天封針は何故?
凄まじいスピードで間合いに入って来たマリアードだったが、ジョージとモリスの詠唱は慣れた物で素早かった。「いくわよ雷神破天魔ー!」まずはモリスが唱える。「はぁぁ滅皇炎殺破」ジョージも引き続く。「破天魔は音よりも速し。貴方にかわせるかしら」言い終わると剥き出しのドームから見える空が黒くなってたちまち雷がマリアードを襲う。一発が当たったようだ。「くっ」膝を付くマリアード。電撃で痺れて動けないようだ。
ジョージは「私の最高の技だ。その状態ではかわせないだろう。さぁ炎のダンスを喰らえ!」
ゆらゆらとジョージの手の平が炎に包まれて蜃気楼の様になる。かなり高温だ。
踊るように炎の波がマリアードを襲う。
だが寸での所で炎が消える。「何?」ジョージが驚く。どうやらマリアードは魔剣チェンジを行ったようだ。魔剣が全ての炎を吸い取り燃え盛っている。そしてその炎は未だ呪文詠唱中の譲へと向かう!
偶然にも水の精霊を呼び出していたのは幸運だった。「出でよ河流水圏晶!」ザパーンと言う音と共に水の壁があっという間に出来て炎を消し去った。
モリスが「譲!ケアマネージャーの修練は役に立ったみたいね。防御系のスキルなら貴方に任せて大丈夫そうだわ」
魔剣モードに入っているマリアードには詠唱呪文はあまり効果が無いようだ。全部吸い取られてしまう。
かと言って剣で切り込むには第一師団ギューンの精錬兵50人ほどが残っている。膠着状態だ。
そこに静香王が割り込んでくる。「譲、何ちんたらやってるのかしら?剣もろくに使えないの?」
譲は「まぁ一応剣術の特訓も受けたには受けたんだけどね……」
「マリアードとかいう女が下がってくれて助かったわ。どうもおかしいわね……」
何が?譲が問う。「あの額の紋章何処かで見た事あるの」まぁいいわ。ほらレイピア!
「ええ、私も剣を取って戦うの?」「後ろに居るだけでいいわよ。あの程度のレベルの兵士なら軽々屠る程度の修行はしてきたから」
シドは「全くイライラさせてくれる奴らだ。さぁお前達ギューンの敵討ちをするチャンスだ。前に出て戦え!」第一師団の残党にそう命令する、が及び腰の彼等。まぁ無理もないがシドにケツを叩かれては致し方なしと言った感じで前線に出てきた。
「くーっ実戦で剣を使うの初めてなのよね。ワクワクするわ!」
譲が言う「ええ?そんなので大丈夫なの?」聞くか聞かないか一瞬で身ぐるみ剥がされた第一師団の兵士達。ギューンと言う精神的な支柱を失ったのは打撃が大きかったようだ。 すごすごと後ろへ後退していく。「譲、だから言ったでしょ。後ろに居るだけでイイって」
それにしてもあのマリアードと言う女。気になるな。天封針だと思うけれど何故?
まぁ剣を付き合わせれば分かる事か。マリアードもやる気満々のようだ。