エルクス
大僧正が言う。「あれは雷雨の日じゃったかなー?」
「え、ドーム状だし窓も無いみたいですけど」譲は矛盾点を突いた。
それがエルクスの無くなった事と関係があるのかもしれない。
「遥か昔シドがまだ青年だった頃の話じゃ。あの男は凄まじい欲望の持ち主じゃった。世界を征服し全ての女を手に入れたいと思っていた。何故分かるのかと?かつて儂の弟子じゃったからじゃよ。雷系の呪文を主に教えておった。しかしあの男の本性を見抜いていた儂は禁術までは教えなかった」
「そして運命の日に生まれた男の子フラウが15歳になった時その美しい顔立ちに目を付けたシドは生まれつき持っていた闇の属性と教えてもいない禁術の雷系呪文を駆使し橋・・・エルクスじゃな、あれは元々男女が性交の欲望に溺れ堕落するのを抑えあくまで転生で長く生きるために住む所を分かつためのものだったのじゃ。それをシドは破壊した」
何故ですか? 譲は聞いた。
奴の理想は分からないが、ただ儂の元を去る時俺は人間だ!人間の欲望は果たされるためにあるのだと言った。それは危険思想だったのじゃ。この世界では……。
「そうだったんですか……」
だから人間界にアクセスを試みたのだなと譲も静香も理解した。