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序
姉の周りはいつだって煩わしい。
そりゃあ姉は昔からモテていた。そりゃあもうビックリするほどモテる。
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花を体現する桜の名を冠した女神。
それが姉さんを表す言葉。
別に本人はそんなつもり全くないのに、外からの評価は高いと言うわけだ。
特別性格が悪いわけではないから、見た目に釣られた人たちはそのまま中身にも惚れるわけだ。
まぁ、理解出来ないわけではないけれども。
だがしかし、
「おはようございます、桜さん。お迎えにあがりました」
これは今までとスケールが違う。
一般家庭の玄関に当たり前のように存在しつつ違和感バリバリの黒塗りの車に、思わず頭を抱えた。