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Arts hunter   作者: kiruhi
青年編 ー封印解除の刻ー
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第百十四話 玄武との再会と宿敵の秘密

 扉を開けた先には何もない大きな部屋に、中央には台座みたいな物が置かれていた。

「ここは……?」

 覚えているような覚えていないような、記憶の断片に曇りかがり上手く思い出せないでいた。


「……なぁ〜んか見に覚えがあるんだよなぁ」

 中央に置かれている台座へと近づいて行くと、台座には甲羅に蛇を巻きつかせた、大きな大きなデカイ山亀が目を閉じて眠っていたのである。




『久しいな……黒と白のアーツを持つ者。確か……ルークと言ったな……』

 その声は直接、俺の頭に響きわたってきた。

「えっ……?」


 “久しいなと言われても困る。この場所に来たのは初めてだと思うのだが……”


 次の瞬間、俺の脳裏に直接映像が映し出されていた。

 それは、山亀に出会った時の記憶であり、何故俺が忘れていたのかも理解する事が出来た。


 目の前にいる山亀は玄武と言い、このヴィンランド領を守る守護聖霊である。

 そして、あの時アーツの発動を許されなかった俺は『アーツブレイカー』と言う腕輪をし、強制的に黒と白のアーツの発動を抑え込んでいた。だが、その強大な力にアーツブレイカーでは封印しきれず、効力は次第に薄れ始め抑えきれずにいた。

 溜まりに溜まった力は発動と同時に世界を消し去るほどの威力を秘めており、いつ暴走するかわからない状態だったのを、玄武が真の核なる部分の封印を施してくれたのだ。

 結果俺は、アーツブレイカーが解かれた後も暴走する事なく、今まで黒と白のアーツを発動出来ていた。


 しかし、これで合点が行く部分も増えた。


 闇の住民ヴィンランドと二度目に再会した時、玄武と言う物に真の核なる部分を封印され絶対に暴走は起きない。その変わりに、威力は7割しか発揮出来ない。と言っていた事を思い出した。

 そして、この山の名称は山頂のダンジョン、またの名を玄武の守りし山。

 ギレットが書いた本、洞窟全集。第八章に記載されていた。『この山にはヴィンランド領を守り続けている『玄武』が存在すると言われ続けている』と……


 “たまたまライトの進言でここに来たわけではあるが、ここに来たのも偶然ではないんだろうな……”


『理解出来たようだな』

「えぇ、早速なんですけど、玄武。あなたが封印した黒と白のアーツ封印を今この場で解除してもらえませんか?」

『出会った頃は幼く、我にしてみれば瞬きする程の歳月ではあるが、お主もそれなりに色々と苦労を積んだようだな』

「それなり……に……」

 俺としては大変苦労してきたつもりなのだが……

 思い出したくもない奴隷時代も、玄武の前では対した出来事ではないのだろうか?


『その思い出したくもない出来事を乗り越えたお主ならば、最早黒と白のアーツに振り回される事もないだろう……』

「うおっ!?」

 俺の身体は宙を浮き、玄武がいる大きな山の中央へと連れて来られる。

『我の放った鋼鉄ゴーレムを簡単に消し去った力……素晴らしかった。さらなる力を手に入れたとしても溺れるでないぞ』

 最後の忠告めいた言葉を言い終えた玄武は、俺には理解出来ない言葉を言い始めていく。

 多分、精霊語と言うものだろう。


 パリーーーーンッ!!


 身体の中ある何かが壊れる感覚がしたのと同時だった。今まで眠っていた力が、無限に溢れ出して来るのを感じたのは……


『気分はどうじゃ……?』

「……なんと言うか、うん。言葉には表せない力に満ち溢れている。そんな感じ……? です」

『ふむ……我はお主ならば、暴走はしないと思い封印を解いた。12年間封印されていた感覚は残っておる筈、必要な時以外表には出さぬ方がいいぞ』

「……確かにそうした方がいいかもしれませんね……」


 この力は、本当にピンチ。即ち俺が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた時にのみ、使うのが良さそうだった。何時もの感じで黒のアーツを発動するものなら、玄武の守りし山丸ごと消し去ってしまっても事足りなさそうだし、白のアーツに至ってはガーゼベルトに住む手の施しがない重症人、治らない病気の者たちが大多数いたとしても余裕で回復する事が出来そうだ。


 玄武は、俺が再びこの場に来て封印解除するのを予測していたのだろう。

 目に見えずとも感覚的にわかる。

 例えるのなら俺の中の奥深くに眠る場所に箱がある。その箱は蓋と言う名の封印が施されていた。

 封印は玄武の力によって解除され、蓋は開き箱の中から力が溢れ出してくる。

 これを普段は、蓋を閉めておく。封印されている訳じゃないから、俺の意思で簡単に蓋は開け閉め出来る。

 

「ーーと言う認識でいいですか?」

『合格じゃな』


 “よし、今度こそドランゴを倒すぞ!!”


『んっ……? 今、お主ドランゴと言う名を思い浮かべたか?』

「あっ……あぁ……ドランゴは、何故か俺をアーツバスターにさせたいらしいです。俺の村を壊滅させた男の元に誰が行くかよ!!」

『……』


『そう、毛嫌いするものじゃない。あやつは己の目的の為にお主を仲間に引き入れたく動いている』

「どう言う事だよ……? ってかドランゴの事知っているの……ですか?」


 玄武は語る、ドランゴの秘密を……

『……まず、あやつはこの世界の人間ではない』

「いきなりこの世界の人間じゃないって、言われても困ります。じゃドランゴは一体何者なのなんですか?」

『簡単に言えば転生……』

「転生……? 死んだら別な物に生まれ変わるとか、そんなのですか?」

『ドランゴは、この世界で死んだ物ではない。遥か別の異次元に置いて死に、天使の力の元異次元を越えこの世界で生まれ変わったのである』

「……天使の力……? 異次元を越えてきた……? さっぱり、わかりません」

 玄武の話は確信出来ない話で納得出来る筈もない。ただわかった事は、別な世界で死んで、この世界で生き返った。これだけはわかった。

 しかし、ドランゴが俺を仲間に取り入れたい理由がわからなかった。


 俺が言葉を発する前に、玄武は俺の心を見透かしたかのようにその答えを述べて行く……

 ドランゴは【竜のアーツ】を持って奴隷としてガルガゴス帝国で転生を果たしたが、アーツバスターになるまでの間、何度も死にそうな目に合っていた。しかし、総帥と出会いアーツバスターになってからは、何不自由のない生活を送っていたある日、ドランゴはふと思ったそうだ。


『元の世界へと帰りたい……』と……


 そして、ドランゴは『黒のアーツに触れたものは全て消し去ってしまう。ならば、元々この世界の人間ではなく転生という形で存在している俺は、この世界から消え去った後、もしかしたら元の世界へと戻れるのではないだろうか?』と言う仮設を立てていたとの事だ。


「いやいや、黒のアーツの力を使ったとしても、その異次元の先にある元の世界に戻すとか無理がありすぎますって」

『いや、黒と白のアーツを使えば不可能は可能になる……』

「なっマジかよ……」

『そして、ドランゴの立てた仮説は封印が解かれた今、現実にする事が出来る』

「……」

『だが、ルークお前もそれ相応の覚悟が必要じゃろう。その方法とはーー』

「……ちょっと待って下さい。なんで俺がドランゴの望みを叶えないといけないのですか? あいつは、俺の父や母。それに村の皆を殺しました。玄武、あなたの話はドランゴは可哀想な人生を送っていた挙句に死んでしまい、この世界に転生してきた。そして転生先でも苦労の絶えない日々を送ってきた可哀想な星の下に産まれた。だから、せめて元の世界に戻してあげよう。そう聞こえるんだけど……」

『そのように聞こえても構わぬ』

「……俺だって、俺だって……」

 ドランゴのせいで何度も死にかけた。そう言おうとした時、玄武はその言葉を俺に言わせなかった。

『お主の気持ちもよくわかる。だが、ドランゴの望み叶えてあげて欲しい』

 玄武はただそれだけを、繰り返すのである。


 村の皆の仇を必ず果たす。これは俺の中で揺らぎない物である。確かに今まで黒と白のアーツが暴走しないように封印してくれた事には感謝している。だからと言ってドランゴの事は許してやってくれと言われても、それとこれとは話が違うと思う。

 そう思うと、玄武の主張に腹だだしく思い始めてきた。


「玄武、俺はやはり納得できません……」

『……まぁ、よかろう。お主の意志は確かに我に伝わった』

「……」

『だが、ルークよ。お主が望まなくともその時は必ず来る。その事だけは、肝に命じておくが良い……』


 玄武の周りが歪み始めてると、俺がいる空間そのものが歪み始めたのと同時だった思う。気がつけばなにもない、広場の中央にポツンと立っていた。

「……」


 どうやら玄武のいる場所には、そう簡単に行けそうにないらしい。


「ルークっ!?」

 驚いたように俺に話しかけてきたのは、ディアだった……




 ◆◇◆◇◆



 九階層の扉の前で待機していたヴァルディアとゼーン。そしてリーサ、サン、ムーン、ディアの女性陣の前に、ライト、ラスティ、そしてガイヤッたちは気まずい雰囲気の中現れ、数分遅れてリーサも戻りこれで全員九階層に到着したのである。

 当然、俺がリーサたちよりも一番乗りに来て待機している筈なのにいないという話になったそうだ。

「ルークは一人でこの先に行ったのよ! 抜け駆けは許せないわっ! 私たちも行くわよ!!」

 とリーサは扉の目の前にある足跡を指差しながら、言ったのである。

 反対する者はおらず皆で力を合わせて扉を開け、内部に侵入した所で俺が中央に立っていたそうだ。


「な〜んにもないわね……」

「ただの広場だな……」

 リーサとライトが、実につまらなさそうな会話をしている中、俺はヴァルディアの足の怪我を治す為、白のアーツを発動し始めたのである。

「……なにかあったのか?」

「んっ?」

 ヴァルディアは不思議そうな顔をしながら俺を見つめてくる。

「なんとなくなんだけど、雰囲気が変わったような気がして……」

「そうかな? 気のせいじゃないかな?」

 玄武に会った事を話しても良かったが、ライトやリーサあたりに『俺だけ玄武に会ってずるい。会うまでここにいる!!』と言いだしそうだった為、心の中にしまっておく事にした。



「よしっ、もう大丈夫だと思うけど……」

「あぁ、サンキュー」

 ヴァルディアは屈伸しながら、怪我の具合を確認し完治した事を認識するのである。そして……

「皆、そろそろ行くか? ここにいても、何もなさそうだし」

「いや、もう少しここにいないか?」

 と、ライトはもう少し居たいようだったが、ラスティに今日中に戻らなければないないと、諭されていた。

 そもそも、急遽決まった洞窟探検である。皆、本日中には戻らなければならなかった。

「残念だわ!」

「まぁまぁ、リーサ落ち着いて。また皆で来よう?」

 玄武の手がかりを少しでも掴みたいと思っていたリーサは不満な様子ではあったが、ヴァルディアの決定に一人だけ我儘を言うわけにもいかず、ディアにまた、来ようと言われ渋々納得したのであった。


 こうして俺たちは九階層を素通りし十階層へ。そのままワープゲートを通り地上へと戻って来たのである。


「また、同窓会やろうね!」

「今度は女子会!!」

 などと楽しそうに女性陣が話している中、ライト、ラスティ、ガイヤッは『またなっ』と言ってロールライトへと戻って行き、ゼーンは剣の聖地へと戻って行った。

 女性陣たちも各々出発して行く中、リーサはこのまま真っ直ぐ武者修行の旅に出るそうだ。今度あった時更に強くなっていそうだ。

 そして、ヴァルディアはガーゼベルトへ戻り、俺とディアはロールライトに戻る事にした。


 帰り際にヴァルディアにいい加減、ガーゼベルトに住めと言われたが、断った。

 確かにガーゼベルトに住めば依頼は豊富にある。だが、故郷のない俺にとってロールライトは第二の故郷である。これから先、ロールライトを出る時が来るのかもしれない。でもそれまでの間、俺はロールライトに住んでいたかった。

 もう少しだけ、セルビアの元に居たかった。とも言うが……



 楽しかった同窓会がきっかけで、まさか玄武に会い封印解除出来るとは思わなかった。更にドランゴの秘密を知る事は出来たが、この件は聞かなかった事にした。とてもではないが、望みを叶えてやろうとは思えない。

 それでも……俺にとって実りある物だったのは確かである。




 おっと、忘れちゃいけない。

 帰ったらセルビアにベラベラと人の過去を話さないように、釘を刺さないとな……






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