サンダードラゴン
譲達はマーダの神殿が頂上にあるクレオスの山に登頂している所であった。
六合目と言った所か。ジョージが「ここからは空気が薄くなる、譲ちゃん気をつけろよ」
「モリス、俺達がマーダの神殿行った時もここからキツかったよなぁ……」
モリスは全く何時の話をしてるのやらと言った顔で「まぁそうだったわね」と答えた。
「天候がここから変わり易くなるからそこが注意するべき所よ。風速三十mを越える事もあるわ。雷鳴と豪雨で視界が奪われる上に落雷で命を落とすセイント志望もいたわね」
モリスは昔を思い出すように言った。
そう言っている傍から天候が急に変わり暗雲が立ち込めてきた。ジョージは「やっぱりあいつか……」モリスも「どうやらそのようね……」と思案顔で言った。そして「ジョージ、譲を頼むわ。私一人でやる。」
ジョージは驚いた顔で「モリス何を言っている!?相手はA級だぞ。かつて……」
ジョージの話を遮って「黙ってて。昔の私とは違う。任せて。早く行って」
「分かった。死ぬなよ」「もちろん」
そう言って二人はハイタッチをした。
譲が最後に見たのは龍の尾っぽが天から覗く姿だけだった。「ねぇ、ジョージあれは?」
「サンダードラゴン。マーダの神殿の守護獣だ」
「ダメだよ!モリス一人を置いていくなんて!」「大丈夫。あいつがあれだけ強い意志を見せるのは珍しい事なんだ。勝算があるんだろう。いくぞ、譲」
肯く事しか出来ない譲だった。
「さぁもっと近くまで来なさい」モリスはサンダードラゴンの落とす雷を避けながら間合いをつめようとしている。猛り狂ったサンダードラゴンは雷を落とし続けながらモリスに迫ってくる。「さあ!あっ!」モリスは山道の脆い所の崩れで体勢を崩し転落しそうになった。危ない所にモリスは盗賊のように技を放った。銀の糸がサンダードラゴンに絡まる!「くたばれ!結紮銀糸法!」纏わりついた銀の糸でサンダードラゴンは粉々の肉片となった。「ふぅ。楽勝ね、とは言えないか」くすっと笑ってモリスは譲とジョージの跡を追った。