一時帰還
謙達は都に帰ってきた。セイントのジョージとモリスが管理責任者となっているピコルームに行きケアマネジメントに成功した事を報告する。
「ふーん、あのクリスタルさえあれば誰でも出来るからね。」とモリス。
「しかしピーターからの報告によるとドブロブの毒液を中和する薬剤を注射したそうじゃないか」
「ピーターさんて誰ですか?」と謙は聞く。
「ああ、君に解毒剤を渡した男だよ。肉断骨決の勇という2つ名を持っている」
「へー」
「まぁ、君はあちらの世界で医学を学んでいたらしいから別に不思議はないがキューアとなる者は基本3本指なので注射は苦手なのだよ」
「え、みんな手袋してるから気付かなかった……」
「彼らもコンプレックスなんだ。治癒を行う時にバーストライアングルという一種の印だね。それを作る為にキューアは基本的に3本指なんだ。昇格する時に指を2本移植する」
「うーん、何か気持ち悪くなってきた」
「はっはっは。まぁ君達の居た世界とは少し勝手が違うかもしれないな。」
そう言ってジョージは梅昆布茶を啜り、モリスはブラックコーヒーを必死にふーふーしながら飲んでいた。
梅昆布茶を美味そうに飲むジョージと猫舌のモリス、他の人々もみんな優しかった。
譲が着々と成長している間に静香はマルクの王、フラウ・アリス・ザックハルトに謁見していた。大僧正と共に。なんとマルクの王は現在女性が務め上げているのだ。
普段騒がしい大僧正も口をつぐみ恭しく膝まづき、静香も精一杯の礼を尽くす様に、右手を軽く左わき腹の辺りに留め置き礼をした。