめる。

「こっこいつ……漏らしやがった……」

 ルークは無表情のまま、ズボンを濡らしながらも黙って立ち尽くし、足元にはアンモニアの匂いを放つ水溜りが滴り落ちていた。

 慌ててミステリアとスフェラは全ての窓を開け、ドランゴを睨みつける。


「なっなんで俺を睨むんだよ……」

「ルーク君が漏らしたのはドランゴさんのせいよ!」

「はぁ!?」

「トイレも命令しないと行かないのは、当たり前でしょ!

 因みに、着替えも命令しないとやらないわよ?」


 ドランゴに言いながら、スフェラはミステリアと顔を合わし笑い出した。

「ぷっはははははっ! ミステリア、(あたし)もうダメ、おかしすぎる……」

 ミステリアとスフェラの笑い声を黙ったままドランゴは聞いていた。


「おいっスフェラ……俺はこんなのを望んじゃいないぞ! もう少しこいつの自我をだな……」

 ドランゴはルークを指差しながら、スフェラに文句を言ってきたのだ。

 スフェラはドランゴのその言葉に、笑いを止め否定するような目つきでドランゴを見つめてくる。

「それは、ダメよ……」

「なんで!?」

「ルーク君の心は、アーツバスターになる事を全て拒否していたわ。

 少しでも自我があると、拒絶反応起こすわ」

「ちっ!」

 舌打ちしドランゴはルークの側に近づいていく。

「おいっ! 少しは腹が減ったとか! トイレに行きたいとか! 言えよ!」

 ルークはドランゴの言葉に首を傾げながら、

(あるじ)ドランゴ……申し訳ございません。

 私には(あるじ)が言っている命令の意味を理解する事が出来ません」

「!!!」

 その言葉に絶句したドランゴを見て、再びミステリアとスフェラは腹を抱えながら大笑いしていた。



「まぁ、ドランゴ……

 でっかい赤ちゃんができたと思って……」

 ミステリアは、ドランゴの肩を叩きながら慰めてくる。

「ミステリアァ〜!」

「世話がかかっても、優秀な殺戮兵器なんでしょ? 頑張って、ドランゴさん!!」

 スフェラはそう言い、逃げるようにドランゴの部屋を出て行ったのである。


 その後ドランゴはルークが汚した床を一生懸命拭きながら……


 “こんな事、俺は何一つ望んじゃいないぞ!?”


 とブツブツと独り言を言っていた。



 ミステリアとスフェラがいなくなり、ドランゴの部屋には黙ったまま立ち尽くすルークとドランゴが部屋の中にいる。

 アーツハンターたちが攻撃をしかけてくるまで、後半日ほどの時間の余裕があった。

 ドランゴは少し休息を取ろうと思い寝室に移動する。

 その後をルークも一緒について行くのであった……


 ベットに寝転がりドランゴは、ルークの行動を見ていた。

 ルークは何も言わず黙ったまま、ドランゴを見つめ命令が来るのをひたすら待ちながら、ドアの前に立っている。


「はぁ〜」

 深いため息を尽きながらドランゴは、後悔していた。


 “こいつ、何も言わなければ何時間でもここに立ち、飯も食わないし、寝る事もしない……

 可哀想だな……

 だが、それでも俺は元の世界に帰りたい……”


「おいルーク……」

「はい、(あるじ)ドランゴ」

 定型文のような決められた言葉しか返さないルーク……


「【黒のアーツ】発動出来るか?」

 ドランゴの質問にルークは【黒のアーツ】を発動する。

 その力は魅惑の蠱毒がかかる以前よりも、遥かに弱々しくドランゴを消し去る程の威力は、到底持ち合わせてはいなかった。


「それで全開か?」

「はい……」



【黒のアーツ】は、ルークの意思を持ってして初めてその力が発揮される……

 意思を持たず何も考えられない、今のルークに【黒のアーツ】を使いこなす事は不可能であった。

 そんな事など、予想出来る事などなかった……

 予想出来たらドランゴは別な方法を考えていたはずだ。

 ドランゴは手に入れた、何も考えない期待外れの戦闘兵器を今後どう使って行けば良いのか悩んでいた。

 同時に、帰る方法の唯一の手がかりは、遥か彼方に遠くなって行くような気がしてならなかった。


「少し寝ろ……」

 ドランゴは取り敢えず、目の前に迫ってきているアーツハンターたちの進軍に備えるべく体調を整える事にした。

 ドランゴの言葉にルークはその場で目を閉じ眠りにつくのである。


 “そこで寝るのかよ!!”


 ドアの側で立ったまま眠りについたドランゴは半分は飽きれ、もう半分は器用な奴だな……

 と感心してしまったのである。



 取り敢えずドランゴの今後の方針として……

 今のままのルークでは、一生ドランゴは元の世界に帰る事は絶望的な事がよく分かった。

 アーツハンターたちを返り討ちにしたのちに、ドランゴは本国のあるガルガゴス帝国領へとルークと共に帰還を果たす。

 そして、逃げ場のなくなった所で魅惑の蠱毒を解除し、我を返した後にドランゴの監視下に置く。

 逃げようとするものなら、監禁、拘束するのも辞さないとドランゴは考えていた。


 そして、いつか竜の闘気を超えるまでに成長した暁には、ルークによって元の世界に帰る……

 そう結論を出したのであった。


 ドアの側で眠りについているルークの姿を見ながらドランゴは、

「頼むよ……ルーク」

 と深いため息交じりに、話しかけていた。



 半日後……

 太陽の陽も大分沈みかけ、空がオレンジ色に変わっていく。

 太陽と反対側からは、満月に近い形を保っている月が見え始めた頃……


『風の街サイクロン』内でけたたましい警報音が鳴り響いていく……

 ドランゴの予想通り、アーツハンターたちは夕刻マーシャルを中心にゲートを使い『風の街サイクロン』へと侵入してきたのであった。






ルークの意識は封じ込められました……

なので別な書き方になっています。

読みずらかったら申し訳ございません……


第五十一話 機転

1月12日19時更新予定です。


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