ここは冷えます
「バトルチェンジ習得してきたぞ」
門番は怪訝そうな顔をして「お前がクラーケンを?」と言った。
「思ったより容易かった、さあ中に入れてくれ」
門番はひそひそ2人で話しながら女の出場者は滅多に居ない0の付く日が大会の開催日だから今はこの予約帳に名前を書いておいてくれという趣旨の事を言った。
「マリアード」そう記入してとりあえず闘技場を去った。
シド様の所に行くか……。
「シド様」
「ん、マリアードか」シドはまたマルクの方角の見える望遠鏡のある高台にいた。
「シド様ここは冷えます。玉座にお座りになり部下にそのような雑事は任せた方が良いかと」
「はっはっは、かりそめの王の座など興味は無いわ。それに人があまりいない。ふむ、墨の匂いが染み付いている。クラーケンを倒してきたか。ゆっくり風呂にでも入りなさい。女は身だしなみに気をつけなくなくてはな」
その背中は少し寂しそうだった。
バスタブに浸かり体を洗っているうちに額の痣がキュンキュンと痛んだ。「シド様のお姿を見かけ思いを巡らせるといつも痛むな。一体いつから付いたのやら」
タオルで体を拭き新しく手に入れた剣の方を引き抜く。シルバーで軽量の鎖帷子に黄色い鉄を編み込んだスカート、金属のブーツ。
ふん、この薄汚い剣を使っていた時とはまるで違うな。しかし魔力というよりも科学の力か……。私にはゴブリンの相手の方がしっくりくるが。まぁこまめに使い分け魔力も科学力も鍛えるか。
髪を拭いたマリアードは天蓋付きの柔らかそうなベッドを無視してソファに寝転んだ。