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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ーパラケラルララレ学校ー
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第十七話 セルビアの過去

 ロールライトの街外れにある、海が見える場所ある。

 その崖の上には一つのお墓があり、そこにセルビアとギレッドはいた。


「わたくしは、ただ……救いたかったのです………師匠………」

 強い海風が吹く中、セルビアは泣きながらギレッド爺さんにそう言った。




 ◆◇◆◇◆



 ヴィンランド領を治める王アッシュ・フォン・タルト。


 アッシュとセルビアの母とは、周囲の反対を押し切っての大恋愛の末の結婚だった。

 なぜ反対なのか、それはセルビアの母の血筋である。

 正室になる者はタルト家代々から続く、ヴァルディアを納める義務があり、その妃となる者は貴族で代々仕える重臣の子供か近隣諸国の王の子供と決まっていた。


 しかしアッシュが一目で恋に落ちた相手セルビアの母は、下級貴族の産まれで5人兄妹の末っ子である。

 二人の前に、大きな血筋という壁が立ちふさがったのであった。


 セルビアの母はアッシュに

「貴方と一緒にいられるのでしたら、側室で構いませんわ」

 と言ったが、アッシュはそれに猛反対。

 血筋など関係ないと周囲の人間を認めさせるまで、セルビアの母に全ての事を伝えた。

 そしてセルビアの母もアッシュの報いに応えるべく、努力を惜しまなかった。

 しかしそれでも、周囲の人間が認める事はなかった。


 途方にくれていた、アッシュに朗報がもたらされた。

 それはセルビアの母の妊娠である。

 アッシュは大層喜び、重臣達も渋々認める形になり、二人は盛大な結婚式を挙げたのであった。


 しかし、幸せはそう長く続かなかった……

 産まれてきたのが男ではなく女だとわかると、アッシュは途端に興味はなくなり、それからというもの側室にどんどん子供を産ませるようになっていった。


 だが、側室達から生まれてくる子供も全て女であった。

 アッシュはもう一度、セルビアの母に子供産ませ、誕生したのは待望の男だったが、まもなく死亡したのである。


 次第に周囲の重臣達は、必然的にセルビアはアッシュが進めるままお見合いをし、子供を産む、そしてヴィンランド領は安泰と考えていた。

 その為セルビアは、幼い頃から厳しい英才教育を受け育っていた。



 もしかしら、重臣の中から王族後継者になれるかも?

 と期待しセルビアやアッシュに媚を売る者が、後を立たなかった。

 しかしそれはセルビアにとって、窮屈な毎日に過ぎなかった。



 七歳になったある日、セルビアはこっそりと城を抜け出しガーゼベルトの街へと繰り出していた。

 その中で、一番興味があったのは【アーツ】だった。

 そしてそこで始めて、ギレッド爺さんにセルビアは出会うことになる。


 セルビアはたちまちギレッド爺さんに興味を示し弟子入りをお願いしていたが、幾度となく断り続けられていた。


 諦めかけていた時、正室であるセルビアの母は別邸に旅行に行きそのまま帰らぬ人となり、セルビアは唯一の心の拠り所を永遠にを失ってしまうのであった。


 そして、母の死をアッシュはなにも答えぬまま、葬式にさえ参加する事はなかった。

 そんな父をセルビアは見限り、夜中にこっそりと身一つでギレッド爺さんの元へ旅立ったのである。


 セルビアの決意を受け止めたギレッド爺さんは【焔のアーツ】を渡し、それ以来セルビアはタルトの名を名乗ることなく、セルビアとして生きてきた。





 それからセルビアは生き生きとし始めた。

 ギレッド爺さんと共にいろんな所を旅しながら、みるみる【焔のアーツ】を使いこなせるようになり十二歳には、最年少のアーツハンターとなっていった。


 旅の途中、2歳年上のベイウルフと出会い、なんでも話せる中の良い兄妹になるのに時間は必要なかった。




【アーツ第一次戦争】が勃発したのは、セルビアが十五歳になった時だった。

 セルビアとベイウルフはギレッド爺さんの、反対を押し切り参加。

 ギレッド爺さんと別れる事にはなかったが、新たにマーシャル、アードそしてルークの父アルベルトとの出会いがセルビアを更に成長させていった。


【アーツ第一次戦争】は三年程続き、アーツハンターの勝利で終結されたと歴史書には記載されているが、実際双方の被害は甚大であったと伝えられている。


 そんな中、仲良くなったマーシャルはアーツハンター協会幹部への昇進。

 アードやアルベルトにもその話が持ち上がったが、まだ旅をしたいとの事で断っていた。


 そしてセルビアにも話はきていた……

 十八歳にして、ロールライトのアーツハンターギルドの支部長への昇進。

 現、ロールライトの支部長は七十五歳と言う高齢で新たな、後任を探していた。

 その後任にセルビアを……という話が持ち上がったのである。


 しかしセルビアはその話は断ったのである。

 ベイウルフに何故?と問われた時、セルビアはそっとベイウルフの手を取りお腹に手を当て

「ここに命があるわ」


 ベイウルフは驚き喜んだ。

 しかし、どうしても支部長に就任して欲しいと話を断り切れなかったセルビアは、五年待って欲しい事をお願いし、ロールライトに住むと言う条件で受け入れてもらう事にした。



 ベイウルフとの間には、男の子シュラーゼンは産まれてきた。

 セルビアは子育てをし、ベイウルフはアーツハンターとして依頼をこなしつつ三人で幸せな毎日を送っていた。


 シュラーゼンが五歳になると、セルビアは約束通りロールライトのアーツハンターギルド支部長に就任。

 慣れない支部長の仕事は毎日が忙しく、シュラーゼンに構う時間はなくなっていた。

 そして、次第にベイウルフの不満は募り喧嘩の絶えない毎日が続く……

 いつしかベイウルフは家に帰らない日々が続いて行った。


 シュラーゼンはセルビアに気を使い、一人でも寂しくないと言ってはいたが本当は凄く寂しかった。

 友達がいるわけでもなく、毎日家で過ごしていたシュラーゼンは、ある日セルビアに会いたくアーツハンターギルドへと向かうのである。


 アーツハンターギルドへ向かうには、遠回りをして商店街を通る道と、近道の貴族街の二つのルートがあり、なにも知らないシュラーゼンは貴族街へと足を踏み入れたのであった。


 瞬く間にシュラーゼンは警備兵に捕まり、無残にも処刑されてしまうのであった。


 それをセルビアが知ったのは久しぶりに帰った我が家での事である。

 動かない息子を抱き寄せながら、セルビアは泣きじゃくり後悔しか残ってはいなかった。

 タイミング悪くベイウルフが帰還しその事実を知らされ、ベイウルフはセルビアに罵声を浴びせ出て行き、二度とセルビアの前に現れる事はなかった。





 数年が立ちセルビア一人では仕事が追いつかないとの事で、新たに副支部長として就任したアルディスとの出会った。

 アルベルトと一緒に旅をしていたギレッド爺さんにも再会し、セルビアはギレッド爺さんにベイウルフや子供の事を報告する事が出来た。


 暫くするとアルベルトはアーツハンターを辞め、小さな村での生活をするといいロールライトから旅立ったが、周りの皆からのフォローもありセルビアは徐々に落ち着きを、取り戻していた。


 30歳すぎた頃、シュラーゼンと同い年のルークと出会う事になったセルビアは、息子の事を再び思い出すようになった。

 あの時、出来なかった事をルークにしてあげたい。

 そんな思いから、ルークと一緒に住むようになったが、ルークの姿を見ているとセルビアは度々、息子の事をやはり思い出していた。


 しかしそれは表には出さず、心の片隅に蓋をしていた。

 だが今回のヴァルディアの事件で、セルビアの蓋は再び無理矢理開け放たれてしまった。




 ◆◇◆◇◆



 ギレッド爺さんは泣き止まないセルビアの側に座る。

「今は気が済むまで泣け、そして泣き止んだらまた蓋をしろ………セルビア………」

 そういい黙ったままセルビアが、落ち着くまで側を離れなかった。



 暫くしセルビアは涙を吹きながら、ギレッド爺さんに話しかける。

「師匠もう大丈夫ですわ!ありがとうございます♪」

「儂の前でまで無理をするな………」

 セルビアの気持ちは全てギレッド爺さんにお見通しだった。

 また泣き出してしまう、セルビアであった。

「ううっ………私は………救えたのかしら………」


 ギレッド爺さんはセルビアの背中を撫でながら言った。

「少なくとも、ヴァルディアは救えただろ………

 ヴァルディアは、貴族連中にとって、邪魔な存在だからな。

 そして、マーシャルの所に行かせたのは儂は正解だったと思うぞ。

 もしかしたら、ルークが訓練施設に行く時ばったりと再会したら、それはそれで面白いだろうな………」

「………ひっく………」


「セルビア、未来はわからないんだ………

 だから今はルークとヴァルディアが再会出来るのを、楽しみに待つ事にしないか?」

「はい……師匠………」


 セルビアは頷き、セルビア・フォン・タルトの名と共に、再び自分の過去に蓋を閉じたのであった。






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