第四十三話 ヴァルディアと共に……
朝、目覚めるとディアルスは既に身支度を整えていた。
「おはようございます、ディアルスさん」
ディアルスは俺が起きたのを確認し、頷いていた。
俺も服を着替えながら、ディアルスに今日の予定を聞いて見る事にした。
「今日は、ディアルスさんどうするんですか?」
返事に困る質問にディアルスは、黙ったままだった……
“こういう質問はダメだった……”
「マーシャルさんの所に行くのですか?」
コクンコクンッ
とディアルスは返事をしていた。
「俺も鎖帷子を修理依頼していて本日出来上がる予定なので、それを受け取り次第アーツハンター支部に行きますね」
わかった。
と言わんばかりにディアルスは、そんな顔をしていた。
俺とディアルスは宿屋前で、また後で……と話し別れる事にしたのである。
宿屋から商店街のメインストリート歩き、有名店であるアルヒミーの店を通り過ぎる。
よろず屋のおばちゃんにも元気良く呼び止められたが、会釈しながら逃げるように通り過ぎ、目的地である鎖帷子を預けた小さな防具屋の中に入って行く。
おっちゃんは鎖帷子を、手に持ち眺めていた。
“最終調整だろうか?”
「あっあの……おはようございます……」
「あぁ、おはよう。小僧……こいつを取りにきたのか?」
「はい、出来上がりましたか?」
おっちゃんは何も言わずに鎖帷子をカウンターの前に置き、手招きをしていた。
「修理と手入れ、そして防御面を強化してみた」
「おおっ〜」
早速手に取り確認してみたが、どこがどう強化されたのか……
さっぱりわからなかった……
「パッと見だとわからないがな、プラチナのつなぎ目に金剛石と言う鉱石を組み込んでみた」
「金剛石ですか?」
「あぁ、その金剛石のお陰で前より丈夫な鎖帷子になっているはずだぞ。大事に使え」
「はい、ありがとうございます!!」
おっちゃんにお礼とお金を渡し、新しくなった鎖帷子を受け取り俺は、一度宿屋に戻る事にしたのである。
◆◇◆◇◆
宿屋に戻り早速鎖帷子を着て見る事にした。
確かに以前より遥かに軽くなっていて、着ている違和感を全く感じる事がなかった。
「すっげぇ〜アルヒミーより、あのおっちゃん凄いな……」
あの場所は忘れないでおこうと決め、再び宿を出た俺はアーツハンター支部へと向う事にしたのであった。
支部に着くとヴァルディアは既に、待機室で俺の到着を待っていてくれていた。
「おっルーク来たか」
「あぁごめん、ヴァルディア遅くなった」
「いや、いいよ」
「マーシャル総司令官とディアルスさんは、今後の事を決める大事な会議に参加中だな」
「なんで、ディアルスさんがそんな大事な会議に参加するんだ?
俺たちはつい最近『土の街グランディ』に到着したんだぞ!?」
「……あん? だってあの人は……」
ヴァルディアは、ハッと気づいたのかそれ以上の言葉は紡ぎ、
「……っ【竜巻のアーツ】は貴重な戦力だし、戦闘参加要請でも正式にするんじゃないのか?」
正論だったが少し誤魔化している感じが隠せなかった。
きっとこのタイミングでヴァルディアにディアルスの正体を聞いても、本当の事は教えてくれないだろうな………
「会議が終わるまで結構時間がかかると思う。と言う事でだ、ルーク……」
「んっ?」
「もう少ししたら、裏の訓練広場で今日の訓練が始まるんだけど行くか?」
「えっ? いや……俺、アーツハンターじゃないし……」
「心配するな! マーシャル総司令官にルークの参加の話ししたら、教官に伝えておくと言っていたぞ」
「……」
「それとも、アーツハンターの訓練にはついてこれないから、辞めとくか?」
「ぬっ!!! 参加する!!」
「じゃ決まりだな」
クックククッと言うヴァルディアの笑い声と共に
「あっ……」
“しっしまった……くそぉ〜幼馴染と言うの心理読まれやすいな……”
後悔してしまった……
まぁ、特にやる事もなかったのは事実だった。
鈍っている身体を鍛えるには都合がいいかな?
と思いヴァルディアと共に訓練広場へと行く事にしたのである。
訓練広場に着くと総勢約五十人近くのアーツハンターたちがずらりと整列し、その周りを囲うかのように教官が十五人程並び、中央には見覚えのある一人の男が立っていた。
“あっあの人は戦闘中に俺を怒鳴ってきた人だ……”
「ルーク、こっちだ」
「あっうん……」
ヴァルディアの後をついて行くがまま、最後尾に並び指示を待つ事にした。
そして、ヴァルディアは俺に木刀を渡してきた。
「これは?」
「最初は素振りから始まるんだ、俺のを貸してやるから使え」
「ありがとう」
木刀を受け取ると、中央にいた男がマイクを使わずに大きな声で叫び出したのである。
「諸君!! おはよう!!」
「おはようございます!!」
「我々はアーツバスターが侵攻しなくても、常に訓練を怠ってはいけない!
早速今日の訓練を開始する!!
まずは素振り五百本!
号令に合わせてはじめ!!」
“って五百本!?”
考える暇もなく、号令はすぐに始まり慌てて号令に合わせながら、素振り開始したのである。
二百本ぐらいやっただろうか……
流石に両腕が、上がらなくなってきた……
チラリッと隣にいるヴァルディアを見てみると、なんの苦もなく涼しい顔で素振りを行っていたのである。
“くっくそぉ〜負けるもんか!!”
気合を入れ直し、再び開始していると一人の教官が俺に話しかけてきた。
「おい、お前……」
「はい?」
「いい打ち筋だが、力がうまく伝わらない素振りの仕方をしている。
もっと右肘と手首を十分に伸ばして、剣先に力が加わるように小さく振り下ろしてみろ」
「はっはい……」
教官に言われた事を意識しながら素振りをすると余計に両腕の疲れが見え始めたが、それでもなんとか五百本やり切る事が出来たのであった。
「はぁはぁ……」
その場で座り込み、酷使し過ぎた両腕を触りながら
“もう、両腕上がらないよ……”
それでもヴァルディアは、汗一つかかず涼しい顔をしていたのである。
「ヴァルディア……疲れていないの?」
「あぁ毎日やっていれば、自然と慣れるさ…… フッ……もうばてたのか?」
ヴァルディアのドヤ顔に、俺の負けたくないと言う対抗心に火がついてしまったらしい。
後先考えずに……
「ちょっと休憩しているだけだ!」
まぁ、それは後々の後悔になって行くのであった……
「次は、腕立て伏せと腹筋、合わせて五百回だ!」
「!!」
中央にいた男は、そういいながら号令をいい始めたのである。
“まっマジかよ……”
取り上げ、両腕は上がらないので腕立て伏せは却下……
となれば腹筋だな……
ひたすら腹筋五百回……
途中で身体を起こしあげる事が難しくなり、腕立て伏せに切り替えながらもなんとか五百回達成する事が、出来たのである。
「はぁはぁ……」
大量の汗と共にもう身体は動かず、その場で大の字で寝転がってしまった。
流石のヴァルディアも疲れたのかその場で座り込み、呼吸を整えていた。
「ヴァ……ヴァルディアも……流石に疲れた……?」
「まぁルーク程じゃないさっ……」
「これで終わりかい?」
「いや、この後ランニング三時間だ」
「うへぇ……でもこの無茶ぶり……どことなくギレット先生の訓練方法と似ているね……」
「あぁ……ギレット先生の、訓練方式取り入れているみたいだぞ」
「やはり………」
“ギレット先生……凄過ぎ……”
その後のランニングは全身筋肉痛の上、立ち上がる事も出来ず不参加する事にした。
「まぁ俺は、慣れているからな………」
とヴァルディアは言い、俺を置いてランニングに出かけてしまったのである。
ちょっと悔しかった……
俺とヴァルディアの間に、どれ程の力の差があるのだろうか?
ヴァルディアは、パラケラルララレ学校を卒業しないでマーシャルの元へ……
そして『ラグナロク』に行き今や、アーツハンターとなり活躍している。
俺はどうだ?
パラケラルララレ学校は卒業したが、その後奴隷となりギレット先生に助け出されるまでなに一つ訓練をしていない。
それに、ロールライトに帰還後も訓練もせずに旅を続けている……
「力の差は歴然だな………」
大の字に寝ながら空を見上げ、そう呟いていた……
◆◇◆◇◆
三時間後……
空を見ていたはずだったのが、疲れ果ていつの間にか寝てしまったようだ。
「おぃ、ルーク大丈夫か?」
ヴァルディアは俺を揺すりながら起こしてくれた。
眠たい目を擦りながら、身体を起こしあげる。
「ヴァルディア……お帰り………」
「おぅ、ただいま。 ってルーク寝ていたのか?」
「あれ? いつの間に………」
「今日の訓練はもう終わったぞ。会議も終わった頃だろう」
「うん……」
ヴァルディアは右手を俺に差し出しながら、
「立てるか?」
差し出されたヴァルディアの手を取り立ち上がる事にした。
「ありがとう」
「よし行くか!」
訓練広場を出てアーツハンター支部へと向かい中へと入るとヴァルディアは、俺にここで少し待てと話し奥へと入って行くのであった。
ヴァルディアが戻って来るまで暇だったので、支部の中を観察する事にした。
ロールライトと同じ作りをしていた支部は、まず後ろにドア。
そして正面には受付のカウンターがあり、お姉さんがアーツハンターへの依頼の話をしていた。
左側にはテーブルと椅子が並べられ、反対側の右側には掲示板が置かれていた。
ガーゼベルトにあるアーツハンター協会と同じく、依頼の紙がびっしりと貼られていた。
Eランクの荷物運びや猫探し等簡単な物から、AランクやSランクになると退治系が多く並んでいた。
“へぇ〜”
と思いながら依頼を眺めていると、ヴァルディアは受付のカウンターの奥の部屋から戻り、俺に話しかけてきたのである。
「アーツハンターに興味持ち始めたか?」
「いや、アーツハンターには元々なりたかったんだけど、なれない理由が今ちょっとあってね………」
「そうか………」
結局ヴァルディアからの話によると……
会議とやらはまだ終わらない為、先に戻っていろとの事だった。
しかし、会議はその日には終わらず、二日目にして漸く終わりマーシャルから呼び出しを受けた俺は、今後の事についての説明があった。
「ルーク、会議で出た結論を話しますわね」
「はい」
「我々アーツハンター協会としては、今後半年以内に戦力を整え強化していきます。
そして、準備が出来次第『風の街サイクロン』奪還作戦に移りたい……そう考えています。
つきましては、アーツハンターであるディアルスの力を借りたいと思います」
「はい……」
「そして、今現在アーツハンターではないルークは、この奪還作戦に参加する義務はありません。
しかし、私個人の意見を言えば、ルークの力も借りたいので嫌でなければ、是非参加して頂きたいのですが……どうですか?」
「!!」
俺は、アーツハンターじゃないからここで大人しく待っていろ……
そんな話をされるのかと思っていた。
でもマーシャルは、俺の力を……とそう言って来てくれた。
マーシャルの話をうつ向いて聞いていた俺は、顔を上げマーシャルの顔を見ながら……
「マーシャルさん……以前にも言ったのですが……俺の力が役に立つのでしたら幾らでも……」
俺の返答を聞いたマーシャルは、ニコリと笑みを浮かべていた。
そして、今後は指示があるまでヴァルディアと共に訓練励んで欲しいとマーシャルは話ししていた。
それから数日たったのだが、相変わらずディアルスは毎日のようにアーツハンター支部へと赴いていた。
作戦の準備は着実に進んでいるらしい。
ディアルスは確かにアーツハンターだけど『土の街グランディ』の人間ではない……
部外者なのになぜそこまでして?
と思いながらも、作戦結構の指示を待ちながら俺はヴァルディアと毎日訓練に参加していたのであった。
そして、アーツバスターの襲撃や作戦実行の指示もないまま、平和な毎日を『土の街グランディ』で三ヶ月程過ごす事になったのである。
三ヶ月も訓練に参加すれば、最初はついていけなかった訓練内容にも身体が慣れ始め、他のアーツハンターたちについていける事が少しずつ出来る様になって来たのである。
そんな中、わかった事が一つある。
ヴァルディアはロールライトにいた時から、十年に一人の剣の天才と呼ばれており将来は初めての、近衛兵隊長になれるのではないか?
と噂されていた。
結局ヴァルディアはロールライトから出て行き、近衛兵隊長になる事は不可能にはなりアーツハンターの道を現在は進んでいる。
アーツハンターになってもヴァルディアは、その才能を遺憾なく発揮し急成長を遂げていた。
他のアーツハンターたちもその高い潜在能力に期待し、ヴァルディアを育て上げ未来の幹部……
もしくは会長に……
と考えている者は大勢いた。
そして、ヴァルディアは人気者だった……
一方俺は、訓練について行くので精一杯で同い年としてヴァルディアと、見比べられる事が多くあった……
気にしないようにはしていたが、やはり少し嫌な気分だな……
そんなある日、ヴァルディアとまた明日とお互い話し宿屋に入ろうとした時だった。
一瞬背筋が凍りつくような不快な視線を感じたのである。
“見られている……?”
そう思いながら辺りを見渡すが誰もいなく、その視線もなくなったのを感じた。
一瞬の出来事だった為、気のせいか?
と思う事にし宿の中へと入る事にしたのであった……
◆◇◆◇◆
「みーっけたぁ〜」
「あいつか……」
「勘は鋭い見たいね……視線勘ぐられちゃった」
と会話をしているのは、ルークが寝泊まりすている宿屋から直線にして五キロ地点にある廃墟の二階の窓からであった。
遠くを見渡せる物を持ちながら、三人の男女は街に潜み誰にも見つからないようにルークを探していた。
ドランゴの命令で……
「しかし、俺とそんなに歳が変わらないようにみえますが、本当にドランゴさんの必要な奴なのですか?」
といいながら女性に質問している少年は、ルークより少し年上だった。
肌は色黒で、髪は短髪。
そして、光の加減で少し銀髪色っぽい髪の毛をしており、がっしりとし鍛え抜かれた体格をしている。
「将来絶対俺の役に立つんですって〜」
少年の問いに女性はそう返事をしていた。
女性は、もう一人の青年と同じぐらいの年で栗色の少し癖っ毛なのかクリクリとした黒い髪色をし、すらりと背の高く肉付きのいい身体をし、きっと男には困った事はないぐらい美人系の顔をしている。
「ふーん、俺たちよりもか? それもなんか癪に触るなぁ〜」
少し不機嫌君にルークを監視していた青年は、先ほどの少年と同じく短髪なのだが、寝癖なのだろうか?
それともくせ毛なのか?
それはわからないが、ところどころ跳ね上がり赤みがかった茶髪をしていた。
がっしりとした骨格は逞しい筋肉をまとい、堂々とした体つきは周りを威圧出来るかのような立派な体格をしている。
「ちょっと、変な事考えないでよね!? ドランゴさんの命令はあくまでも!!」
女性はそう言いながら、茶髪の青年に釘をさしていた。
「わかっているよ……腑に落ちない事がいくつもあるが命令はきちんと実行するさっ」
「決行は明日でいいですよね?」
少年の問いに女性は、青年を見つめ答えを待っていた。
「こんな所にいつまでもいたくないさっ、さっさと用事を済ませて帰ろうぜ」
青年の出した答えに、少年も女性も頷いていたのである。




