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ご愁傷様、精々死なないようお気をつけて? ~私を罪人扱いした義家族は神様から大罪人扱いされるのですね?~

掲載日:2026/04/04

 この世界を創ったという創造神は人類という不完全な存在を愛す偉大なる存在だという。

 しかしそんな慈悲深き神ですら人類すべてを愛す事は出来ず……あまりに邪悪な存在であると見なされた者には『天誅の印』という刻印を刻まれる。


 これは創造神が人へ与える執行猶予。

 神が常に見張っているという警告の証。

 この印が顕現した者が近い未来で神に背く行いをした時――神はその個人を尊重せず、惨い方法で死へと導くとされている。


 そんな罪人の証が……私の項にはある。


 この痕のせいで誰もが私を忌み、嫌い、遠ざけた。

 気味悪がられるのなんて当然で、家族ぐるみで夜会に出席しても、誰も社交辞令の挨拶すらしにはこない。

 私が、『罪人』だから。


 けれど、私は知っている。

 この証が神様からつけられたようなものではない事を。


 幼い頃。物心がついて間もない頃。

 家族は私を地下室へ押しやって、この項に焼き印を入れた。

 多くの歴史書に記された『天誅の印』そっくりの焼き印を。


 何故そんな事をしたのか。その理由は単純だった。

 私は家族にとって邪魔な存在でしかなかった。それだけだ。


 私には今の母とは別に、血の繋がった母がいたらしい。

 幼い頃、私が物心つく前には亡くなった母と父は政略結婚の弊害で酷く折り合いが悪かったとか。

 そして父は、母の喪中が明けるのを待たずして愛人とその連れ子を家に連れてきた。

 愛人の連れ子は私より一つ年上の少女だったとか。


 父や義母にとって私は『自分達の恋路の邪魔をした女の子』。

 義姉にとっては『自分が得るべき侯爵家の正妻の子の地位を奪った女』、そして『両親の関心を奪いかねない女』。

 気に入られるはずもなかった。


 義姉はありもしない罪を私に擦り付け、義母はそれを聞いて激昂し、罰として折檻した。

 そしてある日。

 赤子よりもある程度発達した私であれば誤って殺す事もないだろうと、家族は私に焼き印を入れたのだ。


 その時の恐怖も、痛みも絶望も、何もかも覚えている。

 街へ出て、屋台で串焼きが焼かれる音を聞くだけで気分が悪くなるくらい、当時の記憶は私にとってトラウマとなった。


 そんな幼少期、生まれたばかりの頃から私を見てくれていた乳母だけが私の救いだった。

 彼女は私を庇い、元気付けてくれていた。

 けれどそんな彼女は家族から解雇され、家を追い出されてしまった。




 それから私はずっと一人。

 成長し、王立学園へ通うようになっても、誰もが私に近づこうとはしなかった。

 ……いや、正確には数名だけいた。私が惨めな姿を晒すだけで喜ぶような人は。


 学園内。

 誰かに足を掛けられて私は転ぶ。


 傍で小さく嗤われる気配がある。

 顔を上げると、ペトロネラお義姉様とそのご学友達の顔があった。

 彼女達は『神様からの罰よ』と囁きながら逃げていく。


 殆どがお義姉様達のように離れるか、遠目から睨むか。


「大丈夫か……」

「いけません!」


 たまに、声を掛けようとするもの好きもいたけれど、そういう人だって、私がその相手を見るよりも先に他の生徒に引き離されていってしまった。


 ――『ナターリエ・ヘルツェルは罪人だ』というのが、世間が私に下した評価だった。


 ……それでも構わなかった。

 どれだけ過酷で寂しい人生だとしても、私には生きがいといえるものがあったから。



***



 休学日。

 私は領地の教会の炊き出しに協力していた。


 ヘルツェル領は家族の散財のせいで貧困層の割合が他の領地に比べて大きい。

 私は暇さえ見つけては生活に苦しむ民の為に施しをする教会の手伝いに繰り出していたのだ。


 とはいえ、『天誅の印』の話は平民の中でも有名な話。

 私がヘルツェル侯爵家の娘である事や、印持ちである事まではわからずとも、項の印を見られてしまえば恐れられたり、嫌悪の対象として見られてしまう。

 とはいえ、食事を出す手前、長い髪を下ろしたままという訳にもいかなかった。


 だからこそ私は平民のような装いに加えて髪を一つに纏め上げ、更に外套のフードをしっかり被った状態で教会の手伝いに買って出ていた。


 元々教会は来るもの拒まずの姿勢である為、私が手伝いに名乗りを上げても大して怪しむ事もなく、受け入れてくれ……気付けば教会の関係者の方とも五年以上の付き合いとなっている。


 火や何かが焦げる香りなどが不得意だし、料理の経験もない為に、私はいつも、炊き出しの開始予定時刻から少し遅れて参加する。

 この日もそうだった。


「どうぞ」


 私は大きな鍋から器に、温かなご飯を装う。

 それを受け取った少年は、器だけを乱暴に奪うとどこかへと走っていってしまう。

 彼の服は破れたり汚れたりしていて、彼自身も酷くやせ細っている。

 余程生活に余裕がないのだろう。

 彼の背中を見送っていると、視線の先、ぶつかりそうになった彼を半身でよける人物がいた。


 黒い、上質な外套を身に纏う、長身の男性だ。

 彼もまた顔を隠しているが、その身なりから相当高貴な立場のお方である事は察せられる。


「ハルト様。お久しぶりです」

「久しぶり。今日も、手伝わせていただいても?」

「勿論です!」


 近くの司祭が青年――ハルト様の申し出に頷いた。


 ハルト様は数年前から、一年に数回程の頻度で炊き出しに参加してくれる人物だ。

 ここ一、二年で急激に背が伸びたので、恐らく年代は私と同じくらい。

 それ以外に彼が教えてくれたのは、彼の生まれも育ちも、我が領地ではないという事くらいだ。

 そんな彼が何故わざわざここの炊き出しに来てくれるのかはよく分からないけれど……彼はその身なりにそぐわず、本当によく尽くしてくれる。


 教会の人達も非常に助かっているそうだった。


「まだ通っているんだな」

「勿論です。私としては……ハルト様に同じ言葉を差し上げたいところですが」

「それもそうか」


 炊き出しの列が解消されたことで生まれた空き時間の中、私達は言葉を交わす。


「ずっと気になっていたのだが」

「……はい?」

「虚しくはならないのか」


 ハルト様の声が潜められる。

 周囲の方々に聞こえるのを避けたのだろう。


「虚しく……ですか?」


 私もその気遣いを汲んで囁いた。

 ハルト様が頷く。


「君が評価や称賛の為に他者へ尽くしている訳ではない事は分かっている。だが……それでも、礼一つ貰えず、寧ろ警戒するような眼差しを向けられる。それは、虚しくはないか」

「ないですね」


 答えは自然に出た。

 外套の下でハルト様が小さく息を呑む。


「心に余裕を持てない人程……過酷な状況に追い込まれている事が多いのです。彼らは生きる事に必死だから、感謝する余裕も持てない。……だから私は願う為にここにいます」

「願う?」

「ここに足を運ぶ方々がいつか……私や、司祭様方のこの行いの中に込められた温もりに、ほんの少しでも気付いてくれますように。そんな願いです」


 私は昔を思い出して笑みを深める。

 脳裏に過るのは、幼少の頃、私を助けてくれた乳母の姿だった。


「私も幼少から、自分の生が幸福なものだとは思えませんでした。けれどたった一人、何の見返りもなく手を差し伸べてくれた人の優しさに支えられてこれまで生きてきました。自分を見てくれている人がいる……差し伸べてくれる手がある……そう思えるだけでも、救いになる事だってあるのです」

「そしてその救いに気付けたときこそ、彼らの心に余裕が生まれた……今より改善された環境にある証拠であると」

「はい」

「……そうか。やはり君は、すごい人だな」


 すごい人。

 そんな評価をされたのは初めてで、私は驚いてしまう。


「どうかしたか?」

「いいえ……そんな事を言われた事はなくて」

「それは君がここでの活動を大っぴらにしていないからではないのか」

「いえ……仮に知人に明かしたとしてもそのような評価にはならないでしょう」


 家族にとっては民がどれだけ苦しんでいるのかも、彼らに手を差し伸べる事も無意味な事だ。

 加えて、私のような印持ちがするような事など……寧ろ愚かしい事だと罵られるだろう。

 

 それに自分自身でも、私のこの行いが素晴らしいものだとは思わない。

 だって本来ならばこの地を治める我が家が、この貧困問題を解決しなければならない。

 ここで炊き出しをしたって、根本的な解決にはならないのだ。

 現状を変える力を持たない私は、民の税で散財する家族たちと何ら変わらない。


「ナティ……」

「さあ、そろそろ片付けの時間ですね。残りも頑張りましょう!」


 初対面の時、私が名乗った愛称をハルト様が呼ぶ。

 それを遮るように私は片付けを始める。


「……ああ」


 ハルト様も同意を示し、空になった器の回収を始めた。




「今日も助かったよ。どうもありがとう。また気が向いたら足を運んでやってね」

「はい、また」

「今日はお世話になりました」

「お世話なんてそんな。ハルトさんも、気が向いたらまた」

「はい」


 炊き出しの片付けも終わり、私とハルト様は教会を後にする。

 私達は暫く他愛もない話をして道を歩いていた。


「俺はこっちに馬車を待たせているから」

「遠方からいらしてるんですものね。お気をつけて」

「ああ。……なあ、ナティ」


 別れを告げるも、ハルト様は足を止めたままだ。

 不思議に思っていると、彼は私を真っ直ぐ見据えてた。


「フードを、取ってくれないか」

「……え?」


 予想だにしない頼みだった。

 私は頭が真っ白になる。


「いや、君は出会ってからずっと顔を隠しているだろう。もしかしたら俺と同じような事情なのではと思って敢えて触れはしなかったのだが……。君と接していくうちに、君の事をもっと知りたいと思ってしまって」


 ハルト様は自分のフードに手を掛ける。


「君が許してくれるのなら、俺も顔を見せる。どうか、君の事をもっと知る機会を――」

「っ、む、無理です!」


 ハルト様が私の事を知りたいと思ってくださっている。

 その事はとても嬉しかった。……けれど、それでも許容は出来ない。

 絶対に見せられない。


 だって私は『印持ち』だ。

 それに、彼が貴族であるならば私の事を知っていてもおかしくなかった。


 私は少なからずハルト様を好意的に思っている。

 わざわざ遠方から赴いてまで領地の民に施しを与えてくれるような優しい人だ。

 そんな彼が私の正体を知り、そしてこれまで築いてきた関係が瞬く間に崩れてしまえば――。


 そんな恐ろしい事、起こっては欲しくなかった。


 私の言葉が強く、大きなものだったからだろう。

 ハルト様はハッと息を呑んだ。


「……すまない、ナティ。怖がらせるつもりは、なかったんだ」


 怖がる……その指摘を聞いて初めて、私は自分の手が震えていることに気付いた。


「君が嫌だというのなら、勿論無理強いもしない。だから……」


 彼はこの時。確かに身を引いてくれようとしていた。

 けれど、この後の展開は私の望むようにはならなかった。


 ――突風が吹く。


 私のフードが絡め取られ、頭から滑り落ちる。

 慌ててフードを掴もうとしたけれど、手が震えていて上手くできなかった。


「あ……っ」


 そして、私が慌ててフードを直そうとするよりも先――


「……ナターリエ・ヘルツェル?」


 困惑の入り混じった声が、ハルト様から聞こえた。

 頭が真っ白になる。顔から血の気が引いていく。


 やはり彼は貴族なのだろう。私の名前と顔を知っている。

 もしかしたら、学園で顔を合わせた事があるような人物だったのかもしれない。

 私はその場から崩れ落ちた。


 教会に知らされれば、私は今後司祭様達に追い出されるかもしれない。

 ハルト様とは今日までのような関係を持続することが出来ないかもしれない。

 そんな不安に襲われた。


「っ、ナティ……!」


 しかし、膝から崩れ落ちた私をハルト様は支えてくれた。

 それから、私の代わりにフードを被せ直してくれる。


「……すまない」

「っ、いいえ……私の、不注意です…………でも」


 ハルト様が私を抱き寄せ、背中を撫でてくれる。

 どの様な考えでそうしてくれているのか、私にははかりかねてしまったけれど、それでも優しい温もりが嬉しくもあり、離れがたくもあった。


「…………許されるのなら、きらいにならないで……」


 気が付けば、そんな事を口走っていた。

 涙が溢れては頬を濡らしていく。


 ハルト様の、息を呑む気配があった。


「……ならない」


 ハルト様は私を強く抱きしめる。


「ならないよ。俺は君の優しさを何年も見て来た。それが嘘かどうかは……自分で決められる。だから――ナティ」


 ハルト様は私の頬を優しく撫でた。


「君の印を……少しだけ見せてくれないか。君を、助けたい」


 人に、印を見せる。

 そんな事はしたくなかった。


 けれど……ハルト様の『助けたい』という言葉が揶揄う為の虚言の様にはどうしたって思えず。

 私は小さく頷いて、今度は自らフードを取ったのだった。



***



 それから数日後。

 私の心は酷く穏やかだった。


 その理由は、数日前の炊き出しの日……ハルト様とのやり取りにあるのだが。

 これまででは考えられない以上にふわふわと浮足立っている感情をどうにか抑えながら学園生活を送っていると……


「きゃあっ!」


 突然、私の前に出たペトロネラお義姉様が独りでに転んだ。

 丁度階段近くの出来事だった。


「この子……っ、私を階段からつき飛ばそうとしたわ!」


 ペトロネラお義姉様がそんな事を高らかに言いだす。

 すると周囲の生徒達はその言葉を信じ、私へ非難の視線が一斉に集まった。


 ……そんな時だった。


「何事だ」


 ――聞き覚えのある声が聞こえる。


 どうして今まで、気付かなかったのだろうと私は思った。

 その声は何度か私へ手を差し伸べようとした声であり……数日前、私を愛称で呼んでくれた声だった。


「は、ハルトヴィヒ殿下……っ!」


 ペトロネラお義姉様が甘えるような声でハルト様――ハルトヴィヒ王太子殿下を呼ぶ。

 彼は静かな眼差しを私達へ向けながら近づいてくる。


「私の妹が……っ、『印付き』が、私の事を階段からつき飛ばそうとしたの!」

「印付き……? 彼女が?」


 ハルトヴィヒ殿下はペトロネラお義姉様を睨むと、私の前に膝をつく。


「彼女が印付きというならばこの目で確認しよう。言っておくが、王宮の書庫には簡略化されていない『天誅の印』の模写が存在する! 偽りであればすぐに分かるだろう」

「…………え? か、簡略化……? 模写?」


 ペトロネラお義姉様が唖然とする。

 ハルトヴィヒ殿下はその反応を鼻で笑った。


「ああ、王城関係者でなければ知らないのも無理はないな。あの印は神が自ら烙印するもの。非常に細かな神聖文字等が組み込まれている上、偽装などされてはたまったものではない為に、王城外に出回る書物に関しては全て簡略化されているのだ」

「そ、そんな……っ」

「別に焦る事はないだろう? 何か後ろめたい事がある訳でもないのなら……」


 そう話していたハルトヴィヒ殿下は驚いたようにペトロネラお義姉様を――彼女の手の甲を見た。

 ペトロネラお義姉様も、そして周囲の人々も同様だ。


 彼女の手にはなんと、泥のように黒い煙が発生し、そこからは――ある印が浮き上がっていた。


「ああ、何だ。……どうやら俺が証言する必要もなさそうじゃないか。本物の『天誅の印』を、わざわざ見せてくれている者がいるのだから」


 ペトロネラお義姉様の悲鳴が、廊下に響き渡るのだった。



***



 その後。

 ハルトヴィヒ殿下の証言によって、私の項の印がただの焼き印である事が証明された。

 彼の言葉が無くとも、ペトロネラお義姉様の手に刻まれた印を見れば、全くの別物である事は明らかであっただろう。

 更に驚いたのは、その日帰宅すると、父と義母にも同様の印が現れていたという事。


 ハルトヴィヒ殿下は神のみが刻む神聖な印を穢し、あろうことか罪なき人間を悪人に仕立て上げようとした罪として家族三人から貴族籍を排籍。

 更に国外への追放となった。


 とはいえ元貴族なうえに『印持ち』な三人がまともに生きていく事は出来ないだろう。

 厄介事に巻き込まれてしまうか、野垂れ死ぬか……はたまた『天誅の印』が発動して惨たらしく命を落とすか。

 自分の人生を滅茶苦茶にされ続けたのだ。同情はしない。

 ただ、これ以上家族の事を考えて心が荒むのは、あまりにも無駄だ。

 だから私は、家族がまともではない最期を迎える事を最後に願ってから、それ以上考える事をやめた。


 家族が追放されてからの私はというと、家族の領地を新たに治める事になった侯爵の養子として引き取られた。

 かつて私を慕ってくれた乳母を使用人に迎え入れたいと希望したところ、今の義父は快諾してくれた。

 こうして喜ばしい再会を果たしつつ、新たな人生を謳歌し始め、数ヶ月が経過した頃……私は気付いたら、何故かハルトヴィヒ殿下のお茶飲み友達として定期的に王城へ呼ばれる事になっていた。




「君は言葉遣いなどから教養を積んでいるはずなのにあまりに細身だったから、貴族だが何か事情を抱えている女性なのではないかと思っていたんだよ」


 ハルトヴィヒ殿下はお茶を飲みながらそんな事を話していた。


「最初は偶然、ヘルツェル領を通った時に君を見たのがきっかけだった。教会の人間でもないし、相手にどれだけ邪険にされようとも明るく振る舞う君の姿が気になって……それで話してみたい、と。君のように心からの善意を持っていたわけではないんだ……恥ずかしいことに」


 気付いたらこうして何年もこっそりと顔を出すようになっていたとハルトヴィヒ殿下は苦笑する。


「でも、殿下は私がナティだとわかるよりも前から、学園で何度も私に手を差し伸べてくださっていたではありませんか」

「でも君の手を取る事は出来なかっただろ? それに……あれだって君の影響を受けての事なんだ」

「私の?」

「……ナティなら、そうするだろう、と」


 殿下の顔が赤くなる。

 それにつられて、私の顔にも熱が溜まった。


「……頻繁に会いに行く事は出来なかったけど、それでも君の事をはずっと頭から離れなくてね」

「そ、そんな……光栄、です?」


 暫く、何ともそわそわとした居心地の悪さが付きまとっていた。

 そんな空気を吹き飛ばすように、ハルトヴィヒ殿下が大きく咳払いをする。


「今はまだ、環境の変化などに追い付く事でやっとだと思うし、何より悪意に恐れない気ままな生活を送って欲しいからあまり先走った行動はしないが」

「先走った……? はい」

「一応、長年君の事ばかり考えている男がいる事くらいは……たまに、思い出してくれると嬉しいな?」


 上目遣いに、あざとく私を見る顔がある。

 ……ハルトヴィヒ殿下は非常に美しい顔立ちの男性だ。

 お人形のような中性的な顔立ち……その白い肌に可愛らしい朱色が灯っていて……


 ――嫌でも、その言葉の意味を理解してしまう。

 彼のそんな言葉に対し、私は……


「……ひゃ、い」


 私は、何とも間抜けな返事を返す事しか出来ないのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました!


もし楽しんでいただけた場合には是非とも

リアクション、ブックマーク、評価、などなど頂けますと、大変励みになります!


また他にもたくさん短編をアップしているので、気に入って頂けた方は是非マイページまでお越しください!


それでは、ご縁がありましたらまたどこかで!

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