アウェーで快進撃!
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――新人テストから2日後。
私たちは、新国際女子プロレス(NIWP)のリングに立っていた。
プロレスの世界、特に私たちのような弱小団体では、選手の貸し借り(互いに相手のリングに参戦する)が頻繁に行なわれている。人数が少なければ試合数も少ないし、選手が少ないと来場するファンも少なくなるからだ。しかし、頻繁に行き来しすぎると、どの団体に行っても同じ選手が出ていて面白みが無い。
NIWPは、なでしこ女子プロレスが解散した後、日本で2番手の大きさの団体となっている。来週末に初の自前興行を控えた私たちスター女子プロレス(略称:SWP)にとっては、格好のアピールの場なので、ファンを魅了するファイトをしてSWPの印象を植え付けたいところだ。
今日は、前田さん、実鈴、山倉、私と全員参戦。
田中と緒方も見学ということで観客席に座っている。
まずはシングルマッチ。
NIWPのベテラン、NAOMI選手と、SWPのフリー選手イーグル前田の一戦。
×(NIWP)NAOMIvsイーグル前田(SWP)○
12分11秒。ノーザンライトボム→体固め。
NAOMIの関節技に苦しめられるも、最後は必殺のノーザンライトボム二連発で決着。NIWPのファンもこれなら納得の前田劇場。双方の持ち味が出たナイスファイトとなった。
そして続いてタッグマッチ。
NIWPの売出し中の若手コンビ、スピードスターのエリカ・ホーネット&柔道ファイター藤原真琴vsSWPのラニーニャ遠藤&バッファロー山倉の闘牛ペア。
序盤、スピードスター、エリカが巨体の山倉に対し、キックと空中殺法による奇襲攻撃!
しかし、それが「暴れ牛」山倉の怒りを買ってしまい、フルパワーのラリアットが炸裂。軽量級のエリカがコーナーポストまで吹き飛ばされ流血戦に。朦朧とするエリカに、ストンピングと張り手の雨あられが飛ぶ。
山倉の覆いかぶさるようなスリーパーを血まみれのエリカが何とかロープブレイクしたところで両者タッチ。
しかしラニーニャ遠藤は藤原の柔道技を、得意のトラースキックからパイルドライバー、フェースロックとプロレス技で圧倒。タッチで出てきたエリカをジャーマンで投げ飛ばす。
その後、代わって入った藤原の一本背負いで流れが切れるも、ここから代わってリングに上がった山倉のパワー殺法が藤原を圧倒する。ラリアットからアルゼンチンバックブリーカー、ジャイアントスイングと次々と技を繰り出し、再度のタッチと共に実鈴のローリングギロチンドロップ!藤原、たまらずエリカにタッチ。
しかし闘牛ペアの勢いは止まらない。
エリカを捕まえると、実鈴のフィニッシュホールド、ドラゴンスープレックス!
何とかカウント2でエリカは逃げるが、サイボーグマタドールは追撃の手を緩めない。
トラースキックからジャーマンスープレックスの必殺コースでフォール勝ちを狙うが、ここは藤原が山倉のブロックをかいくぐってカット。
粘るNIWPタッグに対して、山倉が動く。
実鈴とエリカが組み合った瞬間、リングに飛び出し、対角線にいる藤原に強烈なラリアット!不意をつかれた藤原はリング外に転げ落ちる。それを追う山倉――
リング上では、エリカに対して実鈴が二度目のドラゴンスープレックス!
場外では、根性で起き上がった藤原に対して山倉のアルゼンチンバックブリーカー!
リング上、カウント、ワン!ツー!・・・・・・スリー!
カーン!カーン!カーーーン!!!
高らかにゴングが鳴り響く。リング内外で闘牛ペアの圧勝。実力以上に、タッグの相性と経験の差を見せ付けた試合となった。新団体の勢いに、NIWPファンが静まりかえる。
×(NIWP)エリカ・ホーネット&藤原真琴
vs
ラニーニャ遠藤&バッファロー山倉(SWP)○
13分34秒。ドラゴンスープレックスホールド。
さて、最後はいよいよ私の出番だ。この連勝ムードを壊すわけには行かない。
相手は、「迎撃隊長」の異名を持つ、NIWPの門番、ブレイカー桜田。
相手にとって不足なし。いっちょやってやろーじゃないの!