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テイルズオブサイレンス  作者: 敬愛
三人の日常 ~夢見ていた頃~
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講堂にて

 大学の講堂、いつ入っても息苦しい。基本人がたくさんいる所は苦手だ。教授様は今日もノーマライゼーションの重要性を説いている。そりゃ健常者にも障害者にも等しく人権という物がある。最初ミケルセンが初めて用い、ニルジェが生活サイクルにこれを導入した。それは高校の時から知っている。


 ではこの講堂での授業はノーマライゼーションの原則にのっとっているだろうか?小学生、中学生、高校生までは個別の机なのに、大学生になると途端に大人扱いだ。


 俺は犯罪者にはならないぞ。ははは、親殺しが何言ってやがるという声が聞こえた、ような気がした。15年前の話だろ。時効さ。すまない父さん、母さん。

俺はやっぱり少し捻くれて育っちまった。


 教授様のポジションは奪えそうも無い。肥溜めにぶちこまれてそれに溶けて行く。今の俺にはそれしか出来ない。カリカリ、カリカリ。隣の静香は熱心にルーズリーフに教授の言っている事を書き込んでいく。仕方ない見習うかと思うが、この牛舎の中の牛みたいな環境では飼い主の手でも舐めてやりたいところだ。その代わりと言ってはなんだが居眠りで涎を垂らす事としよう。講義はまだ始まったばかり。俺は財布の中に入れてあるハルシオンを誰にも見られないように一錠飲む。


 あの一件、健人の件。俺は人のいる場所では眠れない。自分の部屋でも眠れないというのに。丸三日間寝なかった事がある。流石に精神科に行って眠れませんと言うと、CTスキャンと脳波を取られ異常は無いようだから睡眠導入剤処方しとくね、と軽々ハルシオンが手に入る様になった。小さいクリニックはすぐに薬を出してくれるから助かる。ヤブでも何でも良いんだ。ただ俺は昔から悪夢を良く見るから眠るのが怖くておクスリが必要なんだ。すぐ眠くなった。九十分経って「譲終わったよ」その声を聞く寸前に丁度目覚めた。「後でノートコピーしておいてくれ」


 しょうがないなぁという顔付きで図書室に静香は向かった。

ちょっとフラフラするが頭がすっきりした。ハルシオンの半減期は何分だったか。まぁいいや。


 ついでにコーヒーでも飲むか。俺はブラックコーヒーが大の苦手で、ミルクと砂糖入りの茶色くて長いコーヒーしか飲めない。静香からはお子ちゃま扱いだ。ガキの頃から味覚が全く成長していない。味蕾が少ないんだろ。きっと。家政学の授業でそういう事を習ったような気がする。今は一人暮らしだから、家政学の講義は積極的に受けていきたい。クックパッドも便利だがレシピ多すぎ。でも料理は実践に限る。男の料理なら尚更。


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