静香の霊的?能力
「霊が見える」
静香がそんな事を言い出したのは卒業間近の一月頃の事だったろうか。最初静香は何を言っているのだろう? と思った。
「時々なんだけど白い鎧を着た男の人や女の人が見えるの」
「中世の騎士だろうか?」
俺は話を合わせてはいたが、静香は病気になってしまったのではないかと疑っていた。
「何か言ってる?」
「分からない。見たことも無いような金属製の衣服よ。最近、そう実地研修が終わってから。」
俺は聞いてみようと思った。実地研修で誰か亡くなられた? と。
「ううん、誰も死んでない。譲には話してなかったけど、私代々巫女の家系なの。私が生まれてから家族、親戚中、ペットすら死んだ事ないの。私、死というものに立ち会った事無いの。」
次に思ったのは憑き物じゃないかという事だ。現代社会ではもう見られないが、古代の伝統を受け継ぐ僻地の部族では狐等が取り付くことがある。日本でもかつてあった。
「ほら見て! あの窓!」
え? と思って振り返ってみると白い鎧を着た男女と思われる人間に角を付けた様な者達が五十人くらいいるではないか。その方向を見ている学生達は特に気に留めず勉強を続けている。しかしそれらの者達は一メートルくらい浮かんだかと思うとテレポーテーションのように消えた。
「静香、俺にも見えたよ。一瞬だったけど。」
「何なのかしら。嫌な予感がする…… 健人の身に危険が迫っているような。譲、あの神社に行きましょう。それから私の家に来て」静香は今にも走り出さんばかりの様子で俺の手を引っ張った。