城戸組の事務所
鬱蒼と雑居ビルが生い茂る街の中心部、一階にサラ金、二階に雀荘、三階にマッサージと称した風俗店が入っているビルの前に健人はいた。このビルの四階に城戸組の事務所がある。
健人はエレベーターの中で誰かと一緒になれば不安で吐きそうになる事を懸念して、四階まで階段を使った。
安っぽいスニーカーが階段を一段登る度にネチョネチョと嫌な音を立てているような気がした。軽い目眩で自分が上に行っているのか下に行っているのかわからない、地獄に向かっているのではないか。そんな錯覚を起こさせた。
四階、三つテナントがあるようだったが、中央の一部屋以外は空き室のようだった。その中央の部屋には何も表示はなかったが、人の気配とラジエーターの回る音がした。
健人はゴクリと唾を飲み込んでから懐のピストルを確かめドアノブに手をかけた。「ガチャリ」
鍵は掛かっていなかった。
健人はドアを開けた。ピストルを片手にしながら。
「白石組系霊王会の愛田健人だ!城戸は何処だ!」
「!」
健人は驚いた。十数人の組員と思われる人々は三十畳はあるだろうか、その畳の上に座布団を敷いて座りながら寝てる…… 嫌死んでる!
「健人君待っていたよ。」
その声は顔はシドだった。
「シド様一体これは……」
「前世のカルマか、今世のカルマか。みんな死んでしまったよ。デモンズティアを飲んでね。君がくる事はわかっていたから。」
そういうシドの瞳は左目が緑に右目が赤に輝いていた。
「この子達も連れて行こうと思っていたんだけどやっぱりダメだったみたいだ。」
「健人君、君だけでも連れて行くよ。大丈夫、前言っただろ。この薬を飲めば自分の進む道が開ける。思い通りにね。」
「さあ……」
健人はシドの瞳に吸い込まれるようにその薬を鼻から吸った。