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女子プロ☆カウントスリー!!!  作者: totoron
Round3: リングの品格
9/27

ハイスパートレスリング

2


 NIWP興行、本日の第五試合。メインイベントの二つ前に私の出番はやって来た。

 相手は、「迎撃隊長」の異名を持つ、NIWPの門番、ブレイカー桜田。

 この桜田を倒してこそ、NIWPのトップ陣と戦う資格がある。そういう位置づけの選手が通称「門番」だ。実力はもちろん、対戦相手にトラウマが残るほど痛めつける性向でも知られている。


『――青コーナーより、スター女子プロレス、「赤いカリスマ」秋山祐子の入場です!』


 アントニオ猪木のような赤と白のガウンに身を包み、入場口で「シャアァァァ!」と気合の一声。

 対抗戦ではないが、アウェーの会場は既にホームを応援するムードになっていた。応援よりも、私に対するブーイングの声が多い。私は正統派のレスラーだが、ここではヒール(悪役)。それならそれで、ハデにやってやろうじゃないの。

 リングと観客に一礼してリングに上がると、リング中央で右腕を真上に高く突き上げてアピールし、リングに向けて拳を打ち下ろした。

 そして、桜田が入ってくる赤コーナー側の入場口に向かい、首を掻っ切る仕草をする。

 会場のボルテージが上がる。ブーイングはますます大きくなって場内を揺らす。


『――赤コーナーより、新国際女子プロレス、「迎撃隊長」ブレイカー桜田の入場です!」


 特攻服と柔道着を足して2で割ったような服装で、ブレイカー桜田が登場する。観客たちは待ってましたとばかりの大歓声。観客の多くは、桜田によって連敗の鬱憤が晴らされ、気持ちよくメインイベントに入ることを願っている。

 事実、下馬評では桜田の方が格上と見る向きが強い。

 桜田コールが会場にこだまする。


『――只今より、秋山祐子vsブレイカー桜田の30分一本勝負を行ないます!』


 カーン!


 張り詰めた空気の中、ゴングの乾いた音が響き渡った。


 ――直後、桜田が猛ダッシュで距離を詰めてくる。

 そして、初っぱなから、顔面へのナックルパート!

 プロレスでは拳での顔面攻撃は危険なため、反則となっている。しかしファンはあくまで桜田の味方だ。私の顔面を桜田の拳が捉えると、観客席が大きく沸いた。異常とも言える高いテンションで試合はスタートした。


『――ワァァァアァァァアア!!行けぇ、桜田ァ!』


「――痛ッたぁ・・・・・・」


 倒れはしないものの、ガクッと膝が落ち、片膝をつく体勢に。

 ちょっと口の中を切ったか。かすかに血の味がしてきた。本気で潰す気みたいね。できたばかりの弱小団体と思ってナメられてるのかもしれない。


「アウェー・・・・・・ってことね。――上等じゃないのッ!」


 すぐ立ち上がって、キッと睨み、右の拳を固めて殴り返す。

 それほど効いている様子はないけど、顔へのパンチは布石。本命は、注意がお留守になった左足へのローキック!

 ビシィッ!と弾くような音と共に、桜田の左膝が落ちる。続けさまにもう一発。体を吹き飛ばすような重いローキックが、桜田の左足を刈り取る。

 いつもならここで一旦様子見だけど、今日は悪者だし、ケンカ売ってきたのはそっちなんだから、容赦はしない!


 続けて、倒れている桜田の脇腹にキック!

 悶絶の表情を浮かべる桜田。


「新国際女子プロレス、こんなもんか!?アタシがぶっ壊してやるよ!」


 倒れている桜田をもう一度全力で蹴飛ばし、観客席に対して「どうだ!」とアピール。

 その隙に桜田は立ち上がり、張り手の連発からブレーンバスター。しかし、しっかり受身を取っておけばそれほど痛くはない。


 しかしさすがにキャリアの長い桜田、私の得意な打撃戦では不利だと感じたようだ。組み付いてからの投げを中心に試合のリズムを掴もうとする。ボディスラム、フロントスープレックスと、様々な投げを繰り出して私のスタミナを奪いにかかる。

 しかし、毎日バカ力の山倉に投げられているせいか、正直、どの投げも軽く感じる。


 試合開始から3分過ぎ、ロープに振ってからのローリングソバットが一閃し、桜田の脇腹にめり込む。最初のキック連発と同じ所に当たったらしく、悶絶の桜田。ここからキックの雨あられを胴と左足に集中させる。

 総合格闘技のような、こういう戦い方は正直好きではない。しかし今回はアウェーだし、旗揚げ興行を前にエースの私が負けるわけにはいかない。

 キックのコンビネーションから最後はハイキックでダウンを奪い、吊り天井固め。しかしギブアップまでは取れない。さすがに門番、桜田も粘る。


 桜田の意地のスリーパーやジャーマンスープレックスを浴びるも、私の攻撃の手は緩まない。すぐさまバックドロップやジャーマンスープレックスで反撃。

 フラフラですぐに立ち上がることができず、片膝をつく桜田。その逆の左膝を駆け上がっての、顔面への膝蹴り!これが私の必殺技――シャイニングウィザード!


 何とか起き上がろうとするところに、もう一発シャイニングウィザード!!!

 力なく崩れ落ちた桜田の体を上から押さえ込む。


『カウント!ワン!ツー!・・・・・・スリー!』


○(SWP)秋山祐子vsブレイカー桜田(NIWP)×

     6分32秒 シャイニングウィザード→体固め。


 電光石火のハイスパートレスリングを制し、SWP、三連勝。


 ――しかし、試合で私の役目は終わりじゃない。エースの仕事はここからだ。


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