第四話 火の街ロールライト 〜壱〜
大きな街についた!
今まで村の中でしか暮らしていなかった俺にとってここは、すごく新鮮な場所だった。
アードに言わせれば、まだこの街は中規模の街らしく、巨大な街に行けばもっと凄いとの事だった。
それでも、この街の賑わいはすごかった。
『火の街 ロールライト』
露店みたいな物がいっぱい並んでいてその一つ一つどれもが、俺の興味心をくすぐっていた。
アードと一緒に露店を見てみると、火の街というだけあって、火系のアーツは安く【火のアーツ】、【炎のアーツ】、【火炎のアーツ】と全て揃っていた。
しかし、その他のアーツは品揃えが悪く物凄く高かった。
アード曰くここの地方は、火の精霊が強く成長しやすい。
そして、街の人達や火系を扱うアーツハンターにとって、生活の資金源になっているそうだ。
「ルーク、俺は一度アーツハンターギルドに行って一連の報告をしてこようと思う。お前はどうする? ついてくるか?」
「ご迷惑でなければ……」
「迷惑じゃないさ、気をつかうな」
アードは、俺の頭をクシャクシャと撫でながらそう言ってくれた。
アーツハンターギルドに向かいながら、行ったら危険な所や立ち入り禁止区域、繁華街、スラム街、貴族街等色々な場所を教えてもらった。
中でも特に注意が必要なのは、貴族街。
貴族意外の人間が足を踏み入れると、たちまち警備兵が来て捕まってしまうらしい。
一度捕まると強力な後ろ盾がない限り出てこれない。
そして、奴隷商人に売られてしまうか、殺されるかしか道は残されていないらしく、絶対に近づいてはならないと何回も念を押された。
長い坂道を登りきるとそこには、でかいレンガ作りの建物があった。
ここがアーツハンターギルドだとアードは教えてくれた。
アードは、アーツハンターではない俺は中に入る事は出来ないので、ここで待つように話し建物の中へと入って行くのであった。
すぐに出てくると話しはしていたが、一人になった俺はやる事がなく暇になってしまった。
そして、暇なので人間観察をして見る事にした。
アーツハンターギルドには、色々な人が入って行く。
大きな剣を持ち怖い顔をした巨体の男性や、綺麗なローブに身を包まれている女性、二刀流の人達や、足取りが軽く中に入って行く人、重い人等様々だった。
中には、玄関先で仲間同志が言い争いになりその大声に気がついた、ギルド内にいた人達や中に入ろうとした人達までが、興味を持ち始め集まりだしていた。
言い争いはあっという間に殴り合いや、アーツ発動までに発展してした。
結局はアーツギルドの事務局の人が出て来て、
「いい加減にしなさい!!!」
と一喝。
すると、あっさりと解決してた。
すぐ戻ると言ったアードは中々出てこなかった。
既に、2時間ぐらい経過しているだろう。
俺は人間観察にも少々飽きて来ていた。
「アードさんまだかな〜?」
足元に落ちていた小石を蹴りながら、遊んでいると……
「怪しい少年はっけ〜ん!!!」
後ろから突然声をかけられ、服の後ろを持ち上げられた。
「離せっ!」
ジタバタと暴れたが、無意味な抵抗だった。
「こんな所に、子供が一人でいると危ないんだよぉ〜お姉さんが安全な所まで案内板してあ・げ・る」
「中に入って行った人に、ここで待ってろと言われたんです!!」
「へぇ〜」
お姉さんと名乗った人は、そっと俺を降ろし俺を見てくる。
黄色のクリクリッのくせ毛でボサボサ、寝癖だろ!!
「ぼくぅお名前はぁ〜?」
なんか馬鹿にされている気分だった…………
「ルーク・ゼナガイア.五歳………」
「私のぉ〜名前はぁ〜セルビア・フォン・タルト。セルビアと呼んでねぇ〜ルークちゃん♫」
“絶対馬鹿にしている!!!”
俺を近くにあったベンチに無理矢理座らせ、セルビアもすぐ側にちょこんと座り俺の顔をジッと見てくるのである。
「ねぇルークちゃん、中に入って行った人の名前はわかるぅ〜?」
「…………」
ちょっと話し方変だし、俺の事馬鹿にしているしこの人、信用していいのかな? でも、よくよく見ると立派な鎧を着て、マント姿でカッコいい剣を差している。
喋らなかったら、カッコいいお姉さんなのになぁと思った。
なにより、右胸には、立派な紋章があった。
変な人だけど、怪しい人ではないのかもしれない??
「アード・フォン・ルフさんですけど……」
まぁアードは強いし、大丈夫だろうと思い教える事にした。
するとセルビアはパァと明るくる。
「えっ?? アードちゃん!? この街にいるのぉ? それもギルド内にいるのぉ?」
「はっはい……」
セルビアは突然ベンチから立ち上がり、俺の手を取って無理矢理歩きだした。
「あっあの……?」
「大丈夫よぉ、ルークちゃん! アードちゃんの用事きっとまだまだ終わらないだろうしぃ! これから私が面白い所に連れて行ってあげる♩」
「えっえぇぇぇぇぇぇ!!!!」
セルビアに連れられた俺は、抵抗虚しくあっと言う間に商店街に着いた。
「おっセルビアさん、今日は随分ちっちゃい彼氏だね〜」
「うふっ可愛いでしょ♩」
とか
「セルビアさん、新しい服どうだい?」
「セルビアさん、この籠手中々いいよ! どうだい!?」
とか色々な店の人達から話しかけられていた。
しかしセルビアは…
「また今度ねぇ〜♩」
と笑いながら手をふり、商店街を通り過ぎて行った。
そしてアードに教えてもらった、立ち入り禁止区域に入って行った。
「あっあの、セルビアさん、ここはアードさんに行ったらダメだと言われている所なんですが……」
「もう!! アードちゃん固すぎぃ〜今日はぁ〜私がいるから大丈夫よぉ〜♩」
と言ってドンドンと奥に進んで行った。
“うぅ………アードさん助けてぇ〜〜!!”
しばらく歩き、誰もいない広場についた。
そこは、枯れた花がいっぱいあって、何年も手入れがされておらず、雑草で覆い茂っていた。
セルビアは、俺の手を離し広場中央まで歩くと両手を広げながら、振り向き俺の方を見た。
「さてとぉ〜ルークちゃんにお願いがあります。これから、その両手に装着している【黒と白のアーツ】発動してくれるかしらぁ〜? セルビアのお・ね・が・い♩」
「!!!」
逃げ切れるかわからないが、それでもすぐ逃げれるように俺は、半歩下がりセルビアの次の行動を警戒した。
「ここはねぇ〜昔きれーな、お花さんが咲いていたのぉ〜
でもぉ〜ある日を境にぃ〜全然咲かなくなっちゃたのよぉ〜
そしたらねぇ〜みるみる雑草ちゃんが生えちゃたのぉ〜
だからぁ〜ルークちゃんの【白のアーツ】でお花さん咲かせてくれないかしらぁ?」
「はぃぃぃぃぃぃい!!!???」
“ちょちょと待った!? アードと知り合いと嘘をついて、誰もこない所に俺を連れ込んで、【アーツ】を奪う為にセルビアさんはここに連れてきたんじゃないの??? 面白い所って花を咲かせる事なんですかぁぁぁあ!!??”
と大声で叫びそうになった。
「やっぱり駄目かなぁ?」
セルビアは、しゃがみ込み俺の目線に合わせながら、上目づかいに俺を見て涙をウルウルさせていた。
「いっいやだめじゃないですが、あの……その………まだうまく同時に使いこなせる自信がないんです………」
「私が後ろで教えてあげるわよ。任せて♩」
セルビアと俺は、広場の中央に立った。
「まず、眼を閉じて【黒と白のアーツ】の鼓動を感じとるの」
眼を閉じて【黒と白のアーツ】に集中してみた。
全く感じなかった……………
“うん! 絶対無理!!”
セルビアは、俺の後ろに立ちそっと後ろから抱きしめてきた。
「ルークちゃん大丈夫よ、落ち着いて感じて見て……聞こえてくるわよ」
セルビアの言葉に耳を傾けると次第に、身体の中心から鼓動を感じてきた。
「そぉその感じ、いいわよ〜そのまま、そのまま【白のアーツ】に集中して……【黒のアーツ】の方にも、もうちょっとだけ気をつかってみて〜」
俺には、セルビアの言っている事はさっぱりわからなかった。
でも頭ではわからなくても、身体はセルビアの言っている事を理解していた。
次第に頭の中で発動呪文が浮かび上がってきた。
「【白のアーツ】発動!! 浄化!!」
右手に装着している【白のアーツ】は光出し、見る見るうちに枯れていた花は全て咲き、雑草も消え去りそこには綺麗な池が現れた。
「おぉぉ!?」
「大丈夫? ルークちゃん?」
「えっ?」
セルビアに言われた途端全身の力が抜けて、腰が抜けたかのようにペタンと地面に座り込んでしまった。
「もうちょっと成長すれば、今の感じの発動なら、疲れなくなると思うよぉ♩」
「はぁはぁ……」
全身の疲れがすごい、消耗して身体がすごくだるくなっていった。
“横になって休みたいなぁ〜”
「ルークちゃん、ありがとぉ〜、おかげで綺麗なお花さんが咲いたわよ」
ニコニコ笑い喜んでいたセルビアだったが、急に真剣な眼差しに変わっていった。
「?」
「ルークちゃん、ここから先は休んでいてね♩」
「へっ?」
花畑の奥の方から、黒い煙のようなものがモヤモヤと出てきた。
そして、そのモヤモヤはやがて不気味な魔物の姿になっていった。
「あっあれは?」
「ここのお花さんはね、新鮮な空気が特徴でここから湧き出るお水は街の皆から、大変評判のいい飲み水だったの。でもある日この魔物がやってきてお花さんと一体化になったの。そして、お花さんは全て枯れて果て、お水は毒水になってしまったの」
「それでね、色々な人がここに来てこの魔物を炙り出そうとしたの。でも全て失敗に終わっていたのよね。今日、ルークちゃんの【白のアーツ】の浄化で、あぶり出す事ができたわ♩」
「シャァァァァア!!!」
魔物は両手を広げながら、俺を目がけて突進してきた。
セルビアは俺の前に立ち、剣を鞘から抜きながら魔物の方に向かって行った!
セルビアと魔物は正面で激突し、激しい戦いを繰り広げていた。
あまりにも攻撃速度が速く俺にはさっぱり見えず。
カキン! カキンッ!!
という音のみ聞こえた。
セルビアの攻撃が魔物の足を傷つけ、体制を崩した瞬間だった。
「汝、我の為に発動せよ【焔のアーツ】!!!」
セルビアの身体の周りには、激しい焔の炎に覆いつくされ、黄色だった髪の毛は焔色に変わっていった。
「焔の剣!!」
セルビアを覆っていた焔の炎は、すぐさま持っていた剣に移り焔の剣になっていった。
そして、そのまま魔物目がけて振り下ろしたのだが、ヒョイと避けた魔物は再度俺に向かって走って来る。
「ちっ!」
今度は、焔の剣から焔の塊に何個も変形した。
「焔連弾!!」
何個も出来上がった焔の塊は、魔物目掛けて向かっていった。
「ぐぁぁぁぁぁあ!」
魔物に全て直撃した。
焔の炎に焼かれながら崩れ落ちた魔物は次第に、動けなくなった。
セルビアは、止めを刺そうと魔物に近づくが、突然足を止めたのである。
魔物は苦しみながらも、叫びながら身体がドンドン大きくなっていった。
するとセルビアは、俺のそばに寄ってきた。
「ルークちゃん、ちょちぃ〜やばいかも…」
「えっ?」
「あの魔物自ら自爆して、この街全て吹き飛ばすつもりなのよぉねぇ〜」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
魔物はドンドン膨らんでいる。爆発寸前である。
「ルークちゃんの【黒のアーツ】でなんとかならないかしら?」
「そっそんなの無理だよぉ……」
「なら、アードちゃんも街のみんなも、ギルドのみ〜んなも死んでしまうだけね」
「…………」
「大丈夫、ルークちゃんなら出来るわ。先程やった感覚の逆のイメージをするのよ」
「うぅぅ……やっやってみます!」
俺は、左手に装着している【黒のアーツ】に全神経を集中させた。
次第に左手の手の平にバチバチと高速回転をしながら、黒い球体が出来上がってきた。
どんどん膨らんでいる魔物に俺は近づき、そっとその黒い球体を当てる。
魔物の周りをギュュュン、ギュュュンと渦を巻きながら飲み込みこんでいく。
そして最後にはスッ! と消え去っていった。
辺りは静けさを取り戻していた。
“ふぅ〜なんとかなった〜”
とりあえず、街を消し飛ぶ危機を回避する事が出来た。
「ルークちゃん?」
「セルビアさん、俺もう動けないです………」
うまく【白のアーツ】も同時に発動出来た様で、急激な眠気に襲われる事はなかったが、疲れて動けなくなってしまった。
セルビアは、はいはいと言いながら俺を背負い、アーツハンターギルドに戻る事とした。
◆◇◆◇◆
アーツハンターギルドに戻った俺は、セルビアに背負ってもらったまま中に入って行った。
中に入るとなぜか、ギルド内は騒がしかった。
事務局の人達が走り回り、アーツハンター同志では、激しい言い争いが起こっていた。
「セルビアさん、なにかあったのかな?」
セルビアは俺の質問に対して答えてはくれなかった。
でも、何故かやっちぃまったぁ〜みたいな顔をしている。
すると、走り回っていた事務局の一人がセルビアに気がつき駆け寄ってくる。
「支部長!!!」
と大声で叫んだ。
その大声に周りの皆が一斉に振り向き、セルビアを見つめた。
「えっ………? セッセルビアさん、支部長なの?!!!」
セルビアは俺をみながら悪びれた顔をしながら……
「てへっ♩」
と自分の頭を軽く小突いていた。
“てへっ♩ じゃなぁぁぁぁい!!!!!!”