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Arts hunter   作者: kiruhi
青年編 ー封印解除の刻ー
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第百七話 懐かしの再会

 ギレッドの死から数年が経ち、俺は18歳になっていた。


 当初は、ギレッドの死を考えたくなかった。

 セルビアと顔を合わせれば絶対ギレッドの話しをしてしまう。

 だから俺はヴァルディアがメシュガロスに行くと言って来た時、この場所から逃げるように『俺も行きたい』と言ったのだ。




 ドランゴが現れるかもしれない。との話しもあったが、ドランゴは現れなかった。

 メシュガロスを拠点に、数回アーツバスターの侵攻を防衛している差中に新しくアーツハンター協会長はマーシャルに決まった。と言う話しは俺たちアーツハンターだけではなく、アーツバスターにも耳にしたのだと思う。彼らは一先ず諦めたのか、それ以降の侵攻はピタリと止まり駐屯しているアーツハンターに帰還しても言いと言われたので、ヴァルディアはガーゼベルトへ。俺もロールライトへと帰還する事になった。


 メシュガロスは、ギレッドとドランゴが俺の目の前で最高の戦闘を繰り広げてくれた場所だ。この地は確かに嫌な記憶しか残ってはいないけども、それを忘れさせてくれる程ギレッドの戦いは俺の心の中に深く刻まれていた。


 いつか……

 必ず、ギレッドを超える日が来るといいな。そう思いながらロールライトに帰還を果たしたのであった。




 ロールライトに帰還した俺は、以前マーシャルが話していた通りSランクアーツハンターにランクアップ。

 セルビアに闘気を教えた後、更なる戦いに身を投じて行った。

 死と隣り合わせの戦いが多いSランクの依頼を完遂させ続けていたお陰もあって、あの頃とは比べ物にならない程今俺は強くなっていると思う。

 それでも、まだまだギレッドには遠く及ばないけど、少しずつギレッドの強さに近づいていればいいな。と思いながら過ごしていた。



 そんなある日、忙しい毎日を過ごしながらも依頼を早めに終わらせた俺はガーゼベルトにある、食事処へと足を運んでいた。


 今日は、パラケラルララレ学校時代の皆と会う、いわゆる同窓会が開かれるのだ。

 皆に会うのは卒業して以来会ってはいない。だから……

 約8年ぶりの再会かな?


 そもそも同窓会をやろうと言い出したきっかけは、三週間程前に俺が依頼の報告の為ガーゼベルトのアーツハンター本部に立ち寄った時に偶然出会った、ムーン・ミハアルであった。


「ルーク……?」

 先に気がついたのは、ムーンの方でその声に振り返ると見覚えのある面影を残している女性が、立っていたのである。

「??」

 思わず、どちらさま? と言いかけた時に、彼女は嬉しそうに再会を懐かしみような顔をしながら口を開いて来た。

「私、ムーンよ。ムーン・ミハアル。覚えてない?」

「……あっあぁぁぁぁぁっ!!」

 叫び声がアーツハンター本部に響き渡り、何事? と周囲の目で見られてしまったのは、当然の出来事だった。そそくさと逃げ去るようにその場を後にした俺とムーンは、別な場所に移動し近況を報告しあったのだった。


 彼女は、パラケラルララレ学校高学年部に進級し、中の上ぐらいの成績で16歳、卒業。

 その後は、念願のアーツハンターになり今まで地道に依頼をこなし続けて、2年でCランクまでランクを上げたのだった。


「みんな、元気なのかな……?」

 俺のさりげない一言にムーンは目を輝かせながらある提案をしてきた。


 それが、皆でロールライトに集まろうって事だった。


「でも、ヴァルディアはロールライトに入れないよ?」

「そんなの問題ないわ。ガーゼベルトでやりましょ!! 私は、ロールライトにいる人たちに声かけるから、ルークはウイッシュに行った皆に声をかけてね!! 後、私はガーゼベルトの店知らないから任せるわ。ポイントは、私たちはまだお酒飲めないんだから、安くて超美味しいお店に、宿屋。手配しておいてね!!」

「おっ……おぅ……」

 ムーンの積極性に押された俺は、断る事が出来なかった。

 依頼の合間を縫いながら、ウィッシュの皆に声をかけたり……

 ムーンの所望していた、安くて超美味しいお店をヴァルディアやマーシャルに相談しながら決めたり……

 宿屋の手配をしたり……


 目が回るとはこの事だな。と思いながらこうして同窓会が始まるのであった。


 本日は、お店を貸し切っての宴会。

 まだ20歳になってはおらず未成年の為、お酒は飲めないが久しぶりの再会楽しもうと思う。




 ◆◇◆◇◆



 店に入ると、俺が最後の到着だったらしい。

「おっ遅いぞ! ルーク!!」

 とライトに怒られてしまった。

「すまん……」

 こうして始まった宴会は、大盛り上がりだった。


 まず、久しぶりの再会を祝してジュースで乾杯。

 俺はというと、ヴァルディアとリーサの間に座り三人で話を弾ませていた。

 周りをふと見渡してみれば、ムーンとディアは久しぶりの再会を喜び合い、あの時と変わらず仲が良さそうに話ししていていた。

 俺と目があったムーンはいきなり立ち上がり、皆の近況報告を言い合おうって提案してきたのだ。

 反対意見が多い中『幹事の言う事、聞きなさいよね!』の一言でピシャリと従う事になってしまった。



「じゃぁまず俺からだな」

 そう言って立ち上がったのは、ライトだった。それに釣られて半歩後ろでラスティが立ち上がっていた。ライトやラスティは、相変わらず一緒のいるようだ。

 話しによるとこの二人は、近衛兵訓練学校を無事に卒業し今では、ロールライトの貴族街を取り締まる近衛兵になったそうだ。見習いらしいけど……

 それでもライトは、親の七光りと言われないよう実力をつけ未来の近衛兵隊長を目指しているみたい。

 ラスティは、ライトを補佐するべく違う方面にも能力を身につけなければならないみたいだ。

 まぁ要するに、一緒に強くなっていると言う事だな。


 お互いを刺激し合うライバル関係みたいだけど、見るからに仲が良いよな。この二人でも喧嘩するのかな?



 ゼーンは、現在も剣の聖地にいる。

 リーサと同じく最近師範代になる事が出来たみたいたが、それでもまだまだ周りの人たちは強く剣王になる為の道は、険しいと漏らしていたのが印象的だった。


 強い人は本当に強いよな……



 ガイアッは、パラケラルララレ学校高学年部を首席で卒業。

 でもガイアッは貴族でも平民出の下級貴族な為、ライトやラスティと同じく近衛兵なる事は許されなかった。

 今では、パラケラルララレ学校で得た知識で新たな商売ルートを確保しよう。と考えているみたい。

「ガイアッ……俺が近衛兵隊長になった暁は、お前も近衛兵に招き入れる事も可能だ」

「おいおい、ライトいつの話しだよっ」

「近いうちに必ず……」

「わかったよ。それまで自由気ままにやらせてもらうさ」

「あぁ、期待しているよ」


 相変わらずガイアッが何を企んでいるのか不明だけど、ライトの自信満々は変わらないみたいだった。



 おもむろに立ち上がったのは、ヴァルディアだった。

「俺は、俺のミスでロールライトにいられなくなったのに、今日この場に……長い年月を得てパラケラルララレ学校の皆と、再び再会出来た事を嬉しく思っています。俺はあの後……」

 ヴァルディアはロールライトから追放された後の事を、淡々と語り出した。

 マーシャルの元で生活していた事、そこで得る事の出来た知識はロールライトでは得られなかった知識であって、追放された事に対して決して後悔はしていない。そんな会話だった。


 一瞬空気が重くなったなと思っていると、ヴァルディアは慌てて現在は空席となった戦闘隊総司令官の跡を継ぎ、目まぐるしい書類の山と格闘中と話ししていた。


 異例の平民出の未来の近衛兵隊長……


 ライトが導く近衛兵たちとは異なった方向でヴァルディアは率いてくれたかもしれないが、それは不可能な出来事。今後ヴァルディアにはアーツバスターたちと戦闘になった時、勝利と言う二文字を導いてもらおうと思う。



 男性陣の最後は俺だった。

 簡潔にSランクアーツハンターになりました。と言ったら『それはそれで凄い事だけど、もっと細かく話せぇ〜』と言われてしまった。


 俺は……こういうの苦手だから勘弁してくれ〜と思いながら、語り出した。

 8年間の出来事を……

 勿論奴隷になってしまったは省いてだが……


 話し終わった頃、ヴァルディア以上に雰囲気が重くなってしまった。


 “だから、言いたくなかったのにっ!!”


「コホン……次は、リーサお願いしてもいい?」

 救いの手を差し伸べてくれたのは、ムーンだった。


 “さすが、幹事!! 空気を読んでくれて助かりました”



 リーサもヴァルディア同様に、ロールライトを出てからの事を掻い摘んで語り出していた。

 現在はウィッシュでシュトラーフの右腕としているが、この同窓会が終われば剣の聖地ウイッシュには戻らず旅に出るそうだ。いわゆる武者修行を何年かやった後に、再びウイッシュに戻りシュトラーフェと戦って勝つ。そして願わくは、シュトラーフの跡を継ぎ次会った時は更に強くなっている。とリーサは豪語していた。


 リーサの強さへの思い入れは、出会った時と変わらず貪欲だった。

 そこがリーサのいい所だと思う。



 サン、彼女は念願の剣士となってウィッシュを旅立ち、結局親の跡を継いでしまった。

 でも剣の知識は他の者とは比べものにならず、凄く良い剣を作り出してくれるらしい。

 自らが作った剣を試し斬りし、気に食わなかったら一から作り直しているそうだ。

 親にも、こだわりは程々にしとけと言われているが、命を預ける剣。少しでもいい剣を作りたいと言っていつも喧嘩が絶えないそうだ。


 いつしか、サンの作り出す剣が皆が愛刀してくれでばいいな。



 ディアも同じく師範代になったが、ゼーンと同じく今もウィッシュに残っているそうだ。

 シュトラーフェに『お前もはもう十分、生き抜く力は身についた』と太鼓判を押された時に、ゼーンと共にロールライトに戻り治安を守る女剣士で街中を駆け巡りたい。とディアは嬉しそうに話ししていた。


 ん? ゼーンと共に戻りたい。って事は……ディアはゼーンが好きなのかな?


 最後の締めくくりにムーンの話しを聞き、互いの近況報告を終えたのであった。




 8年と言う年月は短いようで長い。

 皆色々な、人生を送っていた。

 次の再会が十年後とかだったら、皆結婚とかしたり子供とか生まれているのかも。


 まぁ……俺はどうなるかわからないけど……




 ◆◇◆◇◆



「所でヴァルディア、毎日大変じゃないのか?」

「めっちゃ大変だよ! ったく本当はルークお前がなる筈だったのによぉ〜!!」

「いや……俺には無理だから」

 ヴァルディアの言うとおり、戦闘隊総司令官は当初俺にやって欲しいとマーシャルは話ししてきたのだった。確かに最前線で戦うのは構わなかったが、人の上に立って命令したりする姿を俺は想像出来なかった。

 それに、書類整理とかアルディスの頭を抱えながらやっている姿を、毎日のように見ていたのもあるんだと思う。マーシャルにさりげなく毎日いじめられそうな事が予想出来たから、俺は断った。


 俺よりマーシャルの側で長年過ごしていたヴァルディアの方が適任だと言って……


 ヴァルディアには悪いが、案の定忙しい日々を送っているみたいだし戦闘隊総司令官になる話しを、受けなくて本当に良かったと思っている。


「アーツバスターたちと戦いになった時、頼むぞっ!」

「あぁ、わかったよ」

「私も戦いになった時、参加するわよ!!」

「「へっ!?」」

 突然のリーサの申し出に俺もヴァルディアも返答に困ってしまった。

「なによっ!? アーツ使えない、剣の聖地の助けはいらないの?」

 リーサの迫力に負けたヴァルディアは『お願いします』と頭を下げていた。




「相変わらず、お前たち三人は仲良いんだな」

 テーブルを挟んで正面に座り込んできたのはライトだった。

「ライト、久しぶりだな!」

「おうっ! お前らも元気そうで何よりだ」


 たわいのない会話が弾む中、ライトは誰もが口にする事のなかった、言葉を口にしてくるのであった。

「ふぅ……ギレッド先生、この場にいたら喜んでくれたんだろうな……」

「……」

「喜んで、この後広場で訓練じゃ〜って言っていたんじゃない?」

「ははは……確かにルークの言う通りだな」


 ライトの言う通り同窓会をやると言っていたら、ギレッドは喜んでこの場に参上していただろう。

 大好きなお酒を飲んで、皆の話しを黙って聞いて……

 最後には俺たち皆を叩きのめして、満足げに帰って行く事だろう。


 “……やばい、そう考えたら泣きそうになってきた”


「ルーク……?」

 突如無言になり泣きそうな顔をしていた俺に、気がついたのはリーサだった。

 すぐさま大丈夫と話し、気分を入れ替える事にした。


「あぁ……そうか。ルークは、ギレッド先生の最後見ているんだもんな」

「んっ……まぁな」

「どんな最後だった……?」

「ライト……」

 俺以外、ギレッドの最後は知らない。

 ヒルヤンは言葉通り、ギレッドの汚名を晴らしてくれた。

 シドニーの出した告知を取り下げるかのように、ヒルヤンは公式文書を出してくれた。

 内容としては……


『先日、 アーツハンター協会会長代理(・・)と名乗るシドニー・ラーニアが告知してきた文章を撤回する。

 アーツハンター協会長、ローラ・フォン・ミステリアを殺害した実行犯として、ギレッド・フォン・ゼーケのSSアーツハンターランクを剥奪、アーツバスターと認識、生死を問わず指名手配としたが、可の者は無実であった。

 真の実行犯は、アーツバスターによる者である。

 無用な混乱に巻き込まれギレッド・フォン・ゼーケは死亡してしまったが、アーツハンター協会はここに剥奪したSSアーツハンターを返却する事とする。

 更に事の発端を起こした、シドニー・ラーニアの幹部の任を解き粛清する事と共に謝罪とする。

 アーツハンター専門裁判長ヒルヤン・ゴッド』


 でもなぜギレッドは死んでしまったのか? あの場にいた者以外わからない文章であった。

 もっと細かくとヒルヤンに懇願したのだが、これ以上の情報の提示はアーツハンターの信頼に関わるので察してくれと言われてしまい、それ以上食い下がる事は出来なかった。


 俺が当事者ではなかったら、確かにライトが聞いてきたように知っている者に聞きたいと思う。

 ヴァルディアは、戦闘隊総司令官と言う名の幹部だから機密事項まで書類上では知っているが、それでも見てきた者の言葉で知りたいと思う。ってか俺だったら聞きたい。


 ギレッドは最後まで、俺たちの先生なのだから……


「ルーク、多分皆知りたいと思うわよ」

「……うん。そう思う……」


 肺に空気を取り込み、俺は立ち上がる。

 そして、皆の方を向いて語り出す事にした。

「皆……聞いてくれ……ギレッド先生の話しなんだけど……」


 シ〜ンと静まり返る中、機密事項に触れないように俺は口下手ながらも一生懸命、事の発端から終息まで全て話しした。







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