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Arts hunter   作者: kiruhi
少年編 ーパラケラルララレ学校ー
16/118

第十五話 セルビア暴走!

 俺は6歳になった。

 しかし、俺の誕生日を祝ってくれる父さんも母さんもういない。


 今はセルビアの家に居候しているが、誕生日を祝ってもらおうとは俺は一度も思った事はない。

 リーサやヴァルディアともあの合宿を通して友達にはなれたが、やはり期待はしていない。


 叶わない願いだとわかってはいたが、やはり父さんや母さんに俺は誕生日を祝ってもらいたい。

「はぁ………」

 気分が重い……。


 今は二学年に進級する前の休み期間中で、明日の朝になれば新学期が始まる。

 準備しなければならない事が、沢山あるのに俺の身体は動かなかった。




 ◆◇◆◇◆



 一方セルビアは、ルークにかまっている状態ではなかった。

 ルークが合宿に出発する前日、領主の息子が攫われたという事件が勃発。

 セルビアはすぐに捜索隊を結成し迅速な対応を行っていた。

 しかし領主の息子は今だに見つからなかった。

 そして犯人から何も連絡がないまま、途方に暮れ頭を抱えていた。


「セルビア、ここ数日まったく休んでいませんよ。

 ここは俺に任せて少し休んで下さい」

 心配したアルディスは休息を進めるが、セルビアはそれを受け入れる事はなかった。

「ありがとう、アルディスちゃん。私は大丈夫よ。

 この件が解決しない限り休めないわ……」

「でも……」


 アルディスは言いかけた。

 しかし、アルディスの言葉は執務室のドアが開いた事で遮られてしまったのである。

「支部長!領主様が来ました!」


 領主のファーン・フォン・ロールライト

 代々ロールライトの街を統治している、この街で一番偉い貴族である。

 そしてその一人息子ゼット、未来の領主が何者かに誘拐されたのであった。


「セルビア殿、息子ゼットはまだ見つからないのかね?」

「申し訳御座いません。

 ファーン卿、捜索隊から今だ何も連絡はありません」

「アーツハンターというのも、存外役に立たないのだな。

 セルビア殿、息子がこれ以上みつからないという事になれば、アーツバスターに依頼しますぞ」

「なっ!!俺達だって一生懸命捜しているのです!

 もう少し信頼していただたいです」

「アルディス殿、あなた方は事の重大性をまったく理解していない。

 未来の領主が誘拐されたのですぞ!もっと真剣にやってもらいたい……

 もうなにも手かがりがないまま10日以上たっているのですぞ!!」

「すみません、ファーン卿。

 捜索範囲を広げておりますので、もう暫くお待ち下さいませ」

「わかった。だが、明日までだ!

 それ以上は待てん、それ以降はアーツバスターに依頼する。

 そしてアーツバスターが解決した場合、あんた達アーツハンターにはこの街から出て行ってもらう」

「なっ!!!

 それは、このロールライトの街をアーツバスターの根城にするというのですか!!」

「そうだ……アルディス殿……そうならんよう頑張ってくれ」

 ファーンはそう言って執務室から出て行ったのである。


 セルビアは深いため息をついた。

「アルディスちゃん、何時でも出れる準備はしておいてね」

「出るってどこに………」

(わたくし)は捜索隊の人たちを信じますわ……」





 事件が動いたのは明け方の事だった。

「支部長!!!発見しました!!」

「!!」

「住民街の外れの小屋に領主の息子を、発見しました!」

「敵は?」

「覆面をした者を五名程確認致しました!」

「わかりました!すぐに向かいます」

「はっ!!」




 セルビア達は誘拐犯に気がつかれないように、小屋へと近付いた。

 そして、捜索隊は小屋の周りに待機し誘拐犯が逃走しないように対策をし、セルビアとアルディスは突撃を開始した。

「なっなんだお前達!?」

 言葉を発せずに、セルビアは【焔のアーツ】を発動し、アルディスの【疾風のアーツ】の風に焔の炎が一瞬にして火の海へと変えていった。

 二酸化炭素中毒に陥った誘拐犯は次々と倒れ、誰も動けなくなったのを見計らいセルビアは【焔のアーツ】の発動を停止したのである。

 動けなくなった誘拐犯は、すぐさま捜索隊がアーツハンターギルドへと連行して行った。


 アルディスは、領主の息子を探し出し怪我一つない状態で救出に成功し、アーツハンターギルドへと戻ったのであった。


 報告を受けたファーンはすぐに、アーツハンターギルドへと駆け付けて来た。

「セルビア殿ありがとう!!これからもよろしく頼むよ!」

「それでは、ファーン卿。先程おっしゃていました、アーツバスターの件はいかがするのですか?」

「彼等とは契約しない、これまで通りアーツハンターにこの街は任せる事にする」

 とセルビアの手を握り感謝し、笑顔でファーンとゼットは帰って行った。




 その後もセルビアは眠る事は出来なかった。

 今度は誘拐犯の尋問である。

 アルディスは後の処理は自分に任せて休むよう進言したのだが、セルビアは受け入れる事はなかった。

 セルビア自ら誘拐犯に対して尋問を始めていた。

 しかし誘拐犯はなに一つ吐く事はなかった。


「はぁ〜私、女だから舐められているのかしら?」

「えっ?」

「だってあの誘拐犯達何一つしゃべらないのですもの……

 アルディスちゃんが脅したらきっとすぐに言うんだわ!」

「セルビア、大分疲れていますよ………」

「はぁ〜」

「やはり休んだ方が………」

「駄目……今休んだらしばらく起きない自信あるもの。

 全てを解決して、ルークちゃんをいじめてスッキリしてから寝たいわ……

 そういえばルークちゃんの合宿終わったかしら……」

「えぇ………合宿は終わって家に帰ってきているらしいですよ」

「本当!?」

「はい、後もう一つ報告なんですが……」



 誘拐犯の事を連絡してきたのは、ヴァルディアの父だった。

 ヴァルディアの話を最初は聞き流していた父だったが、やはり不信に思い小屋に赴いたらしい。

 その小屋で領主の息子ゼットと誘拐犯を目撃した父は、すぐにアーツハンターへと連絡をいれていた。

 捜索隊は直ちに確認し、その後セルビアに報告が上がったのであった。


「へぇ〜偶然って怖いわね。

 さてルークちゃんに会う為にも、もう一踏ん張りしますわ」



 その後セルビアは、誘拐犯に尋問を繰り返していた。


 誘拐犯の話によれば……

 ある日、黒いローブを着た男から金儲けの話をされ、領主の息子を誘拐ししばらく隠れているだけでいいと言われたとの事だった。

 それ以上の追求しても知らないとの事で尋問は諦め、セルビアは憲兵隊に誘拐犯を引き渡したのであった。


 アーツハンター協会に報告書を書いているセルビアに、アルディスは書類を見ながら話しかけて来た。

「しかし、おかしな話ですよね」

「?」

「だって誘拐して、しばらく隠れていればいいって……

 普通身代金とか要求しますよね?」

「確かにそうよね………」


 セルビアは、考えた。

 この誘拐の真の目的は何だったのだろう………

 痺れを切らした領主がアーツバスターに依頼する………

 そしてアーツバスターが成功したら、私達は出て行け………


 ひょっとして黒幕はアーツバスターで、私達の評判を落として追い出したかった………


 “まさかね………”


 セルビアは独自で考えた結論を、報告書に書く事はなく自分の胸の中に仕舞い込み、報告書の封を閉じたのであった。


「ふぅ、これでひと段落かしら?」

「そうですね……後は、俺一人でも出来ますしね」

「じゃ私は帰りますわ。

 ルークちゃんどれだけ強くなったのか、楽しみですわ!」

「あっセルビア、忘れてはいませんか?」

「んっ何が?」

「今日はルークの………」




 ◆◇◆◇◆



「ただいま〜」

 セルビアの声が聞こえてきた。

「あっおかえりなさい、セルビアさん」

「ルークちゃんもおかえり♪」


 俺とセルビアは、暖炉のある部屋へと行き、くつろぎながら話しを始めた。

「それで、合宿はどうでした?」

 俺はドラゴンが出てきて死にかけた事や、ベイウルフに出会った事等をセルビアに合宿での出来事を話しした。

「ベイウルフさんもギレッド先生の教え子さんなんですね。

 セルビアさんと同期と言っていましたよ。

 すっごく恰好いいアーツハンターでした!!」

「ルークちゃん、その名前二度と言わないで……」

「えっ………?」


 ベイウルフの名前を出した途端、セルビアの様子が突然おかしくなった。

 セルビアは震えだし、冷静さを保とうとしていた。

 だが、次第にそれも抑える事が出来なくなってきている感じがしてきた。

「それよりも、ルークちゃんはどれだけ強くなったのかしら?」

「えっ?」

 いきなりセルビアは、俺の顔を掴みながら窓を割り外へと放り出した。


「セッセルビアさん?」

 俺の声はセルビアに届く事はなかった。

 黄色のクリクリッのくせ毛は、真っ赤なクリクリの髪の毛に変わっていく。

 そして、【焔のアーツ】が容赦無く俺に襲いかかってきた。

「ちょ!!」

 セルビアの攻撃を、俺はなにも見えなかった。

 焔の矢は俺を傷つけながら弱らせていき、気がつけば辺りは焔の海だった。

 その焔の火は徐々に俺を焼き尽くそうと、範囲を狭めてくる。


 上に飛び上がってみると、待ってましたかの如くセルビアは、俺を焔の海へと叩きつける。

「うぐっ!」


 “どうせ焔に焼かれるくらいなら………”


 俺は焔の海に飛び込み、脱出しようと考え突撃した。

 しかし、それもセルビアに読まれていた。

 蹴飛ばされ、また元の場所に戻されるのであった。

「くっくそ………」

 逃げられない……

 熱い……

 このままでは焼け死ぬのを待つだけだった。


 “考えろ!どうすればいいか……”


『ルークはなんでも先に物事を考えすぎるな……だから剣に迷いが出る……』

 咄嗟にギレッド爺さんの言葉を思い出した。


 “考え過ぎている……”


 俺は『成長の剣』を思いっきり振り上げ、地面に叩きつけた。

 その勢いは風圧となり、焔の炎を消しさった。

「はぁはぁ」

 しかし、焔の海はすぐに燃え出し俺に迫ってくる。

「くっくそ……」

 酸素がうすくなり、息ができなくなってきた…


 “くっ苦しい……”


「セッセルビアさ……ん………」

 セルビアはずっと俺を見つめたまま動かなかった。


 もう一度空に飛び上がり、空気を補給する。

「ぷっぷはぁ!」


 セルビアもまた焔の海へと叩きつけようと飛び上がり、俺を蹴り飛ばした瞬間!

 俺はセルビアの服を掴み一緒に焔の海へと戻った。

「はぁはぁ」

「甘いよ……私は【焔のアーツ】の使い手、これくらいの焔なんともないわよ」


 “むしろ逃げ場がなくなりピンチになってしまったかも”


 容赦無くセルビアは俺を蹴飛ばしながら近づいてくる。

「うっ!!」

 転がり回る俺に、セルビアは冷酷に容赦はなかった。

「そろそろ終わりかしら?」

 俺はセルビアの足の裾を、掴みながら見上げる。

「もうやめましょ?」


 ドスンッ!


「!!」

 セルビアは思いっきり俺の背中を蹴り、苦しむ俺を冷たい目で見下ろし。

「さよなら、ルーク」

 セルビアは空高く飛び上がっていった。

「焔大火球!」

「!!!」


 セルビアは焔大火球を俺めがけて投げてきた。


 “本当に俺を殺すつもりなんだ……”


 逃げる事も出来ない、身体も動かない……

 そんな状態に俺はもう諦めていた。


 焔大火球が当たる寸前、焔の海からアルディスは俺を救いだしてくれた。

「げほっげほっ」

「ゆっくり息を吸え、ルーク」

「はぁはぁ」


 一呼吸終わった俺にアルディスは、

「お前、セルビアに何をした?」

「えっ?何もしていませんよ……」

「あぁなったら、俺にも止められん!暴走状態だ!」

「えっえぇぇぇ!」



「俺のアーツは、本来セルビアの手助けをする為のアーツだ。鎮める事は出来ん」

「じゃどうすれば……」

 アルディスはセルビアをじっと見つめ……

「なにかきっかけがあったはずだ、ルーク思い出せ」

「えっ?」


「焔連弾!」

 焔の矢が複数、俺たちに向け発射される。

 アルディスは俺を掴みながらよけるのに精一杯だった。

 そして、よけそこなった焔の矢が俺たちを直撃した。

「つぅ!!」

「アルディスさん!!」

 アルディスは俺を庇って盾になってくれた。

「ルークもう一度言うぞ、セルビアはなにかのきっかけで暴走した。

 それはルークに原因があると思う。何を言った?」

「えっと、合宿でドラゴンが出てきて死にかけた事や、ベイウルフって人に出会った事を話しましたよ?」

「!!ベイウルフに会ったのか?」

「えっえぇ………」

「それが原因だ!」

「えっ!?」


「セルビアにとってベイウルフの名は禁句だ!」


 何日も寝ていない、疲労も最大限に溜まっている状態での禁句……セルビアが暴走するのも頷けるな……


「ルーク、これから隙をついてお前をセルビアの所に連れていく、そしてなにがなんでも謝れ!」

「えっ謝るって……」

「このままじゃ俺たち二人共、セルビアに殺されるぞ!」

「わっわかりました。やってみます!!」

 アルディスは俺の襟元を引っ張りながら、セルビアの攻撃をよけている。

「焔大火球!」

 庭を消し飛びそうなぐらい、でかい焔大火球が俺たちに襲いかかる。

 それはアルディスは飛び上がって回避し俺をセルビアの所へと投げつけた。


 2.3回転ぐらいして、目の前にはセルビアが俺を見下ろしながら、焔の球を作り出していた

 慌ててセルビアに抱きつきながら、一生懸命謝った。

「セッセルビアさん!ごめんなさい!!」

「離せ」

 セルビアは俺を離そうと服を引っ張るが、セルビアしがみつき離されないようにするので精一杯だった。

「ごめんなさい!セルビアさん!本当にごめんなさい!!」

「うるさい……」

 抱きついて離れない俺に、セルビアは焔の球を背中にぶつけてきた。

「あっ!!!」


「うぅっ………」

 力が抜けてきた……

 段々セルビアを掴んでいる事が出来なくなり、ズルズルとその場に倒れこみそうになった。

「セッセルビアさん、ごっごめんなさい……

 はぁはぁ……今日は………おっ……はぁはぁ……」

 目も開けていられなくなってきた……最後の力を振り絞り叫んだ


「俺の……誕生日なんです!!セルビアさんよければ一緒にお祝いして下さい!!!」


 その瞬間セルビアは止まった。

「!?セルビアさん??」

「ルッルークちゃんの……誕生日…………」

「はっはい!そうです!!」

「誕生日…………」



 セルビアの真っ赤に染まっていた髪の毛は、黄色のクリクリッのくせ毛に徐々に戻って行った。

「はぁはぁ………セルビア…さん?」

 セルビアは俺をぎゅっと抱きしめながら。

「ごめんね、ルークちゃん。

 怖い思いさせて、ごめんね……」


 セルビアの暴走は収まった。

 それを遠目で見ていたアルディスは傷ついた身体を押さえながら、家の状況を確認していた。

「ギレッド爺さんが来襲した時より、この庭の被害は甚大だな」

 ボソリと呟いていた。



 そして俺は、もう二度とセルビアの前ではベイウルフの名前は、言わないと心に誓ったのである。




 傷の手当をしてもらった俺は、セルビアの部屋の前に立ちドアをノックした。


 コンコン……


「ルークです」

 セルビアのどうぞとの声に俺はセルビアの部屋へと入っていく。

「傷のぐあいはどう?ルークちゃん?」

「あっえっともう大丈夫です……」

「そう、良かったわ……」

 まだ、少しセルビアは俺に対して余所余所しかった。

「あの………俺………」

「ルークちゃん、ごめんね。痛かったでしょ」


 “痛かったと言うより、めっちゃくっちゃ怖かった……”

 と答えたかったが、俺は首を横に振った。

「大丈夫です」

 と虚勢を張ってしまった。



 セルビアは俺に包装紙で包まれた物を渡してきた。

「こっ、これは?」

「ルークちゃんの誕生日プレゼント」

「!!」

「開けてみて♪」


 開けてみるとそこには、赤と黒でコーディネートされた服とズボン、そしてマントがあった。

「かっ恰好いい………」

「その服はね、多少の炎にも強いし、防御力もそこそこあるのよ」

「おぉ〜」

「その服は着てくれるかしら?」

「えっ?」

「だってルークちゃん、私が用意した服全然着てくれないし、いっつも同じ服なんですもの……」


 セルビアは確かに入学する前に、服を買ってくれた。

 でも、どれもピンクとか、黄色とか、ちょっと乙女チックがあって俺は着る事をためらっていた。

「着ます!この服気に入りました!!」

「そう、ならいいんだけど♪」

「セルビアさんありがとうございます……俺……俺………」


 涙が出た……


「うっ……うっ………」

「ルークちゃん?」

「俺には…もう誕生日を祝ってくれる人はいないと思っていたから………だから………」

 俺はそれ以上、何も言えずセルビアもそれを察したのか、俺を抱きしめながら頭を撫でてくれた。

「ルークちゃんのご両親は亡くなってしまったけど、私はルークちゃんを息子のように思っているわよ」

「セッセルビアさん……」

「いつか、私の本当の息子になってね♪」


 嬉しかった。

 涙が止まらず、俺はずっと泣いていた。

 俺が泣き止むまでセルビアはずっと俺を抱きしめていてくれた。



 泣きつかれたのか、俺はいつの間にかセルビアの胸の中で寝てしまっていた。

 そっとセルビアは俺をベットまで運んでくれた。

「おやすみ…ルークちゃん、良い夢を……」

 と言って俺のおでこに軽くキスしてきた。



 俺の部屋から出てきたセルビアを待っていたのは、アルディスだった。

「アッアルディスちゃんいたの?」

「えぇ、なんか妬けますね………」

「あら?どうしてかしら?」

「とぼけないで下さい、俺の気持ち知っているくせに………」

「あっわかった!

 アルディスちゃん、ルークちゃんのお兄さんになりたいの?」

 アルディスはセルビアの天然さにずるっと転けそうになった。


「違いますよ………」

 アルディスは、セルビアにそっと近づき腰に手を回しながら、セルビアの口にキスをしてきた。

「!!!」


「俺はずっとあなたの事だけ見ていました……

 でもあなたは俺を見てはくれない……」

「私は………アルディスちゃんの事………

 弟としてしか見ていませんわ………」

「はぁ〜〜そうでしょうね………」

 アルディスは深いため息をつき、セルビアの前から消えた。

「アルディスちゃん………」




 ◆◇◆◇◆



 太陽が昇り朝日の光に、俺は眼が覚めた。

「んっ………」


 “いつの間にベットに?”


 俺はセルビアからもらった服を早速着てみた。

 服を着た俺は、リビングの方へと降りていく。


 リビングには既に、セルビアとアルディスが食事をしていた。

「あら?ルークちゃんよく似合っているわ」

「あっありがとうございます」

「………ルーク、昨日誕生日だったんだよな?」

「あっはい」

 アルディスは立ち上がり、俺の目の前に見上げるぐらい大量の本を渡してきた。

「こっこれは?」

「一日遅れたが俺からの誕生日プレゼントだ。

 この本は格闘技、剣闘技、魔術について書かれている。

 アーツ以外にもお前はこれから色んな知識が必要になってくんだろう?

 その技が使えなくても、知識があるのとないのでは違ってくる」

「はっはい……ありがとうございます!アルディスさん!」





「では行ってきます」

「はいっ行ってらっしゃい」

「あの……セルビアさん、昨日の話しなんですけど……」

「?」

「俺……凄く嬉しかったです………でも、もう少しだけ時間を下さい……」

「わかりましたわ、気長に待っていますわ」


 俺の後ろ姿を見ながら、アルディスはセルビアに語りかける。

「俺も貴方の心から彼がいなくなるのを気長に待ちますよ……

 昨日の事はお忘れ下さい、忘れて欲しくないけど………」

「アルディスちゃん……どっちよ……」

 セルビアはクスクスと笑いながら答えていた。



 俺は、学校へと向かった。

 なぜか俺の心はスッキリとしていた。

 空を見上げれは、空が気持ちよく晴れ渡り、今の俺の気持ちを映し出しているかのような快晴だった。





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