木枯らしが暴いた”私”の罪、だが俺はこれがほんの序章にすぎないことをまだ知らない
なろうラジオ大賞7への応募です。
「らっしゃいっ」
威勢のいい声の主へと食券を渡すと、私はカウンター席へと腰を下ろし、水で喉の渇きを潤した。懐から煙草を取り出すと、喫煙所は向こうだよと店主に促され外へと向かう。
灰皿スタンドの横に立ち、ため息と共に煙を吐き出すと、壁に背を預けた。そしておもむろにポケットから一冊の手帳を取り出し、そこに殴り書きされた内容にさっと目を通す。
20XX年10月15日
最近、ベッドで寝たはずなのに違う場所で目が覚める。最初はキッチン、次は書斎、そして玄関。夢遊病だろうか……。
20XX年10月18日
服がくさい。上着のポケットにタバコとライターが入っていた。
20XX年10月20日
今朝は漫喫にいた。家の外で目覚めるなんて。病院に行くべきか迷う。周りにどう思われるだろう。
*
20XX年11月10日
最近は症状が落ち着いていたと思ったのに……。ロープ、金槌、手袋を購入したようだ。レシートがあった。万引きじゃなくてよかった。
20XX年11月14日
23:13、青森県のホテルの一室で目覚める。俺はおかしくなったんだろうか。明日の朝一、新幹線で東京へ帰って病院へ行こう。眠りたくない。
20XX年11月15日
やばいやばいやばいやばい何でこんなことに
勘弁してくれくそったれ
とにかく今から警察へ行く
記録はそこで終わっていた。
「余計なものを」
私は煙草を吐き捨て踏みつけると、手帳をパタンと閉じ、ライターの火をそれへと移した。灰となるのを見届けると、さぁてラーメンラーメン、と軽い足取りで店へと戻る。
「旦那ぁ、麺伸びちまうじゃねぇか」
眉を八の字に寄せて文句を言う店主にすみませんと笑いながら、少し伸びた麺を啜り始めた。
『速報です。青森県Y村の山林で女性の遺体が発見されました。警察によりますと落ち葉で隠された状態の遺体を付近住民が発見し、110番通報しました。遺体は上半身の損傷が激しく、現場で死亡が確認されました——』
「ここんとこめっぽう寒くなったからなぁ。木枯らしでも吹いて、落ち葉が飛んだおかげで見つかったんだろう」
テレビから流れるニュースを聴いて、物騒だなぁと店主が続ける。愛想よく相槌を打ちつつも、案外早く見つかったもんだと心の中で舌打ちをすると、スープをぐっと飲み干し店を後にした。
「もう少し楽しませてもらわないと」
そうぼやく声は強く冷たい風によってかき消された。
初投稿です。
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