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テイルズオブサイレンス  作者: 敬愛
三人の日常 ~夢見ていた頃~
8/100

歳を取るという事

「ねえねえサマークローズ超面白いよね」

 珍しく静香が授業中に話し掛けてくる。

 

 サマークローズというのは映画で今から千年後の未来、復活した伝説のヤンキ-がPCウイルスを作り上げた東大卒の天才と、格闘ゲームで勝負をし負けるのだが、必死にコンピュータの勉強をし、ならばこちらもとウイルスを発明しち

ゃってお互いアンドロイドをハッキングし合うという設定の良くわからないSFアクション3D映画で、静香のお気に入りのシーンは最後その伝説のヤンキ-が惜敗した後、そのお婆ちゃん百歳が出てきて、わたしゃ年期が違うんだよとばかりにNASAやペンタゴン、CIAのコンピューターを次々ハッキングし、ガンダムみたいな秘密ロボットを遠隔操作し、東大卒のアンドロイドをめっちゃくっちゃに破壊し、アメリカの核ミサイル誤射を止めるというシーン。


「凄いよね。百歳だよ。誕生日百回迎えちゃってるんだよ。それがコンピューターって…… 痛快だし、未来のお年寄りのビジョンみたいで良くない?」

「まぁそうだね」


 百歳……楽じゃないよ。本心ではそう思う。アルツハイマーや脳梗塞後遺症で認知症を発症したまだ七十にもならないお爺ちゃん、お婆ちゃんの地獄絵図のごとき生活を実習で見た事がある。大学を卒業したら最低5年は介護の仕事して社会福祉士も、ケアマネージャーも両方取ろうと思っていた俺もさすがに心が折れた。


 あれは人間の生活じゃない。人権剥ぎ取られている。運悪く未だに身体拘束を行っている施設をみたせいもあるが、朝と夜の顔。この違い経験したものしかわからない。朝はニコニコしながらオムツを替えたり、体位交換を行ったり、食事介護を行ったり、それはそれは平和なものだ。


 しかし、夜になると始まる徘徊。目的も無く歩き回り排泄物をトイレではない所にしたり、それを弄便したり、身体拘束されてる利用者さんはオムツの中に強制排泄。痰が絡んでも吸引してもらえず、コッポ、コッポ。施設の職員は「いっそ死んでくれたら楽なんだけど」なんて笑って言う。気持ちもわからなくもない。夜それは地獄。


 人間の本能がむくむくと首をもたげる無間地獄。若い頃は綺麗だっただろうに、男前だっただろうに、一人では何も出来ないのだ。歌の話じゃない。確かに夢の中で現実の行動を行ってしまうのだ。静香もそれを乗り越えてきて今、横で静かに笑っている。ちょっとカワイイなと思った。俺馬鹿。健人が帰ってくるまでは必ずあいつの代わりを成し遂げる。そう心に誓っているんだ。


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