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テイルズオブサイレンス  作者: 敬愛
三人の日常 ~夢見ていた頃~
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いなくなった健人

 今頃あいつ何してるかな。死んでいないだろうな?そいつは三年前忽然と消えた。卒業式の日、そいつの彼女は動揺していた。


「健人、何処行っちゃったの?」

朝方メールが来ていたらしい。「ヤバイ。俺もうダメだ。」と


 帰り道、健人の家にその彼女、静香と寄ってみると鍵はかかっておらず部屋はもぬけの殻だった。


 楽しい事ばかり喰って生きていける若い頃。この部屋で静香の作った鍋を食べたり、お泊り会をしたり。思い出が沢山詰まった部屋が今は、カーテンの無いマンション7階の日当たりの良い窓から、春の絹ごしされた清涼な光が差し込んで埃を照らしていた。


 静香は今でも健人を待っている。看護士を目指して。俺と同じ大学に通いながら。俺はというと大学に通いながらロックバンドをやっている。CDを出すと二千枚くらい売れる。インディーズ界ではそこそこ有名だ。ライブでも箱に千人入る。将来有望かもしれない。「Rising」という事務所に所属している。


バンド名は「Silence」


 ロックには合わない名前だが、静香の名前から取った物だ。彼女も気付いて結構喜んでいる。頑張ってねと。大学では社会福祉を専攻している。将来は福祉・医療の現場で頑張ろうと三人で昔約束した。健人と静香もこの大学に合格して三人で頑張ろうとした矢先、あいつはいなくなった。


 ご両親も捜索願いを出しているがこの三年間これといった情報は無い。全く神隠しでもあるまいに。でもどこかで元気でやってるはずさと俺は楽観視している。そうしなければ静香がマイってしまうから。 


 俺は両親を早くに亡くした。火事だ。両親は二階で寝ていた。俺は一階で父のタバコにライターで火を付け、ビックリして近くにあった灯油で火を消そうと思って。それで……燃えた。全部。


 5歳の時。逃げるのが精一杯だった。119も知らなかった。火災保険と両親の生命保険2千万が下りて来て祖父母に預けられて育った。もちろんどちらの家も俺を良くは見ていなかった。しかし1日1千円は必ずくれた。どういうわけかどちらの家でも1日1千円貰えた。


 食事が白米しか出てこない事があったので、ふりかけや卵を買った。それを良く覚えている。静香や健人と出会ったのもこの頃だ。


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