表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子プロ☆カウントスリー!!!  作者: totoron
Round1:この道を行けばどうなるものか
1/27

しょっぱい最後

プロレスの人気が落ちて久しい(特に女子)ですが、その魅力はまだまだ健在です。プロレスラーはSFより奇なり。この作品を通して、多くの方にプロレスに興味を持っていただけたらと思います。


 ――ワァァアァァァァ!という大歓声の中で、私は天井を見上げていた。

 スポットライトの強い光が、私の視力を一瞬奪う。


 なでしこ女子プロレス最後の興行シリーズ。

 私、秋山祐子vsシルバーフォックスの一戦は、よもやの展開となった。

 格下だと思っていた相手の覆面レスラー、シルバーフォックスは、驚くほどしょっぱい(=面白くない)プロレスを仕掛けてきた。

 こちらの技は避け、自分の技は当ててくる。時にはプロレスではご法度の急所攻撃まで含めてだ。総合格闘技が流行っている影響だろうか、プロレスらしいプロレスをしない選手が増えてきたのは確かだが、ちょっと今日の試合はひどい。


 とか思っていたら、実況のリングアナの雄叫びが聞こえ、刹那、スポットライトの光が消えた。


『リングの月面水爆、ムーンサルトプレスだぁあぁぁああああ!ストライィィク!!!』


 ごふっ!

 何かが折れるような、割れるような、嫌な音がした。

 受けるには受けたが、それでも高さ1.8メートルのコーナーポストの上から六十kgが宙返りしながら降ってくるのだ。痛くないわけがない。空中殺法を得意とするシルバーフォックスの得意技だ。これは結構効いた。・・・・・・というか、痛い。痛すぎる。


 呻きながら回復を待っていると、重さが急に消えた。

 少し楽になった、と安堵したその数秒後、


――ワァァッァアアアアアア!!!――


 ズドーン!!!


『ムーンサルトプレス二連発ゥゥゥゥ!!!カウントォ!』


「――ワン!――」

「――ツー!――」


 何とか体をねじってカウント2.5、何とか肩を上げる。まさかのムーンサルトプレス二連発。


「もう、完ッ全に頭きた!忌々しい銀ギツネ、全力でぶっ飛ばしてやる!」


 そう思って体を起そうとした時、肋骨がきしむ音を私は聞いた。当たり所が悪かった!?

 ――マズイ!最悪の展開――。

 何とか立ち上がるも、力が入らないうちに軽々とボディスラムでマットに叩きつけられ、傷めた箇所に近い場所にストンピングが二発三発と入っていく。

 筆舌に尽くしがたい痛みが続けて襲ってくる。


「ガァアァアアアアァッ!」


 気合いで振りほどいて立ち上がり、そろそろ私のターン!

 ――と思ったら、後ろから組み付かれ、私の両腕ごと腰に手を回される。


(ちょ、ちょっと待って!ここは私に一つくらい技出させるのがプロレスでしょっ!)


 心の声も空しく、私の体はアーチを描いて頭からリングに落下した。


『ここでシルバーフォックスのノーザンライトスープレックスッ!!!』


「――ワン!――」

「――ツー!――」

「・・・・・・スリー!!」


カァン!カァン!カァーン!

スリーカウントを知らせるゴングの音が鳴り響く。


×秋山祐子 vs シルバーフォックス○

     17分21秒 ノーザンライトスープレックスホールド


 私のなでしこ女子プロレス最終戦は、あまりにもしょっぱい試合で幕を閉じた。

 敗北以上に、内容があまりに情けなくて、涙で前が見えなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ