健人の居場所
俺は二日酔いはした事がない。丈夫な肝臓に産んでくれた両親に感謝。静香にも昨日の合コンであった事は気付かれてないようだ。
図書室で二人で読書。俺は太宰治全集。静香は志賀直哉全集。生前反目しあっていた二人。
「やっぱり太宰先生は良いよな。アイロニーの漂わせ方が他の作家とはくらべものにならない。」
「あら志賀直哉は小説の神様よ。文壇であれほど力をもった方はいないわよ。」
「暗夜行路をくそみそに仰ってただろう。太宰先生は。実際あれは酔っ払いの愚痴みたいな小説だよ。」
「如是我聞で志賀先生をこき下ろしてくれたわね。でも許してくださったのよ。
寛大な方だわ。」このままだとケンカになりそうだ。全集を読むのはよそう。
人間の体という小学生向けの図鑑みたいなのを見つけた。懐かしい。ペラペラページをめくる。静香が「あ、生殖器だって。エロ~い。」小学生か?君は。「あれ、でもペニスと膣の説明がないわね。子供向けなのね。ホントに」
外来語に日本語では合わないのではないかと思ったので静香に言ったら何よセクハラ?言えないわよそんな卑猥な言葉。たぶん彼女の頭の中では生殖器の様々な呼び方が走馬灯のように駆け巡ってるだろう。完全なるセクハラだ。健人がいたら喜んで静香を苛めるな。俺と一緒になって。
健人何してるだろうな?今頃。「死を見つめろ。死を見つめろ。死を見つめろ。死を見つめろ。死を見つめろ。」ここは白石系暴力団霊王会。朝の恒例の行事。みんな心臓の辺りに裸でドスを突きつけている。その中で一際大きな声を出している男。健人だった。