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Arts hunter   作者: kiruhi
青年編 ー封印解除の刻ー
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第百十一話 目指せ九階層! 〜弐〜

 女性陣が九階層手前で休息をとっている一方、ヴァルディア、ラスティ、ゼーンたちはと言うと……


 ラスティが魔物の気配を的確に感じ取り、ヴァルディアは隼のアーツを発動させ、ゼーンもまた剣の腕前を披露し次々に魔物たちを倒し続けていた。

 六階層、七階層共にいる魔物たちに怯む事なく倒し続ける三人の姿は正に、安心出来る戦いぶりであり、Aランクアーツハンター並みの実力を持っていた二人に、ヴァルディアはこれなら安心出来るな。と結論を出していた。


「ふぅ、中々手強いな。所で、ヴァルディア。最下層は何階に当たるんだ?」

「十階層だな。最も魔物が出るのは九階層までだな」

「と言うと……?」

「大抵洞窟の最下層は、地上に戻るワープゲートが設置されている」

「へぇ……」

 とヴァルディアとゼーンが話をしながら八階層に降りて行く階段を降りていると、先に降りていたラスティが声を張り上げていた。

「集中!!」

 その言葉に二人は、戦闘態勢へとスイッチを切り替えていく。

 三人の前には、石で出来たゴーレムが五体所狭しと取り囲んでいた。


「こいつはっ!?」

 剣を構えながらいつでも斬りかかれる態勢のゼーンにヴァルディアもまた、隼のアーツを発動させていく。

「石ゴーレムだな」

「急所は?」

「表面は硬く攻撃は効かないが、首の所が急所となっている」


 ゴーレムの急所となる首を攻撃すれば、確かに一撃で倒す事は出来る。だが、巨体なゴーレムは三人を見下ろす形となっており、見上げている三人にとってゴーレムの首は僅か一ミリ程しか見えていなかったのである。

「首が急所って簡単に言うけど、殆ど見えないぞ?」

「だが、ゼーンなら余裕だろ?!」

「ちっ……ラスティ指示を頼む!」

「任された!」


 ラスティはアーツハンターではない。だが、彼の能力は特殊と言えた。

 それは、ライトの傍にいつもおり最前線で幾多の困難な戦況をくぐり抜けてきた、ラスティだからこそ身につける事の出来た能力と言えた。ラスティの指示は、僅かな敵の動きを見逃さず観察。そして、次にどのように攻撃してくるのか予想を立てるのが、非常に上手く三人が八階層まで来れた一つの要因と言えた。

 だが、百発百中と言う訳にはいかず極たまにその予想は外れる事もあるが、ヴァルディアはラスティの的確な指示に素直に凄いと思っていた。


「ゼーンの方にゴーレム二体が、同時に拳を振り下ろしてくるぞ!」

「了解っ!」


 ラスティの指示と同時に二体のゴーレムは、ゼーン目掛けて四つの拳を無差別に振り下ろし何度も何度も地面に拳を叩きつけていく。その破壊力は、地面を壊し九階層まで落ちていくんじゃないか? と思われるぐらい凄まじかったが、剣の聖地ウィッシュにて師範代にまで登りつめ更には剣王を目指しているゼーンにとって最初からわかっている攻撃程、反撃しやすい物はなかった。

 ゴーレムの拳が何度も何度も地面に叩きつける中、全ての攻撃を紙一重で避けつつもゼーンはゴーレムの懐に潜り込み、一閃。

 針の穴を通すのも難しいぐらいの隙間を、ゼーンは正確に捉えていた。

 放たれた剣速は的確にゴーレムの首を破壊。剣を鞘に戻した音が響き渡る中、二体のゴーレムは急所を破壊され崩れ去っていくのである。


「流石だな……」

「残り三体っ!!」

「おうっ! ラスティ!!」

「ヴァルディア、ゴーレムの右足に攻撃したのちに飛び上がってアーツを発動だっ!」

「わかった!」


 ヴァルディアもまた、ラスティの言われた通りゴーレムの右足を攻撃していく。体制を崩したゴーレムは片膝を付いていく。その隙をついたヴァルディアは高く飛び上がりガラ空きとなっている急所に、隼のアーツを発動していくのだが……



 残っていた二体はゼーンと交戦中だった。当たらないゴーレムの拳は、空を切る筈だったのだが、ゴーレムに対して頭上から首めがけて隼のアーツで攻撃を仕掛けようとしたヴァルディアの身体に直撃してしまうのであった。

「ぐっ!!」

 受け身も取れぬまま吹き飛ばされ壁に激突。ヴァルディアは痛みにのたうち回る事しか出来ず、そのまま踏み潰されそうになっている事に気づく事はなかった。一体のゴーレムを相手しているゼーンが、ゴーレムから離れた時点で後ろからゼーンは攻撃を受ける事だろう。それを知っていたゼーンは叫ぶ事しか出来なかったのである。


「「ヴァルディアッ!!」」



 しかし、ヴァルディアは踏み潰されなかった。

 ゼーンではなく、三体の内一体を瞬時に倒したラスティの剣が、ゴーレムの首を正確に捉えていたのである。


「げほっげほっ!!」

「ヴァルディア、大丈夫か?」

「なっ……なんとか……」


 ヴァルディアの無事を確認したゼーンは、良かったと言う顔をしながら相手をしていたゴーレムを倒して行くのであった。


 こうして五体のゴーレムを倒す事は出来たのだが、ヴァルディアの怪我の状況を見ながら進むか、戻るかどうかを三人は、決めなければならなかった。

「ヴァルディア、動けそうか?」

「……何とかな。だが、戦闘は無理かもしれない」

「だな、右足が折れている」

 ラスティが的確に折れた右足に添え木をし応急処置をして行く中、引き返すしかないんだろうなと、口には出さないが誰もがそう思っていた。

「どうする? ヴァルディア、決めるのはお前だよな?」

「……」

 ゼーンの指摘する通りヴァルディアは、考えた。考えた末に出した結論は……


「進もう」

 だった。


 引き返すと言うと思っていただけに、ヴァルディアの出した結論はラスティもゼーンも意外だった。

「ヴァルディア。お前は右足が折れておりとてもじゃないが、まともに戦闘が出来ない。と知った上での結論なのか?」

「あぁ、足手まといになる事は十分承知の上だ」

「理由を聞いてもいいか?」

「……このまま引き返すにしろ進むにしろ戦闘は避けられない。ならば、敵の遭遇率が低いのはどちらだ?」

「ふむ」

「ここは八階層で、もうすぐ九階層だ。九階層まで辿り着く事が出来れば皆と合流する事が出来る」

「……」

「一方、ここから地上へ戻る為には六、七階層を二人で切り抜けてもらわなくてはならない。戦闘回数から見ても進むよりも、戻る方が遥かに難易度は上がる事だろうな」

「確かに、一理あるが……」

「危険なのは、充分承知している。だがな、ラスティとゼーンの二人なら切り抜けられる力は持っていると信じている」

「お前……」

 迷いのない目をヴァルディアはラスティに向け、自分の考えは間違っていないと態度で表すかのように目を逸らす事はなかったのであった。

「……わかった、ヴァルディア。お前の判断に従おう。それでいいな、ゼーン?」

「了解だっ!!」


 再び九階層を目指し始める、ヴァルディアたちであった。




 ------



 即席で出来上がった松葉杖を使いながら、ヴァルディアはゴーレムの標的にならないようさりげなく動きつつ、ラスティとゼーンの戦闘を見守っていた。

 どうやら八階層の魔物は、石で出来たゴーレムばかりのようだった。石ゴーレムは大量に襲いかかってくるも、急所がわかっている二人には強敵にはならなかった。互いに声を掛け合いながらも、ラスティとゼーンは石のゴーレムたちを倒し続けていた。


 だが、安心している場合でもなかった。一匹だけ二人の攻撃を避けた石のゴーレムがヴァルディアに迫ってくるのである。

「あっやばいっ!」

「ヴァルディアっ!!」

「……」

 二人はヴァルディアの元に駆け寄る事は不可能だった。既に次から次へと襲いかかってくる石のゴーレムたちを倒さねばならなかったのだから……

「……足手まといでも、やりようはあるさっ」

 ボソリと呟いたヴァルディアは、壁に背中を預け松葉杖を剣のように振り下ろしていく。

「隼のアーツ、発動!」

 ヴァルディアの言葉と共に、松葉杖から繰り出される剣閃は隼のアーツによって一つだけではなく、五閃ぐらいにも連なって石のゴーレムを攻撃していくのである。そのうちの一つが、急所に直撃。ヴァルディアは、襲って来た石のゴーレムを倒す事に成功したのであった。


「……おいおい、何が足手まといだ?」

「ったく、松葉杖を普通剣代わりに使うか? 充分、戦えるじゃねぇかよ」

「これも、見越して進もうとヴァルディアは言ったんだろうな……」

「だとしたら、十分な策士だな」

「同感だっ……」

「……丸聞こえだぞ。ラスティ、ゼーン」



 要所要所で、ヴァルディアはアーツを使い援護射撃する形で三人は石のゴーレムを倒し続け、漸く出口が見えて来たのであったが、不思議な物が視界に入り三人は足を止めていた。


 それは、見事な岩の瓦礫山がそびえ立っていたのである。


「何これ……?」

 ゼーンの疑問も最もだった。

 出口を塞ぐ形で岩があるのならまだしも、明らかについさっき誰かが大規模な戦闘をここで行った形跡だった。しかし、今までそのような形跡は一切なく、疑問にしかならなかったのである。

「罠……なのかな?」

「……」

「罠を張るなら出口を塞ぐだろ?」

「だよなっ!!」

「じゃなんだ、これは……?」

 ゼーンとヴァルディアが瓦礫の山を見上げている中、ラスティの聴覚は別な音を捉えていた。

「ラスティどうした?」

「声が聞こえる……」

 ラスティの言葉に耳を傾けるも、ヴァルディアやゼーンには全く持って聞こえる事はなかった。

「ラスティ、俺には全然聞こえないぞ。気のせいじゃないのか?」

「俺も聞こえないな……」

「……ちょっと黙っててくれ」

「……」

 ラスティは微かに聞こえる壁を、すぐに突き止めてしまうのであった。

「ここだな」

「マジっ!?」

「ゼーン。お前は、ヴァルディアと共に九階層に行っていてくれ」

「えっ?」

「九階層は降りてすぐだし、誰かが先に来ているかもしれないだろ? それに、隼のアーツを使って俺たちの援護射撃をしてくれていたとは言え、ヴァルディアは怪我人だ。そろそろ体力の限界だろ?」

「……良く、見てるな……」

「いや、ならラスティも先に九階層に行ってからでも遅くはないんじゃないのか?」

「……勘なんだけど、それじゃ手遅れのような気がするんだ」

「……」


 ラスティは確かに何かを感じ取っていた。だが、それはラスティ自身も自覚していない主への危機的状況を打破する忠誠心に他ならないのである……


 忠誠心……

 それは、別行動をとっているライトに向けられる殺意であり、ラスティは例えライトの側にいなくとも敏感に感じ取っていた。






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