私は夢を見ない
私は夢を見ない。かつて見た事があったような気もする。寝てる間は退屈する事も無いし、無理に夢など見る必要も無い。しかし分からないのは私の両親だ。どうでもいいと言えばどうでもいい。ただひどくお世話になった様な気がして夢で会えたらなぁなどと時折思うが、私にはシド様という絶対的な君主がいるわけで、そしてまるで父親のようにお慕い申し上げている。
ただこの記憶障害はシド様に出会ってから。それも急にだ。その点に関して少々疑いを持っているのも事実ではある。私が記憶を取り戻したらどうなるのだろう?気が狂うのだろうか?
それとも暖かい団欒でもあったのかしらね?今となっては本当にどうでも良い事だけど。
私はまだ一兵卒に過ぎないのだから。力をつけてシド様の大願を成就させたい。危険かもしれない……。ふとよぎる。私はシド様の事を殆ど知らない。しかし……。そこで思考が途切れた。代わりに今日が0のつく日である事を思い出す。
鎖帷子では少々心許無い。防具屋で甲冑を買うか。動きは鈍るが私は死ぬ訳にはいかない。大会ルールでは相手を殺してはならないという規定があるにはあるが万が一という事もあるしな。
ああ、気付いたら下着姿で寝ていたようだ。この癖も何だかフラッシュバックする体験のような気もするが気のせいだろう。
しかし一応女なのにはしたない。私はシャツに青色の所々穴の開いた(これは何という名前であったか、ええい!)服を着て出かけた。