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鉄砲玉
「おい健人鉄砲玉行って来い」金田は言った。そして拳銃を渡した。
六発の弾丸と冷たい銃身。それが二十歳そこそこの青年にどれだけの恐怖を与えたか。ましてや鉄砲玉等……
「これをやり遂げられたら、お勤め終わり次第空席の若頭にしてやる。どうだ俺はお前の事を誰よりも深く考えているだろう?」
冷たく歪んだ微笑を浮かべながら。
「心配するな。相手は組員十数人の弱小な組だ。ターゲットは城戸組組長の命、何やらシャブでもヘロインでも大麻でもない新種のドラッグで稼いで勢力を拡大しかけてる。おそらくMDMAみたいなもんだろう。少し目障りだ。」
「断ったらどうなるんですか?」健人は聞いた。
金田は深く頷いた後「お前に行く当てがあるのか?ふふふ。ないだろう。ホームレスでもやるか?それならそれでいいぞ。小指は貰っておくがな。」
「わかりました。」
健人は城戸組に向かった。親に金を送る為だ、親に金を送る為だ…… もちろん両親は捜索願いを出しているくらいだから、健人から金が送られてきている事については頭の片隅にちらと浮かぶくらいなのだが。