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テイルズオブサイレンス  作者: 敬愛
三人の日常 ~夢見ていた頃~
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ライブの風景

 N浜海水浴場で遊ぶ事に決まった。今度の日曜日。ってその日夜からライブの日だ。近場だから朝早く出かけることにした。待ち合わせ時間は午前九時。だが過ぎても静香は来ない。どうしたんだろう。いつもは時間に正確な奴なのに。


 携帯に電話してみる。プルルルル。すぐに出た。

「あ、譲ゴメン。お父さんが交通事故起こしちゃって怪我したの。で、今病院だから 行けなくなっちゃった。切るね。ホントゴメンね。」

 プチっ。

 なんだよ、楽しみにしてたのに。病院だから電源切らないとダメなんだろうけど、よっぽど慌ててたんだろうな。静香のおじさん怪我か。大した事ないと良いんだが。俺も運転下手くそだから気を付けないとな。夜ライブハウス「ココノア」に俺はいた。地元では一番大きなライブハウスだ。


 メンバーと円陣を組み「DON’T FEEL FEAR!」と手を重ねあって掛け声を出す。なんでこんなかけ声に決まったかというとお客さんがナイフを投げてくるからだ。 もちろん贋物だが。いつからこんなパフォーマンスが始まったか知らないが、歌詞の内容が社会規範にあまりに外れているので、客もお前ら死ねやみたいなノリなのかも。俺達の曲は客の鬱憤晴らしには最適だという事だろう。しかし「ノー・クラック」という曲になると静かになる。シャブ中だった女が歳をとっても薬を止めず、若い男と行為に励んでいる時に中毒で死ぬという歌なのだが、俺が弾き語りでやる静かな曲だ。


 俺が今のメンバーと出会う前、路上で何度も何度もこの曲を歌った。石を投げ付けられた事もあった。水をぶっ掛けられた事もあった。それでも俺はその曲のタイトルの本当の意味に気づいてもらえるまで歌い続けた。この女は孤児で母親代わりになってくれる人間はいたが父親代わりになってくれる人がいなかった。異性の親に愛される事、愛されない事それがどれほどまでに重要かというメッセージを込めていた。そんな曲を熱心に聴いてくれたのが、今のメンバー三人だ。みんな母親がいない。俺も含めて。健人にも静香にも見せられない俺の心の闇。それを話せるのがメンバーだった。


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