嫌な予感
そんな事とは露知らず静香と俺は現場実習に入る四年生になっていた。ここでしっかり成果を上げレポートを書かないと卒業できない。社会福祉士は主として相談業務を将来的には行う事が多い。静香が看護士の資格を取りたいと思ったのは大学に入ってからで、一応社会福祉士も取る。その後首都医校みたいなところに入学して看護士の資格を取る。そういうプランらしい。
静香もお年寄りは大好きでこれは先述したエピソード等からもわかると思うがとにかく敬愛の心を強く持ってる。両方持っていた方が有利なのだ。有利というかそういう個人的な打算的な考えではないな。いかに利用者さんの心に寄り添えるか。それには社会福祉の勉強も必要だという事だ。
静香は学校帰り必ずある神社に寄る。譲は来ないでね。と言われているがどうやら健人の帰ってくるのを祈っているらしい。
「終わったよ。待たせてゴメンネ。」
「何お願いしてるの? 教えてよ。」あらかた知っているのにあえて聞く意地悪な俺。「秘密。」そう言って寂しそうに笑った。俺も悲しくなってじゃあさじゃあさ何個お願いしてるの?そう聞いた。「うーんじゃあ特別ね。えーと三つよ。」
三つ? 看護士になりたいと健人帰ってきて欲しい以外に何かあるのか?両親の長生き? 世界の平和? 男友達がたくさん出来ますように?最後のはちょっと考えづらいけど静香の三つ目のお願いというのはわからなかった。先程とは違って冷酷な目で薄く笑う、その目と唇に何か悪い予感がした。
「どうしたの譲。」
「いや今一瞬静香の後ろに黒い影が……」
俺はこれを霊的心理学と呼んでいる。相手が隠し事をしている時に霊の存在をほのめかすとその反応で信心深いかどうかわかるのだ。
「嫌だ。もしかして守護霊かしら」
「そうかもな」
「ありがたいわね。逆に。携帯で写メでも撮ろうか?」
「そういう事をすると守護霊は逃げてしまうというよ」嘘だけど。
「そうなの。残念ね」
俺は静香には何か今後悪い事が起こるかもしれないと思った。霊を信じる人間というのは突然いなくなったり、憑き物に憑依されたりする事が信じない人間より多いという話を聞いた事がある。ちょっと心配だ。さっきの静香の様子を見た感じでは……