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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編ー序章ー
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第一話 始まりの村ロサ

 俺の住んでいるこの村は、すっごく小さな小さな村で平凡などこにでもある村だ。

 大人の男たちは、下級アーツを上級アーツに進化させる為、毎日村を出て狩りにでかけている。

 大人の女たちは、せっせと炎天下の中畑仕事をしている。

 そして、子供たちは無邪気に自分の持っているアーツを発動させながら遊んでいた。

「俺のアーツは威力が強い!」

「私の方は詠唱速度、速いわよ!」


 そんな平凡な村を俺は大っ嫌いだった。



 今日は俺の五歳の誕生日……

 父さんに、そろそろアーツが欲しいと話しした所「まだ早い!」と怒鳴られてしまった。

 怒った父さんは怒鳴りつけた後。俺の頭を殴りさっさと狩りへと出かけて行ってしまうのである。


 そんな一連の流れを見ていた母さんは、父さんに殴られ痛そうに頭を押さえている俺の姿を見ながら、クスクスと笑っているだけだった。


 アーツは 本来子供が産まれた時に、出産祝いと称して一つのアーツを渡される。

 当然、俺も三歳になる前までは普通にアーツを持っていた。

 だが、現在俺はアーツを所持する……その事自体禁止されていた。

 

 母さんの話曰く、覚えてはいないのだが三歳の時に俺のアーツは突然暴走。

 暴走……

 村の畑や家を炎で燃やし尽くしてしまったそうだ。

 なんとか鎮火村長を中心に大人たちは、俺の今後の事を話し合ったらしい。


 俺のいない所で……

 俺の意見も聞かずに勝手に……


 大人たちが出した結論は……

『今後俺がアーツを持っているとまた暴走するかもしれない』

 との事で俺はアーツを没収されてしまったのだ。


 それでも、父さんは最後まで反対してくれたらしい。

 でも村長に村から出て行くか、俺のアーツを没収するか?

 の二択を迫られて、渋々了承したと母さんは教えてくれた。


 アーツを持たない俺は、一緒に遊ぶ相手もいなかった。

 そして、いつも俺はいじめられていた。



 父さんに怒鳴られ家の中でいじけていた俺に母さんは、頭を撫でながら慰めてくれていた。

「しょうがないじゃない……ルーク」

 ヨシヨシと言いながら中々立ち直らない俺に呆れてしまい母さんは、さっさと畑仕事に行ってしまった。


「しょうがない……で片付けて欲しくないよな……」

 俺は早くアーツを持ちたいんだ!

「よし、母さんから説得するか!?」

 そう決意した俺は、母さんのいる畑へと行く事にしたのである。




 畑までは、比較的近くにある。

 俺の足で五分ぐらいで着く距離にある為、大人の足で歩けば目と鼻の先ですぐにすぐに着くと思う。


「【炎のアーツ】発動! ファイアボール!」

 ファイアボールが俺の目の前を通過していく……

 もう少し速く歩いていたら、直撃して大怪我していた所だ。

「ちっ外したか!」

 俺にファイアボールを撃ってきたのは、いじめっ子のアルファだった。

 アルファの父親は、村の中で唯一のアーツハンターである。

 その為、父親がもう使わなくなったと言って【炎のアーツ】をアルファに渡したのだ。

 調子に乗ったアルファは、アーツがない俺を、いつもいじめてくる。


「アルファ………

 いいアーツ持っていても、それを使いこなせなければ持っていても意味ないんじゃないの?」


 嫌味を言ってみた。


 “俺だってアーツがあれば……アルファになんか負けないぞ!”


 といつも思っていたから……遂、売られた喧嘩を買ってしまった。

 当然の如く、アルファは怒りなにやら大きな発動呪文を唱え出していた。

 その発動呪文中に俺は猛ダッシュで、アルファから逃げ出す。


「ルーク!! 覚えていろよ〜!」

 と怒ったアルファの声が、聞こえてきた。




 ◆◇◆◇◆



 畑に着くと、大人の女たちは役割分担をしながらアーツを発動し畑作業を行っていた。

【土のアーツ】で畑を興し、【水のアーツ】で一気に水やりをしたり、【風のアーツ】で風を起こしたりし、出来た作物を収穫していた。


 母さんは【水のアーツ】を使いながら畑に、水やり中だった。

 近づいていく俺に母さんは気づいてくれた。

「あら、ルークどうしたの?」

「来る途中、アルファに絡まれた……

 ねぇ、母さん。父さんはなぜ、俺にアーツを持たせてくれないの?

 他のみんなは持っているのに、なんで俺だけ!」

 と少し興奮君に母さんに言ってしまった。


 母さんは少し困った顔をしてしまったが、俺に近づき力強く抱きしめてくれた。

「もう少し……ルーク、もう少しだから我慢して」

「……もう少し?」

 俺の質問に母さんは答えてはくれず、少しだけ困った顔だをしていた。




 俺は、アルファに見つかったらまたいじめられると思い、母さんの水やりを終わるのを待つ事にした。

 そして母さんと俺は、一緒に家へと帰ったのである。


 しばらくすると父が興奮して帰ってきた。

「エリサ! 見てくれ! ついにやったぞ!」

「あら、間に合ったのね?」

 父さんはアーツを母さんに見せていた。

「あぁ……遂に【最上アーツ】になったぞ! これで……」

 父さんはすごく喜んでいた……


 そして、父さんは俺の方へと振り向き、【最上アーツ】を投げて寄こしてきたのである。

「……ルーク、誕生日プレゼントだ」


 受け取った【最上アーツ】は赤い宝石のように輝いていた。

 そして、その真ん中には【火炎】と文字が、浮かび上がっていた。

 綺麗だ……

「えっ? えぇぇぇ?」

「なんだ? 嬉しくないのか?」

「いゃ……嬉しいけど……」


「あっありがとう……父さん……」

「おうっ!」

「でも………なんでなの?」

「お前が、なぜアーツを持ってはいけないのか……俺は説明したよな?」


 コクンッ


 と、頷くと父さんは話しの続きをはじめた。

「ルークは体質的に、アーツを暴走させる性質を持っているらしい……

 もし再び暴走を起こすような事になれば、今度はお前が死んでしまう可能性があった。

 ならば、俺が暴走しない段階までアーツを進化させてやればいい。

 お前のアーツを俺が鍛え【最上アーツ】になった時暁には……

 ルークにもアーツを持つ事を許可を……と村長に頼み込んでおいた……

【最上アーツ】になれば暴走する事もないしな」


 父さんは嬉しそうに、そう話ししてくれた。

 すっごく嬉しかった…

 涙が止まらなかった。


 その後、母さんにご飯だよ!

 と呼びに来るまで俺は、父さんと外でアーツの使い方等色々教えてもらっていた。

 美味しい晩ご飯、そして念願のアーツを手に入れた俺は興奮し中々寝付けないでいた。

 明日はアルファに絶対見せびらかしてやろうとか、どんな火炎が出てくるんだろう、明日になったらあれやろう、これやろう……

 などと考えながら、いつの間にかアーツを抱きしめながら俺は寝てしまっていたらしい。




 ◆◇◆◇◆



 真夜中の出来事だった。

「ルーク起きろ!」

 熟睡していた俺を父さんは、突然無理やり起こしてきた。

 朝なのだろうか?

 いや、外はまだ暗い……


 父さんは俺の寝ていたベッドを、無理矢理動かし始め床にあった隠し扉を開けたのだ。


 “こんな所に隠し扉……あったんだ……”


「いいか、ルークよく聞け! 今から戦闘になる」

「えっ!?」

「でもお前はなにも心配する事はない。静かになるまで動かずここにいればいい」


「絶対に出るな、いいな!」

「あっ母さんは? それに父さんからもらったアーツは?」

「なにも心配するな」

 とそれだけ言うと父さんは扉を閉め、ベッドの位置を元に戻し俺を隠し部屋に置いたままどこかへ行ってしまったのだ。

 扉の上にはベットが置いてある為、俺の力なきか弱い力では押してもビクともする事はなかった。


 遠くから、複数の人の足音や馬車の音が聞こえてくる。

「俺達はアーツバスターだ! この村にあるアーツ全て差し出せ〜!!」

「それだけはご勘弁を、我々が生活できませぬ」

「だまれ!!」

 とここまでは聞こえたのだが、それ以降言葉はなくなっていく。

 剣の音やアーツ発動呪文などの声が聞こえ、それも次第になにも聞こえなくなっていく。

「あった、最上アーツの一つ【火炎のアーツ】だ。 よし後は任せた、いつも通りにやれ」

 そんな会話が聞こえてきた。


 “【火炎のアーツ】は父さんが、俺の為にくれたものだ。

 父さんや母さん……嫌いなアルファや村のみんなは無事なんだろうか?”


 と気にはなったが、子供の俺の力ではベッドを動かす事はやはり不可能であった。




 下の方から冷たい風を、感じ身震いをしてしまった。

「こんな階段あったっけ………?」

 後ろを振り向くと階段がある事に気がつき、外に出る事が出来るかもしれない。

 そう思いながら俺は、恐る恐る階段を降りてみる事にした。

 階段を降りた先には、人一人入れるかどうかわからないぐらいの、小さな部屋が存在していた。


 部屋の真ん中には立派な台があり、台の上には二つのアーツが納められていた。

 見た事もないとても綺麗なアーツだった。

 俺はドキドキしながら、二つのアーツを触ってみた。

 ピカーと光り、辺りが真っ白になっていく………


『我は黒のアーツ』

『我は白のアーツ』

『汝、我の力を求めし者か?

 汝、我を受けいれる者か?』

『汝が望むのなら、我らは汝につき従おい者なり……』


 光と共に不思議な声も消え去っていた。

「今のは一体………?」

 台座の上に納められていたはずの、アーツがなくなっていた。


 そして、俺の両手には手袋を装着され左手の手袋の真ん中には【黒】、右手の手袋の真ん中には【白】と刻まれ、見た事もないアーツを手にしていた。

 外そうと引っ張ってみたり、叩いて見たりしたが外れる事はなかった。

 諦めた俺は、その場て部屋の全体を見渡して見たが、やはりドアはなく外に出れそうにもなかった。


 不思議な部屋から出て、階段を登っていく。

 そして、もう一度ドアを押してみるが、やはりベッドの重みでピクリとも動く事はなかった。


「くっそ〜!いい加減動け〜!」

 力いっぱい押すと、突然左手に装着していた【黒】が光だした。


 バンッ!!


 と音と共に、ドアとベッドを天井まで吹き飛ばしていた。

「!?」


「すげぇ〜」


 思わず関心してしまう……。


 その直後、急激な眠気が俺を襲いかってきた。

「うっ……」


 ふらつき階段から足を踏み外した俺は、階段下まで転がり落ちてしまう。

「いてぇ〜」


 背中を強打した俺の意識は、そこで途切れたのであった。






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