謀反の気
すいません。お待たせして。全く文才の無い男ですわ。儂は。
「シド様。いつもマルクの方をご覧になられているようですが、何か動きでもあるのですか?」
ギューンは最近展望台でマルクの方を見ているシドに領土拡大の提案をしようと思っていたのだが、この男腹黒く野心に燃えているので隙あらばシドを……等と考えている。実際問題シドはいつも丸腰で体は身の丈は高いが歳不相応に痩せている。
ギューンはみなし子だった自分を第一師団の団長に指名したシドに恩義を感じながら何だか少しまどろっこしい気持ちを抱いているのだ。第一師団と第三師団では天と地ほどの実力差があるのでマリアードがボンゴに勝利したからといって実の所ギューンは全く心配はしていない。だが元々血の気の多い男で出世願望の強い男なのだ。
シド様は何をお考えなのやら…… ふとシドの力を試したくなったギューンは手近な所にあった石ころをシドに向かって投げつけようと思い石ころに手を伸ばし握って……投げようとしたが石ころはパキッと小気味のいい音を立てて割れた。
シドは言った。「ギューンよ、急用ではないのなら去れ」
「は!」(強く握り過ぎたか……私も案外臆病だな。)フフフと1人笑みを浮かべギューンは納得していた。
「愚かな」シドは呟いた。