使いっぱしリ
健人コーヒー買って来い。若頭の金田が言う。「はい、わかりました。」
健人は人目につかないようにすぐ近くの自動販売機でブラックコーヒーを買った。組の事務所に戻って金田さんどうぞと差し出すとレザーの五十万はするであろうソファに足を組んでタバコを吸っていた金田、いきなり健人に飛び蹴りを喰らわせた。その後も殴り蹴りこう言った。「お前目ついてんのか!俺がいつも普通の缶コーヒーよりちょっと細長い砂糖の入ったコーヒーが好きだっての知らねえってのか!」
金田はキャメルを吸いながら甘い砂糖が舌に絡まってくるそのテイストがいたくお気に入りだった。
「すんません、すんません。久方ぶりに頼まれた物だから忘れていて。」
「ほんとポンコツだな。お前は。半年前ヤクザに追われてたお前を組に迎え入れてやったのも忘れたか?」
すんません……。そう言って健人は金田利栄の靴磨きを始めた。キュキュ、キュキュ。真新しいタオルとエルメスの靴が擦れ合う音が小気味良く聞こえてくる。
「ほぉ、靴磨きは一級品だな。アイスクリーム屋は危うく殺されかけたってのにな」
感謝してます。健人はそう言って靴に息を吹き掛けた。やりたくはなかった。ドラッグの売人等。しかしどうしても金が欲しかった。あの頃実家の肉屋が潰れかけていた。地区再開発とかで大型ショッピングセンターが出来てから客が全く来なくなったのだ。そんな時だった。悪魔の囁きがメールに入ったのは。